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6 意識しちゃうよ
第20話
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◆
およそ十分後――。
植草先生はジャージに、園芸部員は体操服に着がえて、校門に再集合していた。
今は桜の木に目をうばわれてしまうけれど、花壇やプランターもあるんだ。
「ここが一番、人目につくところだから、キッチリ手入れしなくちゃいけないわ。まあ、私がしっかり管理しているから、だいじょうぶなんだけどね」
小百合センパイが得意げに言うだけあって、チューリップ、ネモフィラ、ゼラニウムなどが、きれいに咲きほこっている。
「ここはいいとして……問題は他のところ! 中庭と裏門にも花壇やプランターがあるし、運動場のわきには畑があるわ。まずは畑に行ってみましょう」
小百合センパイの自慢につきあわされただけのような気もするけれど、わたしたちはワイワイガヤガヤと、運動場のわきへ大移動!
わたしは歩きながら、チラチラと咲也くんを目で追ってしまう。
咲也くんの腰には作業用ベルトが巻かれていて、スコップや霧吹きなんかが入っている。
咲也くん本気だ!
花を憎んでいた魔神から、園芸王子に生まれ変わったんだ……。
ふと、こっちを見た咲也くんと、視線がぶつかる。
わわっ! びっくりした!
あわてて目をそらすわたし。
「年下のイケメンに惹かれている自分に気づき、とまどいをかくせない一千花であった」
「…………」
またもや、小百合センパイが、わたしのそばにぴったりついていたんだ。
「あの~、勝手にわたしのキモチをナレーションしないでくれます? 小百合センパイ!」
抗議しても、小百合センパイはどこ吹く風だ。
「門倉部長とお呼びなさい」
と言ったかと思うと、にんまりして。
「意識してるんでしょ。バレバレよ」
「い、意識なんてしてませんっ!」
思わず大きな声が出て、あわてて口をおさえる。
あたりを確認したけれど、だれにも聞かれなかったみたい。
小百合センパイは、わたしの肩をぽんぽんとたたいた。
「まぁまぁ。あんなシチュエーションになったら、イヤでも意識するわよ、フツー。年下といっても、あれだけイケメンだもの」
うっとりした様子の小百合センパイ。
意識かぁ。
やっぱり、わたし――咲也くんのこと、意識しちゃってるのかな?
◆
「最近、ほったらかしだったからなぁ。荒れ放題だな」
頭をかきながら植草先生が言ったとおりの光景――。
陸上部やサッカー部が練習中で、活気のある運動場の片すみに、園芸部の畑があった。
けれど、雑草が伸び放題で、畑というよりジャングルだ。
「五月に入ったら、スイカとミニトマトの苗を植えるからな。今のうちに、きれいにしておかないと」
植草先生が言うと、小百合センパイはうなずいて、腰に手をあてた。
「御堂くん! 乙黒くん! あなたたち男子の見せ場よ! 草をどんどんぬいちゃって! ちゃんと根っこからね!」
蓮くんはため息をつくと、腕まくりして、ポンと咲也くんの肩をたたいた。
「しゃーねー。乙黒、パパッとやっちまうぞ」
「はい」
うなずく咲也くん。
ふたりは軍手をはめて、ジャングルに分け入る。
「うりゃああああああ!」
空手の練習でもしているみたいに、雄叫びをあげながら、雑草をぬいていく蓮くん。
いきおいはいいけど、ちょっと仕事が雑。あと、うるさい。
対照的に、だまってクールに、テキパキと雑草をぬいていく咲也くん。
うん、仕事が丁寧だね。
「イケメンふたりが協力して、汗を流して、がんばってる! 尊いわあ」
またも妄想スイッチが入った小百合センパイが、顔を赤らめている。
「小百合センパイ! 妄想してないで! わたしたちも作業しますよ!」
わたしは小百合センパイの肩をゆらして、妄想スイッチを切ってあげた。
男子ふたりが雑草をぬいてくれたところの土を、植草先生といっしょに、女子がクワやスコップを使ってならしていく。
およそ十分後――。
植草先生はジャージに、園芸部員は体操服に着がえて、校門に再集合していた。
今は桜の木に目をうばわれてしまうけれど、花壇やプランターもあるんだ。
「ここが一番、人目につくところだから、キッチリ手入れしなくちゃいけないわ。まあ、私がしっかり管理しているから、だいじょうぶなんだけどね」
小百合センパイが得意げに言うだけあって、チューリップ、ネモフィラ、ゼラニウムなどが、きれいに咲きほこっている。
「ここはいいとして……問題は他のところ! 中庭と裏門にも花壇やプランターがあるし、運動場のわきには畑があるわ。まずは畑に行ってみましょう」
小百合センパイの自慢につきあわされただけのような気もするけれど、わたしたちはワイワイガヤガヤと、運動場のわきへ大移動!
わたしは歩きながら、チラチラと咲也くんを目で追ってしまう。
咲也くんの腰には作業用ベルトが巻かれていて、スコップや霧吹きなんかが入っている。
咲也くん本気だ!
花を憎んでいた魔神から、園芸王子に生まれ変わったんだ……。
ふと、こっちを見た咲也くんと、視線がぶつかる。
わわっ! びっくりした!
あわてて目をそらすわたし。
「年下のイケメンに惹かれている自分に気づき、とまどいをかくせない一千花であった」
「…………」
またもや、小百合センパイが、わたしのそばにぴったりついていたんだ。
「あの~、勝手にわたしのキモチをナレーションしないでくれます? 小百合センパイ!」
抗議しても、小百合センパイはどこ吹く風だ。
「門倉部長とお呼びなさい」
と言ったかと思うと、にんまりして。
「意識してるんでしょ。バレバレよ」
「い、意識なんてしてませんっ!」
思わず大きな声が出て、あわてて口をおさえる。
あたりを確認したけれど、だれにも聞かれなかったみたい。
小百合センパイは、わたしの肩をぽんぽんとたたいた。
「まぁまぁ。あんなシチュエーションになったら、イヤでも意識するわよ、フツー。年下といっても、あれだけイケメンだもの」
うっとりした様子の小百合センパイ。
意識かぁ。
やっぱり、わたし――咲也くんのこと、意識しちゃってるのかな?
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「最近、ほったらかしだったからなぁ。荒れ放題だな」
頭をかきながら植草先生が言ったとおりの光景――。
陸上部やサッカー部が練習中で、活気のある運動場の片すみに、園芸部の畑があった。
けれど、雑草が伸び放題で、畑というよりジャングルだ。
「五月に入ったら、スイカとミニトマトの苗を植えるからな。今のうちに、きれいにしておかないと」
植草先生が言うと、小百合センパイはうなずいて、腰に手をあてた。
「御堂くん! 乙黒くん! あなたたち男子の見せ場よ! 草をどんどんぬいちゃって! ちゃんと根っこからね!」
蓮くんはため息をつくと、腕まくりして、ポンと咲也くんの肩をたたいた。
「しゃーねー。乙黒、パパッとやっちまうぞ」
「はい」
うなずく咲也くん。
ふたりは軍手をはめて、ジャングルに分け入る。
「うりゃああああああ!」
空手の練習でもしているみたいに、雄叫びをあげながら、雑草をぬいていく蓮くん。
いきおいはいいけど、ちょっと仕事が雑。あと、うるさい。
対照的に、だまってクールに、テキパキと雑草をぬいていく咲也くん。
うん、仕事が丁寧だね。
「イケメンふたりが協力して、汗を流して、がんばってる! 尊いわあ」
またも妄想スイッチが入った小百合センパイが、顔を赤らめている。
「小百合センパイ! 妄想してないで! わたしたちも作業しますよ!」
わたしは小百合センパイの肩をゆらして、妄想スイッチを切ってあげた。
男子ふたりが雑草をぬいてくれたところの土を、植草先生といっしょに、女子がクワやスコップを使ってならしていく。
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