窓際の交錯

本編

2. 再会

カフェで二人が出会ってから数日後、午前8時45分の虎ノ門駅。
康汰は地下一階の改札からビルへ向かって歩いていた。
エレベーターに乗ると、珍しく誰もいない。
このビルのエレベーターは、通勤時間帯は自動運転となる。地下一階は発着階となっており、2機目のエレベーターが到着すると、もう一機の扉は自動的に閉じられる。

（今日は1人か。）

独りを好む康汰は、少し気が安らいでいた。

ほどなくして、月香がエレベーターに入ってきた。
お互いに少し驚いたところで、扉が閉まった。


康汰「おはよう。また会えたね。」

月香「おはようございます！また会えましたね笑」

康汰「まさかこの時間に2人きりになるとは思わなかったよ笑」

月香「ですね笑」


しばし静かな時間が流れ、どこか不思議な緊張感が走る。
お互いに何か話しかけたい気持ちがあったが、どう切り出そうか迷っている様子だった。

康汰も月香も、同じことを考えていた。
自然と、二人の口から同時に声が出た。


康汰・月香「連絡先、聞いても…」


声が重なった瞬間、二人とも一瞬驚いたが、すぐに笑顔を浮かべた。

次の言葉を出そうとした瞬間、エレベーターが6階に到着し、扉が開いた。月香が降りるフロアだった。


月香「...ぁ、じゃあまた」


康汰は言葉を返す前に、月香がエレベーターを降りたのが見えた。
6階のエレベーター前には、月香の同僚が数名立っていた。きっと4階の喫煙所にでも行くのだろう。
月香は自然に降りざるを得なかった。

（また、聞けなかったな...）

扉が閉まる間、康汰と月香は同じ思いを抱いていた。