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パンとサーカス、そして肉
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ある人曰く、炭水化物は貧者を救う神でもあり、同時に貧者を貶める神でもある。なぜなら、炭水化物は手っ取り早く貧乏人の腹を満たすが、同時に太りやすい体質にさせるものだからだ。
なるほど、「パンとサーカス」が「肉とサーカス」ではないのは、肉食が社会的地位との関係が少なからずあるからだろう。だからこそ、社会的地位や経済力の高いヴィーガンは、肉好きの貧乏人に憎まれるのだ。
私自身は肉好きだ。若い頃は精神的に色々と追い詰められて、鶏肉の中にあった筋や血管を気持ち悪く思い、母親に向かって「私、菜食主義者になりたい!」と駄々をこねたけど、菜食主義者ではない代わりに現実主義者である母親に「バカ言ってるんじゃない!」と一喝され、再び肉好きに戻った。
あの、アドルフ・ヒトラーは菜食主義者だった。その話を知った時にはすでに、私は菜食主義者に対する劣等感はなくなっていた。
私がいわゆる洋楽を好んで聴くようになったのは中学時代からだけど、洋楽アーティストは菜食主義者が少なくない。要するに私は「菜食主義者」という属性がいわゆる「セレブ」のものだと思い、一般庶民で肉好きの自分自身がみじめに思えたのだ。庶民にとっては、肉はご馳走だ。だからこそ、自分よりも社会的地位や経済力の高い人間が菜食主義者であるという事態に対して、反感や嫉妬心や劣等感を抱いてしまうのだ。
今の日本には「無敵の人」という言葉があるけど、私の知人は、今の日本が「無敵の人」ならぬ「無敵の国」に成り下がっていると指摘していた。人命や基本的人権は尊重しなければならないという、先進国には必要不可欠なモラルが軽んじられて、バカにされるという、腐った国に成り下がったのが、現在の日本だ。例えば、入館施設でハンガーストライキをした外国人を死ぬまで放置するという事態が全く平気な姿勢が、現在の日本の「無敵の国」たる所以なのだ。
その日本の「無敵の国」化を指摘した知人は在日コリアンだが、彼は「韓流ブームもK-POPブームも、在日コリアンの頭上高くを通り過ぎていっただけのものに過ぎない。少なくとも、俺にとっては他人事でしかなかったよ」とも言っていた。
そうだ。いわゆる「女子高生ブーム」なんて、私自身が女子高生だった頃は他人事そのものだった。
さて、夕食の準備をする。
【材料】
鶏もも肉…2枚
キャベツ…1/4個
玉ねぎ…1個
コチュジャン…大さじ約2杯
めんつゆ…大さじ約6杯
ごま油…適量
溶けるチーズ…適量
1.鶏もも肉を適当な大きさに切る。
2.コチュジャンとめんつゆを合わせ、鶏もも肉を入れてある程度もみ込んでから、冷蔵庫でしばらく漬け込む。
3.フライパンにごま油をひいて、適当な大きさに切ったキャベツと玉ねぎを炒める。
4.野菜がある程度火が通ったら、ソースに漬け込んでいた鶏もも肉を(漬け込んでいたソースごと)入れ、さらに炒める。
5.全面的に火が通ったら、溶けるチーズをふりかけて、フライパンに蓋をして、焦げないくらいに、ある程度待つ。
6.丼にご飯を盛り、その上に、出来上がったチーズタッカルビを盛って、出来上がり。
私はタブレット端末でG1レース6勝の名馬〈カバレロドラド〉の動画を観る。ドラドの皐月賞での豪快な勝ちっぷりは爽快だった。ダービーでは勝てなかったが、菊花賞での勝ち方も見事だった。例の宝塚記念での失態は今もなお、ゲップが出るほど人口に膾炙しまくっている。
膾炙、すなわちナマス(刺身やユッケの類)と焼肉。まさしく「ごちそう」だ。私は刺身も焼肉も大好きだ。あとは甘いもの。色気より食い気、それが私という人間だ。私はおいしいものを食べるために一生懸命働くのだ。
さて、残りのチーズタッカルビは明日のお弁当のおかずだ。私は他に、きんぴらゴボウなども用意する。明日は白飯の代わりに、玉子サンドを弁当に入れる。テーブルの上に何がある? パンとサーカス、そして肉。
来週、会社のみんなと共にバーベキューパーティーをする。元が取れるだけ食べるのだ。そう、やっぱり私は肉が好き。でも、カバレロドラドの顔を思い出すので、私はあえて馬肉は食べない。仮に競馬に対して全く興味がないなら、馬肉を食べられたかもしれないけど、今の私にとってはタブーだ。
私は歯磨きを済ませ、電気を消し、ベッドに潜り込む。あの強くてかっこ良くてかわいくて面白い芦毛の馬の顔を思い浮かべながら、私は目を閉じる。幸い、私は子供の頃から寝付きが良いので、睡眠不足に悩まされる事態はほぼない。さあ、眠りの神様が…。
目覚まし時計がなる前に目を覚ます。午前5時過ぎ。十分な余裕だ。私は卵をゆで、そのゆで卵を刻んでマヨネーズで和えて、玉子サンドを作る。ランチボックスに玉子サンドを並べて入れて、別の箱に昨日作ったチーズタッカルビときんぴらゴボウを詰め込む。
出社前に、カバレロドラドのレース動画を観る。3歳の頃の彼はまだたてがみが黒っぽい。常識はずれのロングスパートで、次々と他の馬たちをゴボウ抜きにしてゴールイン。
そろそろ時間だ。私はバッグの中に入れた持ち物を確認し、家を出る。鍵をちゃんとかけているか確認し、マンションの玄関を出て、地下鉄の駅を目指す。仕事が終わったら、駅前のケーキ屋さんでマカロンをいくつか買おう。先週店に行った時に、前のお客さんにマンゴー味のマカロンを買い占められて、それを買えなかったけど、今日こそはマンゴー味のマカロンを買うつもりだ。
なるほど、「パンとサーカス」が「肉とサーカス」ではないのは、肉食が社会的地位との関係が少なからずあるからだろう。だからこそ、社会的地位や経済力の高いヴィーガンは、肉好きの貧乏人に憎まれるのだ。
私自身は肉好きだ。若い頃は精神的に色々と追い詰められて、鶏肉の中にあった筋や血管を気持ち悪く思い、母親に向かって「私、菜食主義者になりたい!」と駄々をこねたけど、菜食主義者ではない代わりに現実主義者である母親に「バカ言ってるんじゃない!」と一喝され、再び肉好きに戻った。
あの、アドルフ・ヒトラーは菜食主義者だった。その話を知った時にはすでに、私は菜食主義者に対する劣等感はなくなっていた。
私がいわゆる洋楽を好んで聴くようになったのは中学時代からだけど、洋楽アーティストは菜食主義者が少なくない。要するに私は「菜食主義者」という属性がいわゆる「セレブ」のものだと思い、一般庶民で肉好きの自分自身がみじめに思えたのだ。庶民にとっては、肉はご馳走だ。だからこそ、自分よりも社会的地位や経済力の高い人間が菜食主義者であるという事態に対して、反感や嫉妬心や劣等感を抱いてしまうのだ。
今の日本には「無敵の人」という言葉があるけど、私の知人は、今の日本が「無敵の人」ならぬ「無敵の国」に成り下がっていると指摘していた。人命や基本的人権は尊重しなければならないという、先進国には必要不可欠なモラルが軽んじられて、バカにされるという、腐った国に成り下がったのが、現在の日本だ。例えば、入館施設でハンガーストライキをした外国人を死ぬまで放置するという事態が全く平気な姿勢が、現在の日本の「無敵の国」たる所以なのだ。
その日本の「無敵の国」化を指摘した知人は在日コリアンだが、彼は「韓流ブームもK-POPブームも、在日コリアンの頭上高くを通り過ぎていっただけのものに過ぎない。少なくとも、俺にとっては他人事でしかなかったよ」とも言っていた。
そうだ。いわゆる「女子高生ブーム」なんて、私自身が女子高生だった頃は他人事そのものだった。
さて、夕食の準備をする。
【材料】
鶏もも肉…2枚
キャベツ…1/4個
玉ねぎ…1個
コチュジャン…大さじ約2杯
めんつゆ…大さじ約6杯
ごま油…適量
溶けるチーズ…適量
1.鶏もも肉を適当な大きさに切る。
2.コチュジャンとめんつゆを合わせ、鶏もも肉を入れてある程度もみ込んでから、冷蔵庫でしばらく漬け込む。
3.フライパンにごま油をひいて、適当な大きさに切ったキャベツと玉ねぎを炒める。
4.野菜がある程度火が通ったら、ソースに漬け込んでいた鶏もも肉を(漬け込んでいたソースごと)入れ、さらに炒める。
5.全面的に火が通ったら、溶けるチーズをふりかけて、フライパンに蓋をして、焦げないくらいに、ある程度待つ。
6.丼にご飯を盛り、その上に、出来上がったチーズタッカルビを盛って、出来上がり。
私はタブレット端末でG1レース6勝の名馬〈カバレロドラド〉の動画を観る。ドラドの皐月賞での豪快な勝ちっぷりは爽快だった。ダービーでは勝てなかったが、菊花賞での勝ち方も見事だった。例の宝塚記念での失態は今もなお、ゲップが出るほど人口に膾炙しまくっている。
膾炙、すなわちナマス(刺身やユッケの類)と焼肉。まさしく「ごちそう」だ。私は刺身も焼肉も大好きだ。あとは甘いもの。色気より食い気、それが私という人間だ。私はおいしいものを食べるために一生懸命働くのだ。
さて、残りのチーズタッカルビは明日のお弁当のおかずだ。私は他に、きんぴらゴボウなども用意する。明日は白飯の代わりに、玉子サンドを弁当に入れる。テーブルの上に何がある? パンとサーカス、そして肉。
来週、会社のみんなと共にバーベキューパーティーをする。元が取れるだけ食べるのだ。そう、やっぱり私は肉が好き。でも、カバレロドラドの顔を思い出すので、私はあえて馬肉は食べない。仮に競馬に対して全く興味がないなら、馬肉を食べられたかもしれないけど、今の私にとってはタブーだ。
私は歯磨きを済ませ、電気を消し、ベッドに潜り込む。あの強くてかっこ良くてかわいくて面白い芦毛の馬の顔を思い浮かべながら、私は目を閉じる。幸い、私は子供の頃から寝付きが良いので、睡眠不足に悩まされる事態はほぼない。さあ、眠りの神様が…。
目覚まし時計がなる前に目を覚ます。午前5時過ぎ。十分な余裕だ。私は卵をゆで、そのゆで卵を刻んでマヨネーズで和えて、玉子サンドを作る。ランチボックスに玉子サンドを並べて入れて、別の箱に昨日作ったチーズタッカルビときんぴらゴボウを詰め込む。
出社前に、カバレロドラドのレース動画を観る。3歳の頃の彼はまだたてがみが黒っぽい。常識はずれのロングスパートで、次々と他の馬たちをゴボウ抜きにしてゴールイン。
そろそろ時間だ。私はバッグの中に入れた持ち物を確認し、家を出る。鍵をちゃんとかけているか確認し、マンションの玄関を出て、地下鉄の駅を目指す。仕事が終わったら、駅前のケーキ屋さんでマカロンをいくつか買おう。先週店に行った時に、前のお客さんにマンゴー味のマカロンを買い占められて、それを買えなかったけど、今日こそはマンゴー味のマカロンを買うつもりだ。
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