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第二章 コックリさん事件
6、追ってくるケモノ
しおりを挟む「コックリさん禁止はまあ、当然ではあるけど……」
事件解決の翌日の放課後、ぼくたちは図書室にいた。
今後のF・K調査隊の方向性を決める作戦会議をするためだ。
やっぱりと言うべきか、今朝の朝の会でバケセンから〝コックリさん禁止令〟を伝えられた。これはうちのクラスだけでなく、ほかのクラスもだということだ。
学校生活に支障が出るから、怖いものを過剰に楽しむこともだめだと言われてしまった。
それではF・K調査隊の活動ができないとなげいていると、相沢さんが「UFOとかはどう? 宇宙人なら先生も禁止にできないと思うな」とアドバイスをくれた。彼女には調査隊のことを話していないから、たぶんぼくたちのことをものすごくオカルトが好きなやつらだと思っているんじゃないだろうか。
でも、ありがたい助言だから、こうして何かとっかかりがつかめないかとレンとミーと一緒に、放課後図書室に来てみたのだ。
「禁止っていっても、個人で楽しむものはいいんじゃないのか? 俺たち、人のことは巻き込んでないし、いたずらに怖がらせるのが目的じゃない」
こわい話の本を集めた棚を見ながら、レンが冷静に言った。
その棚の本は、どれもボロボロになって何度もしゅうぜんされたあとが見える。つまり、そうやってボロボロになるまでたくさんの人に借りられ読まれた人気作ということだ。
やっぱり、ぼくたちみたいにこわい話が好きな子たちはたくさんいるのだ。
「先生たちが禁止って言わなきゃいけない事情もわかるから、自分たちから首つっこんだりあぶないことするのはやめようね。あと、ママが『心霊スポットなんかに行くのは絶対禁止! それ、不法行為だから』って」
「し、しないよ、そんなこと……ぼくたちは健全にこわいものや不思議と向き合いたいんだけど、大人の目にはそんなに悪いことやあぶないことに見えるのかな?」
ミーに釘をさされ、ぼくの気持ちはまたしぼみかけた。
たしかに、コックリさんを呼び出したのはいけないと思う。それはぼくのしたい調査隊の活動ではない。
でも、ほかの人の目には黒川さんたちがやったことも、ぼくらの調査隊の活動も、もしかしたらいっしょに見えるのかもしれない。
「でもまあ、どっかからこわいウワサが流れてきたら、それを俺たちは調査する。その活動まで止められないだろ」
「そうだね……」
レンにはげますように言われ、ぼくは少し気持ちを持ち直した。何だか面白そうなUFOの本が見つかったのもある。
本を借りて、これから帰ろうかとしていると、図書室の窓の外を誰かがものすごい勢いで走っていくのが見えた。走ってきた方向からすると、裏門のほうだ。
「あれ、相沢さんたちだ……おーい! どうした?」
急いで窓を開けたレンが、そう叫んだ。すると、走っていった人たちは一瞬ビクッとして、それからこっちに戻ってきた。
「い、井波くん、助けて!」
「何か出たのか?」
「昨日の……コックリさんまだ帰ってなくて!」
「ええ!?」
涙目でうったえてきたのは、黒川さんだった。黒川さんが相沢さんの手を引いて走っていたらしい。
「どうしよう……こわい。あれ、ぜったい百花の犬じゃない! だって、百花がおそわれそうになったんだもん!」
黒川さんのさけびに、相沢さんもコクコクとうなずく。二人ともこわくて、ひどく落ち着きをなくしているようだ。
「ユーマ、俺はバケセン呼んでくる! お前と小石川さんは二人を安全な場所に。たぶん、校舎内のほうがマシじゃないか」
「わかった!」
レンに指示され、ぼくとミーは相沢さんたちをなだめて校舎に入るよううながした。
「校舎に入っちゃえば大丈夫なはずだから! 早くこっちに!」
「やだ……ついてきてる!」
「え⁉」
振り返った黒川さんの悲鳴にそちらを見ると、本当に少し離れたところから何かが走ってきていた。
それは、牙をむいた大きな犬のようなものだった。
「い、急ごう! とりあえず昨日の空き教室を目指さなきゃ!」
ぼくはふるえる声で、何とか勇気を振りしぼって言った。
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