上 下
312 / 317
秋のきせつはどうぶつたちとともに

おしくらまんじゅうは楽しいね

しおりを挟む
 秋がすすむにつれて、森の中ではじめんにたくさんのはっぱがおちています。そんな中、小助が楽しみにしているのはどうぶつの子どもたちといっしょにおしくらまんじゅうをすることです。 

 「おちくらまんじゅう(おしくらまんじゅう)! おちくらまんじゅう!」 

 森の通り道には、子グマたちやちびっこオオカミたちがつぎつぎとあつまってきました。さらに、森のおくからはきものをきている人間の子どもたちが2人やってきました。 

 小助いがいの人間が森へやってくるのはひさしぶりのことです。どうぶつたちは、どうしてこんなところに人間がくるのかとまどっています。 

 人間の子どもたちは何もことばを口にしていません。なぜなら、キツネとタヌキが人間の子どもにばけているからです。 

「大じょうぶかなあ……」 
「大じょうぶだって! 何も言わなかったらおれたちのことは気づかないだろうし」 

 キツネとタヌキは、ほかのどうぶつたちに聞こえないように小声でつびやいています。 

 そうするうちに、お母さんグマが森の中へあつまった子どもたちをよびました。これから、子どもたちみんなでせなかやおしりを合わせておしくらまんじゅうをはじめるところです。 

「それじゃあ、みんなでかけ声を出してはじめるわよ! おしくらまんじゅう、おされてなくな!」 
「おちくらまんじゅう、おちゃれてなくな(おされてなくな)!」 

 お母さんグマのかけ声にあわせるように、小助たちもかわいい声を出しながらおしくらまんじゅうをしています。この後も、子どもたちは元気いっぱいの声を上げながら何回もおし合っています。 

「みんな、あたたまってきたかな?」 
「うん! あたたかいよ!」 

 小助たちは、みんなでおしくらまんじゅうをするのにすっかりむちゅうになっています。子どもたちのほうも、しだいに体があたたまってきました。 

 お母さんグマは、人間の子どもたち2人のおしりからしっぽが見えていることに気づきました。しかし、ほかの子どもたちといっしょにかけ声を上げておし合っているのでその場でじっとしています。 

 そして、みんなで楽しそうにおしくらまんじゅうをつづけていたその時のことです。 

「プウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ~ッ」 
「うわっ! く、くさくてたまらない……」 

 小助は、人間の子どもたちとせなかをおし合っている時にでっかいおならが出てしまいました。人間にばけたキツネとタヌキは、小助のくさいおならのにおいにたまらないようすです。 

 そして、小助におされたはずみで前のめりにたおれると、どうぶつたちの前でキツネとタヌキのすがたにもどりました。キツネとタヌキは、近づいてくるお母さんグマからにげようとかけ出しました。 

 すると、草むらからもどってきたオオカミのお父さんやお母さんと出くわしました。2ひきのオオカミは、キツネとタヌキをにらみつけながらほえています。 

「おい! ここへ何をしにきたんだ!」 
「い、いえ……。あの、その……」 

 ひっしにごまかそうとするキツネですが、オオカミたちは4本足でゆっくりと歩きながら2ひきのいるほうへせまってきます。 

「おれたちの子どもに手を出したんじゃないだろうな」 
「ご、ごめんなさい! ゆ、ゆるして……」 

 キツネとタヌキは、オオカミたちにおわれながらいそぎ足で森のおくへさっていきました。そんな中であっても、小助たちは子グマやちびっこオオカミとじゃれ合いながらあそんでいます。 

「ふふふ、ぼうやたちはあいかわらず元気におそんでいるみたいだね」 

 お母さんグマは、小助たちが楽しそうにあそんでいるようすをやさしく見まもっています。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

【童話】宿替えヤドカリ

ハチママ
児童書・童話
ヤドカリはね 宿(やど)を借りてるんじゃないんだよ 宿を替えてるんだ ヤドカエが正しいのかもね

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミでヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

図書室ピエロの噂

猫宮乾
児童書・童話
 図書室にマスク男が出るんだって。教室中がその噂で持ちきりで、〝大人〟な僕は、へきえきしている。だけどじゃんけんで負けたから、噂を確かめに行くことになっちゃった。そうしたら――……そこからぼくは、都市伝説にかかわっていくことになったんだ。※【完結】しました。宜しければご覧下さい!

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。童話パロディ短編集

指輪を見つけた王子様

森乃あかり
児童書・童話
森の奥にあるお城にちょっと臆病な王子様が住んでいました。 王子様はみんなで一緒に食事をしたいと思っているのに、自分の気持ちを伝えることができません。 ある日、王妃様から贈られた『勇気の指輪』という絵本を読んだ王子様は、勇気の指輪を探すために森へ出かけていきます。 .・。.・゜✭・.・✫・゜・。. 王子様が読んだ「勇気の指輪」は絵本ジャンルにあります。あわせてお楽しみください。 ※表紙はAI生成したものです。 ※挿絵はありません。

人をふにゃふにゃにするスイッチ

まさかミケ猫
児童書・童話
――人に向かってこのスイッチを押すと、その人はふにゃふにゃになるんじゃよ。  小学六年生のケンゴは、近所に住んでいる発明家のフジ博士から珍妙な発明品をもらいました。その名も“人をふにゃふにゃにするスイッチ”。消しゴムくらいのサイズの黒い小箱で、そこには押しボタンが三つ。つまり、三回まで人をふにゃふにゃにできるらしいのです。 「精神的にふにゃふにゃになるだけじゃ」  博士の説明を聞いたケンゴは、お父さんとお母さんに一回ずつ使いたいなと思っていました。とうのも、二人は年中ケンカばかりしているのです。  いきなり両親に使用するのが怖かったケンゴは、まずは学校にいる誰かで一回分だけ試してみようと思いました。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

処理中です...