144 / 290
山おくのにぎやかな春
ワン太くんと犬のお母さん
しおりを挟む
森の中でくらしているどうぶつたちの中で、キツネとタヌキは自分たちがばけて人間たちをだまそうといっしょうけんめいになっています。2ひきが顔を合わせると、どちらかがうまくばけることができるかではり合っています。
「さっそくだけど、おれとお前のどっちがうまくばけれるかとおもうか? まあ、うまくばけれるのはおれのほうだけどね」
「そんなことないもん! 上手にばけられるのはぼくのほうだい!」
キツネとタヌキは、みどり色のはっぱを頭にのせるといっせいにくるりと回りました。けむりにつつまれた2ひきがばけたのは、4本足であるく犬のすがたです。
「おい! おれと同じ犬にばけやがって!」
「ちがうよ! たまたま同じだっただけだい!」
同じどうぶつにばけたことで、キツネとタヌキはおたがいに顔を合わせながら言い合っています。
そんな時、小助とワン太のすがたが2ひきの目に入ってきました。キツネとタヌキは、自分たちがばけているのが小助たちに気づかれては元も子もありません。
「あまり出しゃばるんじゃないぞ」
「言われなくても分かってるもん!」
小助たちがやってくると、2ひきは犬らしくゆっくりと4本足で歩き回っています。その動きに、ワン太はとまどっているようすです。
「どうちたの(どうしたの)?」
「どっちもかあちゃ……」
ワン太にとって、自分のお母さんと顔を合わせれば大よろこびであまえようとするはずです。でも、お母さんと同じすがたの犬が2ひきもいたら、どちらが本ものなのかは分かりません。
そこで、ワン太は2ひきの犬のそばへ近づくことにしました。自分のはなでクンクンとにおいをかげば、どちらがお母さんなのかすぐに分かります。
「かあちゃ、かあちゃ……」
なんどもクンクンさせるうちに、ワン太はここにいる犬が自分のお母さんではないことに気づいてきました。もちろん、犬のお母さんの正体がキツネとタヌキであることをワン太はまったく知りません。
ワン太がにおいをかぐのをやめて顔を上げると、おくへつづく道の左がわからどうぶつらしきものが草むらから出ようとするようすをじっと見ています。
草むらから出てきたのは、さっきの2ひきと同じくワン太のお母さんとそっくりの大きな犬です。これを見たワン太は、もう1ぴきの犬のすがたを見ようと4本足でかけ出しました。
すると、ワン太は草むらのそばにいる犬に近づくにつれて、お母さんといつもいっしょだった時のことを思い出しました。
「かあちゃ!」
大きな犬は、自分のところへ向かって走るワン太のほうへすぐにかけよりました。そのすがたは、自分の子どもをこの目で見たいという強い思いがこめられています。
「うえええええええ~んっ」
「そんなになかなくても大じょうぶだよ」
ワン太は、ひさしぶりに会った犬のお母さんのあたたかい気もちにつつまれています。お母さん犬のほうも、かわいい子犬をやさしい目で見つめています。
このようすをよそに、お母さん犬にばけているキツネとタヌキはその場から音を立てずにそっとはなれようとします。
「おい! 早くにげるぞ!」
キツネは小声でタヌキにつたえようとしますが、その声は犬のお母さんにも耳に入ってしまいました。お母さん犬は、自分とそっくりの犬たちに近づくとするどい目つきでなんどもほえています。
「うちの子をだまそうたってそうはいかないからね!」
「い、いや……。これにはわけがあって……」
お母さん犬にばけたキツネとタヌキは、元のすがたになるとそのままいそぎ足で森のおくへにげていきました。犬のお母さんは、やさしい目つきでワン太のかわいい顔をみながらあることを思い出しました。
「まだあの子に名前をつけてなかったわ」
お母さん犬は、子犬の名前をつける前にワン太とはぐれてしまいました。そんなお母さんに、ワン太は自分の名前のことを口にしました。
「ぼくの名前ねえ、こちゅけくん(小助くん)がつけてくれたよ」
「どんな名前かな?」
「ワン太という名前だよ」
「ふふふ、かわいい名前をつけてくれたんだね」
犬のお母さんは、自分の子犬がワン太という名前にとても気に入っています。ワン太のとなりには、いつもいっしょにいる小助がやってきました。
「小助くん、子犬の名前をつけてくれてありがとうね」
「かあちゃ、ありがとう」
そんな小助とワン太は、お母さん犬にあまえようと元気な声でいつものおねだりをしています。
「かあちゃ、おっぱい! おっぱい!」
「しょうがないわね、さあ、こっちへおいで」
こうして、小助とワン太は犬のお母さんのおっぱいをいっぱいのみつづけています。いつも元気な子どもたちに、お母さん犬もやさしい顔つきでほほえんでいます。
「さっそくだけど、おれとお前のどっちがうまくばけれるかとおもうか? まあ、うまくばけれるのはおれのほうだけどね」
「そんなことないもん! 上手にばけられるのはぼくのほうだい!」
キツネとタヌキは、みどり色のはっぱを頭にのせるといっせいにくるりと回りました。けむりにつつまれた2ひきがばけたのは、4本足であるく犬のすがたです。
「おい! おれと同じ犬にばけやがって!」
「ちがうよ! たまたま同じだっただけだい!」
同じどうぶつにばけたことで、キツネとタヌキはおたがいに顔を合わせながら言い合っています。
そんな時、小助とワン太のすがたが2ひきの目に入ってきました。キツネとタヌキは、自分たちがばけているのが小助たちに気づかれては元も子もありません。
「あまり出しゃばるんじゃないぞ」
「言われなくても分かってるもん!」
小助たちがやってくると、2ひきは犬らしくゆっくりと4本足で歩き回っています。その動きに、ワン太はとまどっているようすです。
「どうちたの(どうしたの)?」
「どっちもかあちゃ……」
ワン太にとって、自分のお母さんと顔を合わせれば大よろこびであまえようとするはずです。でも、お母さんと同じすがたの犬が2ひきもいたら、どちらが本ものなのかは分かりません。
そこで、ワン太は2ひきの犬のそばへ近づくことにしました。自分のはなでクンクンとにおいをかげば、どちらがお母さんなのかすぐに分かります。
「かあちゃ、かあちゃ……」
なんどもクンクンさせるうちに、ワン太はここにいる犬が自分のお母さんではないことに気づいてきました。もちろん、犬のお母さんの正体がキツネとタヌキであることをワン太はまったく知りません。
ワン太がにおいをかぐのをやめて顔を上げると、おくへつづく道の左がわからどうぶつらしきものが草むらから出ようとするようすをじっと見ています。
草むらから出てきたのは、さっきの2ひきと同じくワン太のお母さんとそっくりの大きな犬です。これを見たワン太は、もう1ぴきの犬のすがたを見ようと4本足でかけ出しました。
すると、ワン太は草むらのそばにいる犬に近づくにつれて、お母さんといつもいっしょだった時のことを思い出しました。
「かあちゃ!」
大きな犬は、自分のところへ向かって走るワン太のほうへすぐにかけよりました。そのすがたは、自分の子どもをこの目で見たいという強い思いがこめられています。
「うえええええええ~んっ」
「そんなになかなくても大じょうぶだよ」
ワン太は、ひさしぶりに会った犬のお母さんのあたたかい気もちにつつまれています。お母さん犬のほうも、かわいい子犬をやさしい目で見つめています。
このようすをよそに、お母さん犬にばけているキツネとタヌキはその場から音を立てずにそっとはなれようとします。
「おい! 早くにげるぞ!」
キツネは小声でタヌキにつたえようとしますが、その声は犬のお母さんにも耳に入ってしまいました。お母さん犬は、自分とそっくりの犬たちに近づくとするどい目つきでなんどもほえています。
「うちの子をだまそうたってそうはいかないからね!」
「い、いや……。これにはわけがあって……」
お母さん犬にばけたキツネとタヌキは、元のすがたになるとそのままいそぎ足で森のおくへにげていきました。犬のお母さんは、やさしい目つきでワン太のかわいい顔をみながらあることを思い出しました。
「まだあの子に名前をつけてなかったわ」
お母さん犬は、子犬の名前をつける前にワン太とはぐれてしまいました。そんなお母さんに、ワン太は自分の名前のことを口にしました。
「ぼくの名前ねえ、こちゅけくん(小助くん)がつけてくれたよ」
「どんな名前かな?」
「ワン太という名前だよ」
「ふふふ、かわいい名前をつけてくれたんだね」
犬のお母さんは、自分の子犬がワン太という名前にとても気に入っています。ワン太のとなりには、いつもいっしょにいる小助がやってきました。
「小助くん、子犬の名前をつけてくれてありがとうね」
「かあちゃ、ありがとう」
そんな小助とワン太は、お母さん犬にあまえようと元気な声でいつものおねだりをしています。
「かあちゃ、おっぱい! おっぱい!」
「しょうがないわね、さあ、こっちへおいで」
こうして、小助とワン太は犬のお母さんのおっぱいをいっぱいのみつづけています。いつも元気な子どもたちに、お母さん犬もやさしい顔つきでほほえんでいます。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる