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「以上が経過になります。その後については今のところ異常はありません」
「そうか…」
昼間だというのに薄暗い部屋の中。由香里の報告を淡々と聴き終えた俺は深くイスにもたれる。
それと同時に短くため息をついて少しだけ目を閉じた。
今回のことはそれほど被害が無かったとはいえ、安全地帯である学園の中で起こったことだ。
まだ、世間には公表されていないが、すでに簡単な事実関係は支部長を通じてバベル機関本部へと知れ渡っている。
上から管理体制がどうだとか、危機意識が欠けているのかどうとか訳のわからない小言は言われることは明らかだ。
今からそのことを思うと憂鬱になる。
だが……。
「で、結局反応が出なかったというのは本当なのか?」
「はい。四門班長が精密に調査した結果です。学園内から門が出現した反応はまったく出ませんでした」
「四門がやったのなら間違いないだろう……とすれば、そっちの方が厄介だな」
俺としては、この案件の方が頭を悩ませていた。
「ですが……そのようなことはあり得るのでしょうか? 門を通らずにゴーストが出現するなど……」
「あり得ないからこうして何回も調査をしてるんだろうが。これ、上に知れたら数百倍面倒くさいことになるぞ」
思わず拳を握りしめて机を叩いた。
通常、ゴーストが出現するには絶対に門が現れる。例外はない。どんなにSTAGEが上のゴーストでも必ずそうやって現れる。
だが、今回はその反応が全く見当たらないという。それなのにゴーストが現れた。あり得ないことが現実に起こっている。
「隊長……これはあくまで推測ですが……」
「なんだ? 言ってみろ」
「はい。今回は学園内で門が出現したのではなく。別の場所で出現したのではないでしょうか? そこで現れたゴーストが移動し、学園内に……ということは?」
まあ、その手の話なら通常ならあり得ない話ではないが。
「いやない。絶対にないな。あの学園のセキュリティは簡単に破られるもんじゃない。それこそ、十二神将ぐらいでないとダメだ。ましてや、STAGE1、2のゴーストごときに破られることはない」
何せあの学園のセキュリティには日本支部の総力が結集している。杏花を始めAランク保有者が関わっているのだ。それがSTAGEの低いゴーストに破られるわけがない。
「そうですか……それだと……なぜ?」
「それがわからんから、こうやって何回も調査したりしてるんだろうが」
俺は由香里を背にして、窓の外の景色を見る。
少し考えてから、再び由香里の方へと視線を向ける。
「由香里。瞬間移動の保有者は何人いる?」
「少しお待ちください」
そう言って近くのデスクのパソコンをカタカタと叩く。何の迷いもなく動く手が数分動いたあと。
「現在の日本支部内に瞬間移動の保有者は58名です。ですがいずれもBランク以下の保有者ばかりです」
「そうか。それじゃああれだけのゴーストを移動させることは不可能だな」
「はい。今回の事例は一度にゴーストの反応が出ています。それほど一気に瞬間移動できるとなると世界に数人しかいません」
「そうだよなあ」
だとしたら、それ以外の方法があるとなる。こんなことは考えたくもないが……可能性としてはあることを考えてしまう。
「学園から門の反応が出なかったこと……どこまで知れ渡っている?」
「いえ……先ほど調査が終了したばかりなので、まだ隊長にしか」
「そうか。なら……このこと絶対に他言するな。絶対に、だ。良いな?」
「それは構いませんが……上層部にはなんと?」
「『現場からは微量な門の反応が出現した。理由は不明』それで報告を上げておけ。ただ、支部長だけには俺から伝えておく。さすがに日本支部のトップが知らん訳にもいかないだろう。お前はそれ以外には絶対に言うな。もちろん、四門の班にもそう伝えておけ。いいな、支部内の人間を信用するな」
由香里の顔が曇る。
「……隊長。それは、支部内に反抗的な者がいるということですか?」
「ああ……しかもかなりの上級の位置にいる者と考えて良い。学園内のセキュリティを突破し、秘密裏にしかも杏花の結界に引っかからずゴーストを移動させることができるのはそういうやつしかいない」
しかも、杏花が関東地区全域に対して常に結界を張りゴーストの動きを探っていることは支部内でもごく一部だ。それを計算に入れているとなると相当、日本支部に詳しく自由に動けるほどの地位となる。
「わかりました……では、上層部に対して探りを入れましょうか?」
「いや、それはいい。まだ、状況証拠だけだしな。だが、警戒は怠るな。この先、何かが起こるかもしれない。お前の班だけも即応できる状況しておけ」
「わかりました。ニ班員にはそのように」
「頼む。それと例の件だが……」
「あの件でしたら、支部長の認可が降りています。あとは隊長のタイミングで発令できます」
「さすが。これで少しは戦力不足を解消できるな」
ふぅと一息ついてから椅子に深くもたれる。
「では、私はこれにて失礼します。その件も含めて上層部には報告しておきます」
「ああ、それでよろしくな」
そう言うと、由香里は礼儀正しい敬礼をしてから踵を返した。
失礼します。と由香里をは礼儀正しい敬礼をしてからソッとドアを開けて部屋から退出した。
「そうか…」
昼間だというのに薄暗い部屋の中。由香里の報告を淡々と聴き終えた俺は深くイスにもたれる。
それと同時に短くため息をついて少しだけ目を閉じた。
今回のことはそれほど被害が無かったとはいえ、安全地帯である学園の中で起こったことだ。
まだ、世間には公表されていないが、すでに簡単な事実関係は支部長を通じてバベル機関本部へと知れ渡っている。
上から管理体制がどうだとか、危機意識が欠けているのかどうとか訳のわからない小言は言われることは明らかだ。
今からそのことを思うと憂鬱になる。
だが……。
「で、結局反応が出なかったというのは本当なのか?」
「はい。四門班長が精密に調査した結果です。学園内から門が出現した反応はまったく出ませんでした」
「四門がやったのなら間違いないだろう……とすれば、そっちの方が厄介だな」
俺としては、この案件の方が頭を悩ませていた。
「ですが……そのようなことはあり得るのでしょうか? 門を通らずにゴーストが出現するなど……」
「あり得ないからこうして何回も調査をしてるんだろうが。これ、上に知れたら数百倍面倒くさいことになるぞ」
思わず拳を握りしめて机を叩いた。
通常、ゴーストが出現するには絶対に門が現れる。例外はない。どんなにSTAGEが上のゴーストでも必ずそうやって現れる。
だが、今回はその反応が全く見当たらないという。それなのにゴーストが現れた。あり得ないことが現実に起こっている。
「隊長……これはあくまで推測ですが……」
「なんだ? 言ってみろ」
「はい。今回は学園内で門が出現したのではなく。別の場所で出現したのではないでしょうか? そこで現れたゴーストが移動し、学園内に……ということは?」
まあ、その手の話なら通常ならあり得ない話ではないが。
「いやない。絶対にないな。あの学園のセキュリティは簡単に破られるもんじゃない。それこそ、十二神将ぐらいでないとダメだ。ましてや、STAGE1、2のゴーストごときに破られることはない」
何せあの学園のセキュリティには日本支部の総力が結集している。杏花を始めAランク保有者が関わっているのだ。それがSTAGEの低いゴーストに破られるわけがない。
「そうですか……それだと……なぜ?」
「それがわからんから、こうやって何回も調査したりしてるんだろうが」
俺は由香里を背にして、窓の外の景色を見る。
少し考えてから、再び由香里の方へと視線を向ける。
「由香里。瞬間移動の保有者は何人いる?」
「少しお待ちください」
そう言って近くのデスクのパソコンをカタカタと叩く。何の迷いもなく動く手が数分動いたあと。
「現在の日本支部内に瞬間移動の保有者は58名です。ですがいずれもBランク以下の保有者ばかりです」
「そうか。それじゃああれだけのゴーストを移動させることは不可能だな」
「はい。今回の事例は一度にゴーストの反応が出ています。それほど一気に瞬間移動できるとなると世界に数人しかいません」
「そうだよなあ」
だとしたら、それ以外の方法があるとなる。こんなことは考えたくもないが……可能性としてはあることを考えてしまう。
「学園から門の反応が出なかったこと……どこまで知れ渡っている?」
「いえ……先ほど調査が終了したばかりなので、まだ隊長にしか」
「そうか。なら……このこと絶対に他言するな。絶対に、だ。良いな?」
「それは構いませんが……上層部にはなんと?」
「『現場からは微量な門の反応が出現した。理由は不明』それで報告を上げておけ。ただ、支部長だけには俺から伝えておく。さすがに日本支部のトップが知らん訳にもいかないだろう。お前はそれ以外には絶対に言うな。もちろん、四門の班にもそう伝えておけ。いいな、支部内の人間を信用するな」
由香里の顔が曇る。
「……隊長。それは、支部内に反抗的な者がいるということですか?」
「ああ……しかもかなりの上級の位置にいる者と考えて良い。学園内のセキュリティを突破し、秘密裏にしかも杏花の結界に引っかからずゴーストを移動させることができるのはそういうやつしかいない」
しかも、杏花が関東地区全域に対して常に結界を張りゴーストの動きを探っていることは支部内でもごく一部だ。それを計算に入れているとなると相当、日本支部に詳しく自由に動けるほどの地位となる。
「わかりました……では、上層部に対して探りを入れましょうか?」
「いや、それはいい。まだ、状況証拠だけだしな。だが、警戒は怠るな。この先、何かが起こるかもしれない。お前の班だけも即応できる状況しておけ」
「わかりました。ニ班員にはそのように」
「頼む。それと例の件だが……」
「あの件でしたら、支部長の認可が降りています。あとは隊長のタイミングで発令できます」
「さすが。これで少しは戦力不足を解消できるな」
ふぅと一息ついてから椅子に深くもたれる。
「では、私はこれにて失礼します。その件も含めて上層部には報告しておきます」
「ああ、それでよろしくな」
そう言うと、由香里は礼儀正しい敬礼をしてから踵を返した。
失礼します。と由香里をは礼儀正しい敬礼をしてからソッとドアを開けて部屋から退出した。
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