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第2章 幼少期~現在と過去編~
16 ティリアと約束
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ティファニアは顔を再び引き締めると、これも通してみせると気合を入れた。そして、クイッと顎を少しあげてラティスを見上げる。
「お父様、今日の料理を出すお食事処を開いて商売したい!!」
「商売、かい?つまり、商会を設立して食事処を経営したいってことだね?」
報告を受けていたのか、ラティスの理解はとても速かった。
「うん!それで、いっぱいお金を貯めて、領内改革に出資できるようにしたいの!!出資する人が少しでも増えれば、小学校での道具の充実化とか、孤児院援助とか、高等学校の研究費用とかにあてられるでしょ?だから、お願い!!」
ティファニアは目を少し潤ませ、祈るように胸の前で指を組んでラティスを上目遣いで見つめる。このお願いは半分がティファニアのわがままなので、娘としてお願いする。
確かに出資したいという理由は大きいが、ティファニアは自分の生活改善をしてみたいのだ。前世の世界の便利さを知ってしまったが故に今の生活で少し物足りない時がある。もちろんスラムにいた為、今の生活水準がこの世界でいかに高いかわかる。しかし、後悔しない為に出来ることならなんでもしてみたいのだ。
「どう、かな?」
こてんと首を傾げたティファニアを見て、ラティスはまずは可愛いなと思い、そして腕を組んでうーんと悩んだ。
確かに料理は美味しいので繁盛するだろう。出資者が増えるのは領主としては望ましいことだ。しかし、ティファニアが忙しくなることが父親として心配なのだ。既に改正案を変えるのをティファニアがやることは決まってしまった。それに加え、施行されたらティファニアが主導とまではいかずとも、どこかしらで自分がやることを見つけて参加するだろう。さらに商会の経営も加わってしまったらティファニアが多忙になってしまう。そうすれば、無理してでもティファニアは全てこなすだろう。今はまだ身体が万全ではないまだ5歳の娘がそうするのをラティスは望まない。
(しかし、ティーは絶対に引き下がらないだろうな…。)
ラティスが拒んでも、いかにメリットがあるか、自分がやりたいことをラティスが認めてくれるまで語り続けるだろう。そうなったら、(そうならなくても)可愛い娘のお願いを断れないのだ。
ならばと思い、ラティスはティファニアを見た。
「じゃあ、会頭は私にして、主な経営を私の信頼する部下に任せるならいいよ。私はティーが忙しくなるのが心配なんだ。これから家庭教師がついたりするだろう。そうしたらティー自身の時間がなくなってしまうよ。だから、ティーはアイディア提供者として参加するのはどうだい?」
ティファニアは自分をいつも優先して考えてくれるラティスに心が温かくなった。自分は本当に愛されてるんだな、と。同時に今までどれだけ心配させてきたのか申し訳なくなる。
ティファニアは申し訳ない気持ちを見せないように笑った。
「お父様、ありがとう。」
「うん。いいんだよ。でも、やっぱりティーはもう少し自分のことを考えて欲しいかな。」
これからは気をつけるんだよとラティスはティファニアを優しく撫でた。
「じゃあ、後日私の部下を向かわせるからその時にいろいろ打ち合わせするんだよ。」
「うん!」
さあ、この話は終わりだと言ってラティスはティリアの方へ顔を向けた。先ほどからずっと口を挟まずにじっとよくわからない二人の話を聞いていたのだ。
「ティリア、眠くないかい?」
ティリアはふるふると横に振った。
その様子にラティスはにこりと笑うと両側に座っている子供達の手を取った。
「じゃあ、これから私の話だけどいいかい?」
ラティスの真剣な顔を二人はじっと見つめるとこくりと頷いた。
二人が頷いたのを見て、ラティスは場所を移そうと提案した。先ほどからずっと食堂にいるのだ。使用人達も片付けられないだろう。
ティファニアたちはそれに賛成し、月の階(2階)のリビングに移動した。来客用のリビングは太陽の階(1階)にあるため、家族のプライベートの場として設けられている月の階のリビングは広くゆったりとした印象だ。今までティファニアとラティス、時々シャルルしか使わなかった為、ティファニアはそこにティリアが加わったのが嬉しい。
しかし、リビングに手を繋いで向かう間、ティリアが嬉しそうにラティスと話していてもティファニアはずっと口を噤んでティリアの方を見ないようにしていた。浮かれてすっかり忘れていたことを思い出したからだ。おそらくラティスが話したいことはあのことについてだろうと思い、ずぶずぶと気が沈んでいくのがわかった。ティファニアは首を垂れ、自分の足だけを見るように歩いた。
リビングのソファに腰をかけ、紅茶を用意してもらとラティスが一人で、二人はその目の前に座った。ティリアは先ほどから何も話さない姉の様子をちろちろと横目で見ていた。
紅茶が目の前に出されると、ラティスが口を開いた。少し重く、低い声だった。
「わかっていると思うが、アドリエンヌ様の話だ。……まずは、ティーには助けるのが遅れて本当にすまないと思っている。私もアドリエンヌ様がまさかあんな暴挙に及んでいると思わなかった。」
ラティスの顔は眉間に皺が寄り険しい。ティリアはその時のティファニアの血塗れの様子を思い出したのか少し青ざめている。
ティファニアは少し眉を寄せながら笑った。
「ううん、ちゃんとたすけてくれたからいいの。それに、ティーも何も言わなかったから……。それより、ルシアはどうなったの?」
「はは、ティーは優しいな。自分よりルシアが先なのかい?」
ルシアは今まで見かけていない。家族を人質のようにとられていたようだから、ティファニアは心配だったのだ。頷いてラティスの答えを待った。
「まぁ、わかっていると思うが、ルシアはもうこの屋敷にはいない。彼女は家族をダシに脅されていたとはいえずっと見て見ぬ振りをした。それは許してはいけないことだ。彼女の家族はアドリエンヌ様の実家の領地に住んでいたんだよ。だから、家族を他の領地に避難させて、その避難先に彼女も行ってもらった。ルシアは無事だから心配しないでも大丈夫だよ。」
本来ならば警備隊に突き出して死罪だが、ティファニアはそれを望まない。そもそもルシアを守るためにアドリエンヌの暴力に耐えていたのだ。その努力は方向が間違っていたが、無碍にしたくなかった。ラティスはそれは言わずに安心させるようにティファニアを見た。
ティファニアはほっと胸をなでおろした。
「よかった…。お父様、ありがとうございます。」
「……ああ、私はティーが無事だったからそれで十分だよ。」
また失うことにならなくてよかったとラティスは安心した笑みを浮かべた。そして、紅茶を一口口に含んで仕切り直しをしてから、先ほどからじっと待ってるティリアを見る。
「………それから、アドリエンヌ様についてだ。ティリアにはすまないが、これからは領内の屋敷の一室から出すことを許す気はない。」
「……じゃあ、もうおかあさまとあえないの?」
ラティスの低く厳しい声にティリアの悲しげな声をあげた。
そして、ティファニアは目を反らして、なるべくティリアから自分の顔をみえないように俯く。
そんな娘を見て、ラティスはやはりまだ辛いことを人に言えないんだなと実感した。この一件は数日前なので当たり前だが、それでも辛いことを見せないように隠されてしまうのは悲しい。そんな生活をしてきたのだからしょうがないとわかっているが、ラティスの胸はチクリと痛んだ。
しかし、今はその隣にいる姉と同じく表情が曇った息子が先だ。ラティスはティリアににこりと笑いかけた。
「いや、ティリアが会いたいならば会いに行っていいよ。」
「じゃあ、またあえるの?」
ラティスの安心する優しい声にティリアはぱぁっと顔が明るくなった。
「ああ、毎日じゃないけど、たまに会いに行くといいよ。」
「うん!!」
「……それで、ティーはアドリエンヌ様の処遇はあれでいいかい?アドリエンヌ様の立場だからこれ以上何かできるわけでもないけど、ティーが望むならなんとかしよう。」
おそらく、ティリアが難しい言葉がわからないから遠まわしに聞いたのだろう。
ティファニアは一瞬顔を強張らせると、目を伏せて小さくふるふると首を振った。
「……そうか。ティーは本当に優しいね。」
そうラティスが言うと、この話は終わりだとパンと軽く手をたたいた。
ティファニアは居たたまれなくなり、もう寝ますとその場から去ろうとした。しかし、隣に座っていたティリアが腕をつかんで止める。
「おねえさま、もういっちゃうの?」
ティファニアは一瞬肩をびくりと揺らし、早くこの場から去れるように頷いた。
ティリアはいつもなら優しい姉が自分を見向きもしてくれないのに先ほどからひしひしと不安をつのらせていた。子供なりにわかるのだ。ティファニアが自分に対して何か思っている、と。
「おねえさま、どうしたの…?」
ティリアの泣きそうな声にティファニアも涙が込み上げてきた。腕からティリアの体温が伝わるが、それでもティリアの方を見ないようにした。だって、とティファニアは思う。
(だって、わたしはリアの母親を狂わせて領地へ追いやってしまったんだもん。もう、リアに合わせる顔がないよ……。)
そう、ティファニアは先ほどまでずっと頭の隅に追いやってきたが、自分がティリアにとっては母親に会えなくなった元凶だと思い出したのだ。
アドリエンヌはティファニア対しては最低な人間だったが、それでもティリアにとっては優しい母親だったはずなのだ。ティファニアは二人で内緒であっているとき、何度かアドリエンヌの話を嬉しそうに話す弟を見ている。その時の笑顔が今のティファニアの胸を刺すようだった。あんなことをされたが、アドリエンヌに申し訳なくなってくる。
悲痛な顔を浮かべてティリアを見ないティファニアを見かねて、ラティスは少し強い語調で言った。
「ティー、寝るのはティリアと話をしてからにしなさい。ティリアだって、ちゃんと言ってくれなきゃわからないだろう…。」
その言葉にティファニアはまるで死刑宣告を受けたかのように辛そうな顔で大きく目を見開いた。そして、イヤイヤと首を横に振った。
「だめだ。ちゃんと話しなさい。今話さなかったら、もうティリアと話す気はないのだろう?」
ラティスの言葉に今度はティリアが驚いた。そして震えた声でティファニアに尋ねた。
「……そうなの、おねえさま?」
ティファニアは目をきつく瞑り、否定も肯定もしなかった。
時間が妙にゆっくり流れるのが今のティファニアには苦痛でしかなかった。
「ティー、私たちは部屋から出るからきちんと二人で話しなさい。それまで、この部屋から出ることは許可できないからね。」
ラティスは固まったままの二人の子供を置いて使用人達とさっさと出て行ってしまった。
だだっ広い部屋に残されたのは小さな二人だけだ。
「おねえさま、なんでこっちむいてくれないの?」
「……。」
「おねえさま、ぼく、なにかした?」
「……。」
「ねぇ、おねえ、さまぁ……、こっちむいてよぉ……。」
何も答えないティファニアについにティリアの涙が流れた。
後ろからぐすんと鼻をすすりながら泣く音を聞くと、ティファニアは息が詰まり、苦しくなる。しかし、何も言えなかった。喉まで出かかった言葉が何かに押し込まれているような気がしてずっと胸の中でぐるぐるしている。
ティファニアがうつむいたまま何も言わないため、ティリアの泣き声だけが部屋に響いていた。
「うえっ、おねえ、さまぁ…。おねえさまぁ……。」
「……………きっと、リアはわたしをきらいになるよ。」
やっと絞り出した言葉にティファニアは唇をかんだ。ああ、ずるい言い方だなと思った。ティリアが否定するようなことをあえて聞いたのだ。
ティリアは思いがけない姉の言葉に涙が止まり、きょとんとした。
「ぼく、が?」
「……。」
「ぼく、おねえさま、すきだよ。」
「……今はすきでも、きらいになるよ。」
「なん、で?」
「……だって、わたしのせいで…、わたしのせいで、リアはアドリエンヌ様とあえなくなったから。」
「だから、こっちむいてくれないの?」
「……。」
「ぼく、おかあさまは、いいの。」
「っ!?いいわけないじゃん!!だって、リアのおかあさまなんだよ?ずっと一緒にいたんだよ!?」
「でも、ぼく、おかあさまはいいの。」
「そんなわけないじゃん!!」
「!?
ティファニアは強く怒鳴ると、ティリアは初めて怒った姉に目を見開いた。
強くいってしまったことに胸がチクチク痛むのを感じながら、ティファニアは心の中では謝り続けた。
(ごめん、リア……。でも……、本当はアドリエンヌ様のことは関係ないんだよ……。これはわたしの自分勝手なことなんだよ…。)
本当はティファニアはただティリアに嫌われるのが怖いから振り返れないのだ。今はティリアが小さくてわからなくても、いつかはあの時の事情を把握して自分の母親を排した自分が嫌われてしまうのがただただ怖いのだけなのだ。
ティファニアはもしラティスやアリッサが誰かに追いやられることになったら、無条件で元凶を嫌い、恨むだろう。もっと言えば、憎む。そんな感情がティリアから自分に向けられてしまうなら――……。
(わたしは今の内に、まだアドリエンヌ様がいなくなる前のわたしの記憶の方が多い内にティリアから、ティリアから離れたい……。)
ティファニアは前に指切りをしたことを思い出す。
『ティリアを裏切らない。ずっと信じられる存在になる。』
(あんな約束を勝手にしておきながら、自分から破ることになるなんて…。わたしが裏切っちゃうなんて……!ずっと信じられる存在になるなんて無理だったよ…。わたしは、わたしは、最低だ………。)
そう思ってもティファニアは強く言うのをやめられなかった。ティリアを突き放して、自分が早く見限れられればいいと思ったのだ。こんな最低な自分はティリアといる資格もないと思ったのだ。
「何も言わないんでしょ?だったらリアはいつかわたしを嫌いになるよ!!だって、アドリエンヌ様の方が大事に決まってるんでしょ?一緒にいたいに決まってるんでしょ?そしたら、リアがわたしを嫌いになるのは明らかじゃない!!」
息をつく間もなくいろいろ言われたことに、ティリアはまたきょとんとした。
なぜティファニアがそんなことで苦しそうなのかわからなかったのだ。確かにアドリエンヌは大事だし、会えなくなったのは悲しい。しかし会いたいと思うが、それがなぜ自分の方を見ない、これから話さなくなるかもしれない理由になるのかもわからなかった。
実はティリアはアドリエンヌと会えなくなったのに少しほっとしていた。最近のアドリエンヌが怖かったからだ。自分を見る目もティファニアへの態度も怖かったのだ。極めつけに、先日のアドリエンヌはティリアには母親に見えなかった。ただの怖い、自分の大好きな姉を傷つける鬼のようなものに思えたのだ。
だからか、ティリアのなかでは母親であるアドリエンヌより優しい大好きな姉であるティファニアの存在の方が大きいのだ。
「ぼく、おかあさまがちょっとこわい。おかあさまとあいたいけど、でも、おねえさまともいっしょがいい。……それとも、おねえさま、ぼく、きらい?」
「っ!?そんなことないよ!ティーはリアのこと大好きだよ!!」
ばっと振り返り、ティリアの言葉を直ぐに否定した。
「やっと、むいてくれた。」
ティリアは紫の綺麗な瞳を少し細めてにこりと笑った。その目元は少し腫れて赤かった。
「ねえ、リア、わたしはリアのお母様とリアを会えなくしたんだよ?リアはアドリエンヌ様が好きだったでしょ?だったら、」
「うん。でも、おねえさまのほうがすきだから。」
ティファニアは目を見開いた。まさか母親であるアドリエンヌより、その母親を排した自分の方がいいと言われるとは思いもよらなかったのだ。頭が混乱して、ぐるぐる回る。
「でも、わたしはリアを裏切らない約束をしたのに破ったんだよ?アドリエンヌ様に何もしなかった時点でわたしはもうリアを裏切っちゃったんだよ?」
「やく、そく…?」
あっとティファニアは思った。約束は自分が勝手にしたものだったからだ。
「いや、なんでもないよ。」
「……そう。」
ティリアは不服そうだったが、一応納得する。
「ぼく、おねえさまのこと、きらいにならないよ。おかあさまはおねえさまに、いっぱいいたいことしたから。いっぱいわるいことしてたから。ぼく、おかあさまがおねえさまにやってたことしってるもん。だから、おねえさまをきらいにならないよ。」
「……ほんとうに?」
「うん。……おねえさまはぼくをきらいにならない?」
「うん。当たり前だよ。ティーがリアのこと嫌いになるわけがないじゃん!」
自分が思っていたことを、怖がっていたことをティリアは真っ向から否定してくれた。ならば、自分もティリアが不安に思っていることを否定しないとと思い、即答した。
手を握り、真っすぐとティリアを見る。
「ありがとう、リア。ごめんね。ちょっと、なさけないとこ見せちゃったね。」
「ううん。おねえさまがわらってくれてよかった!」
その笑顔があまりにもかわいかったので、ティファニアはとりあえずティリアに抱き着いた。
「ねえ、リア、前に指切りしたのおぼえてる?」
「ゆびきり?」
「うん。初めて遊んだ日にしたの。こうやってやるんだよ。」
ティファニアはティリアの手を取り、お互いの小指と小指を結んだ。
「これはね、約束するときにやるの。」
「……さっきの?」
「うっ、それは忘れて……。とりあえず、約束しよう。だって、リアもティーを嫌いにならないんでしょ?」
「うん。」
「だったら、約束。ティーたちは絶対に嫌いにならないって。ねっ?」
「わかった!」
そういうと、ティファニアたちは指切りをした。
(今度こそ約束よ。絶対にリアを裏切らないから。ちゃんと信じられる人になるから。)
今度はちゃんと守ってみせるからとティファニアは誓い、手を繋いでティリアと部屋の外に出た。部屋の外ではラティス達が聞き耳を立てていることも知らずに。ティファニアが顔を真っ赤にしてラティスを可愛い声で怒るまであと数分である。る。
「お父様、今日の料理を出すお食事処を開いて商売したい!!」
「商売、かい?つまり、商会を設立して食事処を経営したいってことだね?」
報告を受けていたのか、ラティスの理解はとても速かった。
「うん!それで、いっぱいお金を貯めて、領内改革に出資できるようにしたいの!!出資する人が少しでも増えれば、小学校での道具の充実化とか、孤児院援助とか、高等学校の研究費用とかにあてられるでしょ?だから、お願い!!」
ティファニアは目を少し潤ませ、祈るように胸の前で指を組んでラティスを上目遣いで見つめる。このお願いは半分がティファニアのわがままなので、娘としてお願いする。
確かに出資したいという理由は大きいが、ティファニアは自分の生活改善をしてみたいのだ。前世の世界の便利さを知ってしまったが故に今の生活で少し物足りない時がある。もちろんスラムにいた為、今の生活水準がこの世界でいかに高いかわかる。しかし、後悔しない為に出来ることならなんでもしてみたいのだ。
「どう、かな?」
こてんと首を傾げたティファニアを見て、ラティスはまずは可愛いなと思い、そして腕を組んでうーんと悩んだ。
確かに料理は美味しいので繁盛するだろう。出資者が増えるのは領主としては望ましいことだ。しかし、ティファニアが忙しくなることが父親として心配なのだ。既に改正案を変えるのをティファニアがやることは決まってしまった。それに加え、施行されたらティファニアが主導とまではいかずとも、どこかしらで自分がやることを見つけて参加するだろう。さらに商会の経営も加わってしまったらティファニアが多忙になってしまう。そうすれば、無理してでもティファニアは全てこなすだろう。今はまだ身体が万全ではないまだ5歳の娘がそうするのをラティスは望まない。
(しかし、ティーは絶対に引き下がらないだろうな…。)
ラティスが拒んでも、いかにメリットがあるか、自分がやりたいことをラティスが認めてくれるまで語り続けるだろう。そうなったら、(そうならなくても)可愛い娘のお願いを断れないのだ。
ならばと思い、ラティスはティファニアを見た。
「じゃあ、会頭は私にして、主な経営を私の信頼する部下に任せるならいいよ。私はティーが忙しくなるのが心配なんだ。これから家庭教師がついたりするだろう。そうしたらティー自身の時間がなくなってしまうよ。だから、ティーはアイディア提供者として参加するのはどうだい?」
ティファニアは自分をいつも優先して考えてくれるラティスに心が温かくなった。自分は本当に愛されてるんだな、と。同時に今までどれだけ心配させてきたのか申し訳なくなる。
ティファニアは申し訳ない気持ちを見せないように笑った。
「お父様、ありがとう。」
「うん。いいんだよ。でも、やっぱりティーはもう少し自分のことを考えて欲しいかな。」
これからは気をつけるんだよとラティスはティファニアを優しく撫でた。
「じゃあ、後日私の部下を向かわせるからその時にいろいろ打ち合わせするんだよ。」
「うん!」
さあ、この話は終わりだと言ってラティスはティリアの方へ顔を向けた。先ほどからずっと口を挟まずにじっとよくわからない二人の話を聞いていたのだ。
「ティリア、眠くないかい?」
ティリアはふるふると横に振った。
その様子にラティスはにこりと笑うと両側に座っている子供達の手を取った。
「じゃあ、これから私の話だけどいいかい?」
ラティスの真剣な顔を二人はじっと見つめるとこくりと頷いた。
二人が頷いたのを見て、ラティスは場所を移そうと提案した。先ほどからずっと食堂にいるのだ。使用人達も片付けられないだろう。
ティファニアたちはそれに賛成し、月の階(2階)のリビングに移動した。来客用のリビングは太陽の階(1階)にあるため、家族のプライベートの場として設けられている月の階のリビングは広くゆったりとした印象だ。今までティファニアとラティス、時々シャルルしか使わなかった為、ティファニアはそこにティリアが加わったのが嬉しい。
しかし、リビングに手を繋いで向かう間、ティリアが嬉しそうにラティスと話していてもティファニアはずっと口を噤んでティリアの方を見ないようにしていた。浮かれてすっかり忘れていたことを思い出したからだ。おそらくラティスが話したいことはあのことについてだろうと思い、ずぶずぶと気が沈んでいくのがわかった。ティファニアは首を垂れ、自分の足だけを見るように歩いた。
リビングのソファに腰をかけ、紅茶を用意してもらとラティスが一人で、二人はその目の前に座った。ティリアは先ほどから何も話さない姉の様子をちろちろと横目で見ていた。
紅茶が目の前に出されると、ラティスが口を開いた。少し重く、低い声だった。
「わかっていると思うが、アドリエンヌ様の話だ。……まずは、ティーには助けるのが遅れて本当にすまないと思っている。私もアドリエンヌ様がまさかあんな暴挙に及んでいると思わなかった。」
ラティスの顔は眉間に皺が寄り険しい。ティリアはその時のティファニアの血塗れの様子を思い出したのか少し青ざめている。
ティファニアは少し眉を寄せながら笑った。
「ううん、ちゃんとたすけてくれたからいいの。それに、ティーも何も言わなかったから……。それより、ルシアはどうなったの?」
「はは、ティーは優しいな。自分よりルシアが先なのかい?」
ルシアは今まで見かけていない。家族を人質のようにとられていたようだから、ティファニアは心配だったのだ。頷いてラティスの答えを待った。
「まぁ、わかっていると思うが、ルシアはもうこの屋敷にはいない。彼女は家族をダシに脅されていたとはいえずっと見て見ぬ振りをした。それは許してはいけないことだ。彼女の家族はアドリエンヌ様の実家の領地に住んでいたんだよ。だから、家族を他の領地に避難させて、その避難先に彼女も行ってもらった。ルシアは無事だから心配しないでも大丈夫だよ。」
本来ならば警備隊に突き出して死罪だが、ティファニアはそれを望まない。そもそもルシアを守るためにアドリエンヌの暴力に耐えていたのだ。その努力は方向が間違っていたが、無碍にしたくなかった。ラティスはそれは言わずに安心させるようにティファニアを見た。
ティファニアはほっと胸をなでおろした。
「よかった…。お父様、ありがとうございます。」
「……ああ、私はティーが無事だったからそれで十分だよ。」
また失うことにならなくてよかったとラティスは安心した笑みを浮かべた。そして、紅茶を一口口に含んで仕切り直しをしてから、先ほどからじっと待ってるティリアを見る。
「………それから、アドリエンヌ様についてだ。ティリアにはすまないが、これからは領内の屋敷の一室から出すことを許す気はない。」
「……じゃあ、もうおかあさまとあえないの?」
ラティスの低く厳しい声にティリアの悲しげな声をあげた。
そして、ティファニアは目を反らして、なるべくティリアから自分の顔をみえないように俯く。
そんな娘を見て、ラティスはやはりまだ辛いことを人に言えないんだなと実感した。この一件は数日前なので当たり前だが、それでも辛いことを見せないように隠されてしまうのは悲しい。そんな生活をしてきたのだからしょうがないとわかっているが、ラティスの胸はチクリと痛んだ。
しかし、今はその隣にいる姉と同じく表情が曇った息子が先だ。ラティスはティリアににこりと笑いかけた。
「いや、ティリアが会いたいならば会いに行っていいよ。」
「じゃあ、またあえるの?」
ラティスの安心する優しい声にティリアはぱぁっと顔が明るくなった。
「ああ、毎日じゃないけど、たまに会いに行くといいよ。」
「うん!!」
「……それで、ティーはアドリエンヌ様の処遇はあれでいいかい?アドリエンヌ様の立場だからこれ以上何かできるわけでもないけど、ティーが望むならなんとかしよう。」
おそらく、ティリアが難しい言葉がわからないから遠まわしに聞いたのだろう。
ティファニアは一瞬顔を強張らせると、目を伏せて小さくふるふると首を振った。
「……そうか。ティーは本当に優しいね。」
そうラティスが言うと、この話は終わりだとパンと軽く手をたたいた。
ティファニアは居たたまれなくなり、もう寝ますとその場から去ろうとした。しかし、隣に座っていたティリアが腕をつかんで止める。
「おねえさま、もういっちゃうの?」
ティファニアは一瞬肩をびくりと揺らし、早くこの場から去れるように頷いた。
ティリアはいつもなら優しい姉が自分を見向きもしてくれないのに先ほどからひしひしと不安をつのらせていた。子供なりにわかるのだ。ティファニアが自分に対して何か思っている、と。
「おねえさま、どうしたの…?」
ティリアの泣きそうな声にティファニアも涙が込み上げてきた。腕からティリアの体温が伝わるが、それでもティリアの方を見ないようにした。だって、とティファニアは思う。
(だって、わたしはリアの母親を狂わせて領地へ追いやってしまったんだもん。もう、リアに合わせる顔がないよ……。)
そう、ティファニアは先ほどまでずっと頭の隅に追いやってきたが、自分がティリアにとっては母親に会えなくなった元凶だと思い出したのだ。
アドリエンヌはティファニア対しては最低な人間だったが、それでもティリアにとっては優しい母親だったはずなのだ。ティファニアは二人で内緒であっているとき、何度かアドリエンヌの話を嬉しそうに話す弟を見ている。その時の笑顔が今のティファニアの胸を刺すようだった。あんなことをされたが、アドリエンヌに申し訳なくなってくる。
悲痛な顔を浮かべてティリアを見ないティファニアを見かねて、ラティスは少し強い語調で言った。
「ティー、寝るのはティリアと話をしてからにしなさい。ティリアだって、ちゃんと言ってくれなきゃわからないだろう…。」
その言葉にティファニアはまるで死刑宣告を受けたかのように辛そうな顔で大きく目を見開いた。そして、イヤイヤと首を横に振った。
「だめだ。ちゃんと話しなさい。今話さなかったら、もうティリアと話す気はないのだろう?」
ラティスの言葉に今度はティリアが驚いた。そして震えた声でティファニアに尋ねた。
「……そうなの、おねえさま?」
ティファニアは目をきつく瞑り、否定も肯定もしなかった。
時間が妙にゆっくり流れるのが今のティファニアには苦痛でしかなかった。
「ティー、私たちは部屋から出るからきちんと二人で話しなさい。それまで、この部屋から出ることは許可できないからね。」
ラティスは固まったままの二人の子供を置いて使用人達とさっさと出て行ってしまった。
だだっ広い部屋に残されたのは小さな二人だけだ。
「おねえさま、なんでこっちむいてくれないの?」
「……。」
「おねえさま、ぼく、なにかした?」
「……。」
「ねぇ、おねえ、さまぁ……、こっちむいてよぉ……。」
何も答えないティファニアについにティリアの涙が流れた。
後ろからぐすんと鼻をすすりながら泣く音を聞くと、ティファニアは息が詰まり、苦しくなる。しかし、何も言えなかった。喉まで出かかった言葉が何かに押し込まれているような気がしてずっと胸の中でぐるぐるしている。
ティファニアがうつむいたまま何も言わないため、ティリアの泣き声だけが部屋に響いていた。
「うえっ、おねえ、さまぁ…。おねえさまぁ……。」
「……………きっと、リアはわたしをきらいになるよ。」
やっと絞り出した言葉にティファニアは唇をかんだ。ああ、ずるい言い方だなと思った。ティリアが否定するようなことをあえて聞いたのだ。
ティリアは思いがけない姉の言葉に涙が止まり、きょとんとした。
「ぼく、が?」
「……。」
「ぼく、おねえさま、すきだよ。」
「……今はすきでも、きらいになるよ。」
「なん、で?」
「……だって、わたしのせいで…、わたしのせいで、リアはアドリエンヌ様とあえなくなったから。」
「だから、こっちむいてくれないの?」
「……。」
「ぼく、おかあさまは、いいの。」
「っ!?いいわけないじゃん!!だって、リアのおかあさまなんだよ?ずっと一緒にいたんだよ!?」
「でも、ぼく、おかあさまはいいの。」
「そんなわけないじゃん!!」
「!?
ティファニアは強く怒鳴ると、ティリアは初めて怒った姉に目を見開いた。
強くいってしまったことに胸がチクチク痛むのを感じながら、ティファニアは心の中では謝り続けた。
(ごめん、リア……。でも……、本当はアドリエンヌ様のことは関係ないんだよ……。これはわたしの自分勝手なことなんだよ…。)
本当はティファニアはただティリアに嫌われるのが怖いから振り返れないのだ。今はティリアが小さくてわからなくても、いつかはあの時の事情を把握して自分の母親を排した自分が嫌われてしまうのがただただ怖いのだけなのだ。
ティファニアはもしラティスやアリッサが誰かに追いやられることになったら、無条件で元凶を嫌い、恨むだろう。もっと言えば、憎む。そんな感情がティリアから自分に向けられてしまうなら――……。
(わたしは今の内に、まだアドリエンヌ様がいなくなる前のわたしの記憶の方が多い内にティリアから、ティリアから離れたい……。)
ティファニアは前に指切りをしたことを思い出す。
『ティリアを裏切らない。ずっと信じられる存在になる。』
(あんな約束を勝手にしておきながら、自分から破ることになるなんて…。わたしが裏切っちゃうなんて……!ずっと信じられる存在になるなんて無理だったよ…。わたしは、わたしは、最低だ………。)
そう思ってもティファニアは強く言うのをやめられなかった。ティリアを突き放して、自分が早く見限れられればいいと思ったのだ。こんな最低な自分はティリアといる資格もないと思ったのだ。
「何も言わないんでしょ?だったらリアはいつかわたしを嫌いになるよ!!だって、アドリエンヌ様の方が大事に決まってるんでしょ?一緒にいたいに決まってるんでしょ?そしたら、リアがわたしを嫌いになるのは明らかじゃない!!」
息をつく間もなくいろいろ言われたことに、ティリアはまたきょとんとした。
なぜティファニアがそんなことで苦しそうなのかわからなかったのだ。確かにアドリエンヌは大事だし、会えなくなったのは悲しい。しかし会いたいと思うが、それがなぜ自分の方を見ない、これから話さなくなるかもしれない理由になるのかもわからなかった。
実はティリアはアドリエンヌと会えなくなったのに少しほっとしていた。最近のアドリエンヌが怖かったからだ。自分を見る目もティファニアへの態度も怖かったのだ。極めつけに、先日のアドリエンヌはティリアには母親に見えなかった。ただの怖い、自分の大好きな姉を傷つける鬼のようなものに思えたのだ。
だからか、ティリアのなかでは母親であるアドリエンヌより優しい大好きな姉であるティファニアの存在の方が大きいのだ。
「ぼく、おかあさまがちょっとこわい。おかあさまとあいたいけど、でも、おねえさまともいっしょがいい。……それとも、おねえさま、ぼく、きらい?」
「っ!?そんなことないよ!ティーはリアのこと大好きだよ!!」
ばっと振り返り、ティリアの言葉を直ぐに否定した。
「やっと、むいてくれた。」
ティリアは紫の綺麗な瞳を少し細めてにこりと笑った。その目元は少し腫れて赤かった。
「ねえ、リア、わたしはリアのお母様とリアを会えなくしたんだよ?リアはアドリエンヌ様が好きだったでしょ?だったら、」
「うん。でも、おねえさまのほうがすきだから。」
ティファニアは目を見開いた。まさか母親であるアドリエンヌより、その母親を排した自分の方がいいと言われるとは思いもよらなかったのだ。頭が混乱して、ぐるぐる回る。
「でも、わたしはリアを裏切らない約束をしたのに破ったんだよ?アドリエンヌ様に何もしなかった時点でわたしはもうリアを裏切っちゃったんだよ?」
「やく、そく…?」
あっとティファニアは思った。約束は自分が勝手にしたものだったからだ。
「いや、なんでもないよ。」
「……そう。」
ティリアは不服そうだったが、一応納得する。
「ぼく、おねえさまのこと、きらいにならないよ。おかあさまはおねえさまに、いっぱいいたいことしたから。いっぱいわるいことしてたから。ぼく、おかあさまがおねえさまにやってたことしってるもん。だから、おねえさまをきらいにならないよ。」
「……ほんとうに?」
「うん。……おねえさまはぼくをきらいにならない?」
「うん。当たり前だよ。ティーがリアのこと嫌いになるわけがないじゃん!」
自分が思っていたことを、怖がっていたことをティリアは真っ向から否定してくれた。ならば、自分もティリアが不安に思っていることを否定しないとと思い、即答した。
手を握り、真っすぐとティリアを見る。
「ありがとう、リア。ごめんね。ちょっと、なさけないとこ見せちゃったね。」
「ううん。おねえさまがわらってくれてよかった!」
その笑顔があまりにもかわいかったので、ティファニアはとりあえずティリアに抱き着いた。
「ねえ、リア、前に指切りしたのおぼえてる?」
「ゆびきり?」
「うん。初めて遊んだ日にしたの。こうやってやるんだよ。」
ティファニアはティリアの手を取り、お互いの小指と小指を結んだ。
「これはね、約束するときにやるの。」
「……さっきの?」
「うっ、それは忘れて……。とりあえず、約束しよう。だって、リアもティーを嫌いにならないんでしょ?」
「うん。」
「だったら、約束。ティーたちは絶対に嫌いにならないって。ねっ?」
「わかった!」
そういうと、ティファニアたちは指切りをした。
(今度こそ約束よ。絶対にリアを裏切らないから。ちゃんと信じられる人になるから。)
今度はちゃんと守ってみせるからとティファニアは誓い、手を繋いでティリアと部屋の外に出た。部屋の外ではラティス達が聞き耳を立てていることも知らずに。ティファニアが顔を真っ赤にしてラティスを可愛い声で怒るまであと数分である。る。
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