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ヴェルサーガ
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「……さっきの黒騎士は、おそらく奴の配下だった。それが倒されたんだ、確認に来たとしてもおかしくはない。俺たちがメルを呼び出せるのとは逆のパターンとなるが、奴は配下の居場所の近くに出現できるのかもしれない。すぐ目の前に現れなかったのは、奴も警戒しているからなのだろう」
アクトが剣を構える。
「でも、今襲われたら、私たちもう戦う力が残っていない……」
ミクが泣きそうになりながらそう話す。
彼女の充魔量は残り少なく、アクトも先ほど黒騎士にとどめを刺した時に、ほぼ使い切っている。
ライナスも、彼が体内に持っていた魔力の多くを魔剣に吸われ、立ち上がるのがやっとの状況だ。
「そう見せるな。まだ戦える、奴にそう思わせるんだ。東の空が白んできている。夜明けが近い、それまで戦えるという意思を見せるんだ!」
アクトがそう鼓舞する。
「そうですね……でも、逆になるかもしれません。『夜が明けきる前に、私たちを倒す』……そう考えて襲ってくるかもしれません。そうなると、私たちは本当にあっという間に殺されてしまいます。だったら……本当に戦えるようにしないといけません」
メルはそう言うと、さっき得たばかりの魔石を、鎧の上から自分の胸に当てた。
黄色に力強く輝いていた大きな魔石は、次第に灰褐色に色を変えて、やがて光を失い、崩れ落ちた。
億の価値がある魔石を、今、この場を乗り切るために自分自身の魔石へと充魔し、使い切った。
そしてその判断は正しかった。
黒い衣の男が、低く滑空するように、高速でアクト達の元に迫ってきたのだ。
それに対し、メルも身構え、そして迎え撃つ。
白銀の全身鎧を纏った女性剣士と、黒衣を纏った不死族妖魔の王。
その戦いは、ライナス達の想像を遙かに上回った。
先ほどの戦いが「全力では無かった」というメルの動きは、今、とてつもなく速い。
速すぎて、まともに目で追えないほどだ。
しかしその動き以上に、黒衣の男は訳の分からない挙動を見せた。
まず、体が浮いている。
そして高速で飛行し、急接近したかと思えば急停止、急上昇して、右腕から黒い魔球を放つ。
大きさは人の拳ぐらい、それが鷹が飛ぶほどもの速さでメルに迫る。
それも彼女は躱すが、それが地面に当たると速度を落とさぬまま地下深くまで潜っていく。
「絶対にその黒球に当たらないで! 魔力結界なんか役に立たずに体に大穴空けられるから!」
彼女はそう警告しながら、激しく剣を振って黒衣の男を追う。
「ハハッ、いいぞ、死に損ないの小娘っ! 『ディモース』の魔石を取り込みし半妖魔よ! こんなところでまた会えるとは! うらやましいぞ、使いこなしているようでな。しかも我の支配からも逃れている。そうでなければ我の有能な部下であったものを!」
「……貴方は絶対に許さない。私たちから多くの物を奪った。いいえ、多くの人々から今も奪い続けている。貴方は私が倒す!」
彼女はそう行って大きく飛び上がるが、黒衣の男……ヴェルサーガはさらに上に飛翔する。
「恐るべき気迫だな。だが、その程度では自分の身内も守れぬぞっ!」
ヴェルサーガは笑みを浮かべながら、黒球をミクに放つ。
ミクはそれを、バトルスーツごと背後に大きく飛んで回避した。
ミク自身も、少し驚いたような顔をしている。
魔力結界で防げないほどの強力な攻を察知した場合、自動で緊急避難的に背後に飛び上がる……その機能が働いたのだ。
「ほう……奇妙なカラクリだ。さすがはクリューガー家というところか。だが、この連弾は躱せるか?」
ヴェルサーガはそう言うと、ミクに対して二発、三発と連続攻撃してきた。
しかし、四発目はメルの強力な雷撃魔法を浴びて撃てなかった……ただ、魔力結界で防いだヴェルサーガに大きなダメージはないようだった。
そしてその二発目、三発目は、ライナスの大剣による「弾き飛ばし」と、アクトの強力な聖光魔法により打ち消された。
これは残り少ない彼らの力を振り絞った物だったが、ヴェルサーガの意表を突くものではあった。
「厄介な連中を仲間にしたな……光の剣士は以前から知っていたが、あの魔剣使いは初めて見た……あれは『サザンの剣』か? ……いや、その派生といったところか……」
と、ニヤけながらそれらの様子を見ていたベルサーガのすぐ側に、メルが迫っていた。
「くっ……」
彼女が空中で放つ強力な剣技を喰らい、ヴェルサーガの正面に多重の魔力結界が自動展開された。
「……小娘、その鎧を纏ったまま飛翔呪文まで使えるようになっていたか……ますます厄介だな……」
ヴェルサーガの顔から、笑みが消えた。
そこに、メルの渾身の爆撃魔法が放たれる。
間一髪で躱したヴェルサーガだったが、さらに速くなった白銀の剣士が追撃を放つ。
「無駄なことを……」
彼女の攻撃を多重結界で防ぎつつ、黒球を出現させてミクへと飛ばす。
しかし、それはライナスの魔剣により、ヴェルサーガ自身に向かって打ち返された。
「こやつ……」
ヴェルサーガがさらに黒球を放ち、その二つがぶつかり、爆撃魔法以上の爆発が起きた。
しかし、その残光を貫いて白い光の矢がヴェルサーガに迫り、やはり魔力結界により防がれる。
「キサマら……鬱陶しいぞっ!」
ヴェルサーガが怒りの表情を見せ、一度両手を交差させて広げると、そこには新たに三体もの、強烈な魔力を発する妖魔が出現した。
アクトが剣を構える。
「でも、今襲われたら、私たちもう戦う力が残っていない……」
ミクが泣きそうになりながらそう話す。
彼女の充魔量は残り少なく、アクトも先ほど黒騎士にとどめを刺した時に、ほぼ使い切っている。
ライナスも、彼が体内に持っていた魔力の多くを魔剣に吸われ、立ち上がるのがやっとの状況だ。
「そう見せるな。まだ戦える、奴にそう思わせるんだ。東の空が白んできている。夜明けが近い、それまで戦えるという意思を見せるんだ!」
アクトがそう鼓舞する。
「そうですね……でも、逆になるかもしれません。『夜が明けきる前に、私たちを倒す』……そう考えて襲ってくるかもしれません。そうなると、私たちは本当にあっという間に殺されてしまいます。だったら……本当に戦えるようにしないといけません」
メルはそう言うと、さっき得たばかりの魔石を、鎧の上から自分の胸に当てた。
黄色に力強く輝いていた大きな魔石は、次第に灰褐色に色を変えて、やがて光を失い、崩れ落ちた。
億の価値がある魔石を、今、この場を乗り切るために自分自身の魔石へと充魔し、使い切った。
そしてその判断は正しかった。
黒い衣の男が、低く滑空するように、高速でアクト達の元に迫ってきたのだ。
それに対し、メルも身構え、そして迎え撃つ。
白銀の全身鎧を纏った女性剣士と、黒衣を纏った不死族妖魔の王。
その戦いは、ライナス達の想像を遙かに上回った。
先ほどの戦いが「全力では無かった」というメルの動きは、今、とてつもなく速い。
速すぎて、まともに目で追えないほどだ。
しかしその動き以上に、黒衣の男は訳の分からない挙動を見せた。
まず、体が浮いている。
そして高速で飛行し、急接近したかと思えば急停止、急上昇して、右腕から黒い魔球を放つ。
大きさは人の拳ぐらい、それが鷹が飛ぶほどもの速さでメルに迫る。
それも彼女は躱すが、それが地面に当たると速度を落とさぬまま地下深くまで潜っていく。
「絶対にその黒球に当たらないで! 魔力結界なんか役に立たずに体に大穴空けられるから!」
彼女はそう警告しながら、激しく剣を振って黒衣の男を追う。
「ハハッ、いいぞ、死に損ないの小娘っ! 『ディモース』の魔石を取り込みし半妖魔よ! こんなところでまた会えるとは! うらやましいぞ、使いこなしているようでな。しかも我の支配からも逃れている。そうでなければ我の有能な部下であったものを!」
「……貴方は絶対に許さない。私たちから多くの物を奪った。いいえ、多くの人々から今も奪い続けている。貴方は私が倒す!」
彼女はそう行って大きく飛び上がるが、黒衣の男……ヴェルサーガはさらに上に飛翔する。
「恐るべき気迫だな。だが、その程度では自分の身内も守れぬぞっ!」
ヴェルサーガは笑みを浮かべながら、黒球をミクに放つ。
ミクはそれを、バトルスーツごと背後に大きく飛んで回避した。
ミク自身も、少し驚いたような顔をしている。
魔力結界で防げないほどの強力な攻を察知した場合、自動で緊急避難的に背後に飛び上がる……その機能が働いたのだ。
「ほう……奇妙なカラクリだ。さすがはクリューガー家というところか。だが、この連弾は躱せるか?」
ヴェルサーガはそう言うと、ミクに対して二発、三発と連続攻撃してきた。
しかし、四発目はメルの強力な雷撃魔法を浴びて撃てなかった……ただ、魔力結界で防いだヴェルサーガに大きなダメージはないようだった。
そしてその二発目、三発目は、ライナスの大剣による「弾き飛ばし」と、アクトの強力な聖光魔法により打ち消された。
これは残り少ない彼らの力を振り絞った物だったが、ヴェルサーガの意表を突くものではあった。
「厄介な連中を仲間にしたな……光の剣士は以前から知っていたが、あの魔剣使いは初めて見た……あれは『サザンの剣』か? ……いや、その派生といったところか……」
と、ニヤけながらそれらの様子を見ていたベルサーガのすぐ側に、メルが迫っていた。
「くっ……」
彼女が空中で放つ強力な剣技を喰らい、ヴェルサーガの正面に多重の魔力結界が自動展開された。
「……小娘、その鎧を纏ったまま飛翔呪文まで使えるようになっていたか……ますます厄介だな……」
ヴェルサーガの顔から、笑みが消えた。
そこに、メルの渾身の爆撃魔法が放たれる。
間一髪で躱したヴェルサーガだったが、さらに速くなった白銀の剣士が追撃を放つ。
「無駄なことを……」
彼女の攻撃を多重結界で防ぎつつ、黒球を出現させてミクへと飛ばす。
しかし、それはライナスの魔剣により、ヴェルサーガ自身に向かって打ち返された。
「こやつ……」
ヴェルサーガがさらに黒球を放ち、その二つがぶつかり、爆撃魔法以上の爆発が起きた。
しかし、その残光を貫いて白い光の矢がヴェルサーガに迫り、やはり魔力結界により防がれる。
「キサマら……鬱陶しいぞっ!」
ヴェルサーガが怒りの表情を見せ、一度両手を交差させて広げると、そこには新たに三体もの、強烈な魔力を発する妖魔が出現した。
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