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裏の大剣
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メルはカラエフの元から持ってきた「いわく付きの大剣」をライナスの足下に放り投げた後、近くにいた数体のワーウフル達をあっという間にただの肉塊に変え、そしてすぐに黒騎士へと走り出した。
迫っていた周囲のワーウルフがいなくなったことで、アクト達に若干の余裕が生まれる。
「……サザンの剣、その『裏物』か……確かにライナス、お前はこれを使えたっていう話だったな」
「えっと……すごく短時間でしたけど、はい」
「私も見てたよ。最初は凄く重そうだったけど、突然軽々と扱うようになって、もう、みんなビックリして……」
ミクがそうフォローする。
「にわかには信じがたかったが……そいつは、今から千年以上も前に作られたと伝わる剣だ。五百年程前、かの大将軍『サザン』が、一人で千人が守る城を落としたという逸話があるが、そのときの魔剣の話を聞いたことはないか?」
「あ、はい、それはあります。有名な英雄伝説で、七大神器に次ぐ威力を持つ魔剣だって……えっ、まさかこれがそうなんですか?」
「いや、そうじゃない。さすがにそれは未だに王宮に保管されている。ただ、その剣と対となる魔剣が同時に制作されていた。出来の良い方をサザンが使用し、国宝となり、残りは別の貴族階級のものが受け継いできた。今は話す余裕がないから詳細は省くが、それが巡りめぐってカラエフの工房に保管されてたってわけだ。まあ、どこまで本当かは分からないがな……とんでもなく重い剣で、俺も引き抜くことができなかった。馬鹿力がある奴なら、持ち上げることはできたかもしれないが、実戦では到底使えない。メルも重そうにしていただろう? だが、伝説ではサザンが軽々と使いこなしていた……それが再現した。だから騒ぎになっていたんだ」
「……騒ぎになっていたんですか?」
「おまえにその自覚はなかったんだろうがな。軽々と扱える者が出た時点で、伝説は本当だった、ということだ。そしておまえは、ひょっとしたら大将軍サザンの再来なのかもしれない、ってことだ」
「……はっ? いえ、そんなことを言われても……」
「まあ、それはどうでもいいとして……一度は自在に扱えたんだろう? もう一度同じ事をすればいい。メルはこの剣を取ってくるために、往復でかなりの魔力を消費した。そうまでしてでも、おまえにその剣を使ってもらいたかったんだ。理由はただ一つ。あの黒騎士の防御力が高すぎるからだ」
今、メルとその黒騎士が死闘を繰り広げている。
手数や速さではメルが圧倒しているが、アクトが言う通り、鎧も分厚く、そして巨大な盾を持っており、それで防がれるとメルの剣はダメージを全く与えられていないように見えた。
「……あの戦いに、僕に加勢しろと……」
「そうだ。そのために、その剣を取ってきたんだ」
アクトがライナスを見つめる。
ライナスは、やや戸惑ったようにミクを見た。
彼女も、ライナスの目を見てうなずいた。
「やってみせろ……ミクもそれを期待している」
ライナスは、別にミクに良いところを見せたいと思っていたわけではない……はずだった。
けれど、アクトの言葉に、ミクも真剣な表情で彼を見ている。
自分は期待されている……まだ共に過ごした時間は短いが、いつの間にか好意を持ってしまっていた彼女に。
「……一つだけ教えてください。『サザンの剣』の『裏物』っていうのは、どういう意味なんですか?」
「さっき言ったように、できの良い方をサザンが受け取った。その剣は、できが悪い方だ。だが、威力が弱いという意味ではない。むしろ逆……扱いが難しい、いわば『暴れ馬』っていうことらしい。少なくとも、伝承ではそういうことだ」
「扱いが難しい……でも、分かりました。やります」
彼はそう言って、刃が半分地面にめり込んだ大剣の、その柄を握った。
……以前と同様に、剣から声が聞こえてくるような気がする。
「モット、ヨコセ……」
ライナスは、それに心の中の言葉で応じる。
「好きなだけ持って行け。その代わり、一時だけ俺の相棒になれっ!」
刹那、剣全体が黄金色に輝きだした。
そしてライナスは、その大剣を軽々と持ち上げ、振り回した。
すさまじい唸りを上げるその威圧威圧に、ミクは思わず身を縮めた。
ファーウルフたちの攻撃は、メルに数体倒された後、少し止まっていた。
しかし新手のワーウルフ達がまた迫っていたのだが、ライナスの持つ大剣から発せられる威圧感にたじろぐ。
そこに、ライナスがまずは小手調べとばかりにそのワーウルフ達に襲いかかる。
一振りで、二体のワーウルフが吹き飛んだ。かすっただけで、その巨体が砕け散る威力だ。
先ほどまでの苦戦がウソのように、残り数体のワーウルフを倒したライナスは、未だ激闘を繰り広げる黒騎士とメルの元へと向かって駆けだした。
「……来たわね、ライナス君。どう、使いこなせそう?」
「はい、今のところは。でも、全身の力を吸い続けられている感じではあります。でも、なんとか気力で頑張ります!」
「そう、さすがね。ミクも見てるから、良いところ見せてね!」
「はい!」
まだ、メルも冗談を言う余裕がある。
会話からそれを感じたライナスは、伝説の大剣……正確はその『裏物』を、黒騎士に向かって振り下ろした。
迫っていた周囲のワーウルフがいなくなったことで、アクト達に若干の余裕が生まれる。
「……サザンの剣、その『裏物』か……確かにライナス、お前はこれを使えたっていう話だったな」
「えっと……すごく短時間でしたけど、はい」
「私も見てたよ。最初は凄く重そうだったけど、突然軽々と扱うようになって、もう、みんなビックリして……」
ミクがそうフォローする。
「にわかには信じがたかったが……そいつは、今から千年以上も前に作られたと伝わる剣だ。五百年程前、かの大将軍『サザン』が、一人で千人が守る城を落としたという逸話があるが、そのときの魔剣の話を聞いたことはないか?」
「あ、はい、それはあります。有名な英雄伝説で、七大神器に次ぐ威力を持つ魔剣だって……えっ、まさかこれがそうなんですか?」
「いや、そうじゃない。さすがにそれは未だに王宮に保管されている。ただ、その剣と対となる魔剣が同時に制作されていた。出来の良い方をサザンが使用し、国宝となり、残りは別の貴族階級のものが受け継いできた。今は話す余裕がないから詳細は省くが、それが巡りめぐってカラエフの工房に保管されてたってわけだ。まあ、どこまで本当かは分からないがな……とんでもなく重い剣で、俺も引き抜くことができなかった。馬鹿力がある奴なら、持ち上げることはできたかもしれないが、実戦では到底使えない。メルも重そうにしていただろう? だが、伝説ではサザンが軽々と使いこなしていた……それが再現した。だから騒ぎになっていたんだ」
「……騒ぎになっていたんですか?」
「おまえにその自覚はなかったんだろうがな。軽々と扱える者が出た時点で、伝説は本当だった、ということだ。そしておまえは、ひょっとしたら大将軍サザンの再来なのかもしれない、ってことだ」
「……はっ? いえ、そんなことを言われても……」
「まあ、それはどうでもいいとして……一度は自在に扱えたんだろう? もう一度同じ事をすればいい。メルはこの剣を取ってくるために、往復でかなりの魔力を消費した。そうまでしてでも、おまえにその剣を使ってもらいたかったんだ。理由はただ一つ。あの黒騎士の防御力が高すぎるからだ」
今、メルとその黒騎士が死闘を繰り広げている。
手数や速さではメルが圧倒しているが、アクトが言う通り、鎧も分厚く、そして巨大な盾を持っており、それで防がれるとメルの剣はダメージを全く与えられていないように見えた。
「……あの戦いに、僕に加勢しろと……」
「そうだ。そのために、その剣を取ってきたんだ」
アクトがライナスを見つめる。
ライナスは、やや戸惑ったようにミクを見た。
彼女も、ライナスの目を見てうなずいた。
「やってみせろ……ミクもそれを期待している」
ライナスは、別にミクに良いところを見せたいと思っていたわけではない……はずだった。
けれど、アクトの言葉に、ミクも真剣な表情で彼を見ている。
自分は期待されている……まだ共に過ごした時間は短いが、いつの間にか好意を持ってしまっていた彼女に。
「……一つだけ教えてください。『サザンの剣』の『裏物』っていうのは、どういう意味なんですか?」
「さっき言ったように、できの良い方をサザンが受け取った。その剣は、できが悪い方だ。だが、威力が弱いという意味ではない。むしろ逆……扱いが難しい、いわば『暴れ馬』っていうことらしい。少なくとも、伝承ではそういうことだ」
「扱いが難しい……でも、分かりました。やります」
彼はそう言って、刃が半分地面にめり込んだ大剣の、その柄を握った。
……以前と同様に、剣から声が聞こえてくるような気がする。
「モット、ヨコセ……」
ライナスは、それに心の中の言葉で応じる。
「好きなだけ持って行け。その代わり、一時だけ俺の相棒になれっ!」
刹那、剣全体が黄金色に輝きだした。
そしてライナスは、その大剣を軽々と持ち上げ、振り回した。
すさまじい唸りを上げるその威圧威圧に、ミクは思わず身を縮めた。
ファーウルフたちの攻撃は、メルに数体倒された後、少し止まっていた。
しかし新手のワーウルフ達がまた迫っていたのだが、ライナスの持つ大剣から発せられる威圧感にたじろぐ。
そこに、ライナスがまずは小手調べとばかりにそのワーウルフ達に襲いかかる。
一振りで、二体のワーウルフが吹き飛んだ。かすっただけで、その巨体が砕け散る威力だ。
先ほどまでの苦戦がウソのように、残り数体のワーウルフを倒したライナスは、未だ激闘を繰り広げる黒騎士とメルの元へと向かって駆けだした。
「……来たわね、ライナス君。どう、使いこなせそう?」
「はい、今のところは。でも、全身の力を吸い続けられている感じではあります。でも、なんとか気力で頑張ります!」
「そう、さすがね。ミクも見てるから、良いところ見せてね!」
「はい!」
まだ、メルも冗談を言う余裕がある。
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