魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

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連闘

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 アクテリアス、通り名・アクトは、魔法と剣の両方を使いこなす魔道剣士だ。
 しかも、彼は魔導コンポーザー単体では作成不可能な「純白の聖光」を使うことができる。
 すなわち、「太陽光」を凝縮したような光の魔法を放つことができ、それこそが妖魔に効果的なダメージを与える要因だった。

「アクト兄さん、このワーウルフ、凄くタフで、片腕を吹き飛ばしたぐらいじゃ怯まないの!」

「だろうな。こいつら半分、アンデッド化している。俺の聖光魔法なら有効だが、俺もそれほど魔力が豊富ってわけじゃない。早くその装備に充魔しろ! それからライナス、おまえはミクの左側を守れ! 俺は正面と右側の敵を受け持つ!」

「「はいっ!」」

 ミクとライナスが、素直にアクトの指示に従った。
 アクトは、己の血に宿る魔力を元に、充魔石なしで「純白の聖光」を放てるが、そのままでは効率が悪い。

 そのために触媒を用いるが、最も効果的なそれは特別な魔水晶を内包した「剣」だ。
 剣の構えや握り方を変化させることにより、矢のように、あるいは槍のように聖光を放つ。
 それはアンデッドモンスターの呪いを受けた肉体を溶かす、毒のように作用する。
 また、肉体を持たず、通常は魔石を壊す以外に倒す方法がない幽魔であったとしても、ダメージを与えることができる。

 見た目にはそれほど大きくはない光の矢でも、呪いを受けたワーウルフに効果があるのも同じ理由だった。
 先ほどまで、ミクの魔光弾を受けても多少の傷なら突っ込んできたワーウルフ達が、小さな矢傷を受けて悶え苦しむ。

 とはいえ、アクトのそれはあまり連射ができない。
 敵の中には、左右に避けながら、あるいは仲間を盾にして突き進んでくる固体もいた。
 しかし、距離を詰め寄られたとしても、アクトが純白に光る美しい刀身を振るうと、それで腹部に傷を受けた魔物は、苦痛のうめき声と共に崩れ落ちた。
 魔法の狙いも正確で、剣技も早く、鋭い。
 ライナスはその戦いぶりに感嘆しながらも、自分が受け持った左から迫る魔物と、必死に剣を振るって戦った。
 ツーハンデッドソード +3、クリューガ・カラエフモデル。
 その美しく、長い刀身を生かして、迫り来るワーウルフに切りつけ、突き刺す。
 魔物の長く鋭い爪、素早い動き、そして力の強さは脅威だったが、それでも魔導コンポを装備した剣の切れ味、そしてライナスの技の確かさが、正面からの一対一ならば勝っていた。
 ライナスが三体、アクトが六体のワーウルフを戦闘不能にしたところで、ミクが

「充魔、完了したよっ!」

 と声を上げた。

「よし、ちょうど迫っていた一団は一段落したところだ……もう十数匹来ているが、大丈夫か?」
「任せて、今なら残量気にせず放てるから……いっけぇー、魔光弾っ!」

 ミクが、百メールほど先に新たに迫ってきていたワーウルフの集団に、先ほどよりも速く、高出力の青い光を連射した。
 今まで経験したことのない実戦だったが、「動く的」に対しての攻撃にも慣れたのか、緩急やフェイントを使って、ワーウルフたちに弾道を読ませず、また、逃げ場をなくすように追い込む形で放ち続け、それらの敵はアクトやライナスのいる地点にたどり着く前に全滅した。
 もう、森から迫るワーウルフの姿はないように見えた。
 三人は、やっと一息ついた。

「もう、なんなのよ……ハンターって、こんなに大変だったの? この武装でも、姉さんが心配する訳ね……」

 ミクがため息をつく。

「まあ、ひとつ想定が狂えば激戦になるし、命を落としかねないってことは確かだ。そうでなければ、毎日のようにはハンターに死者は出ないはずだからな……それにしても、今回のは星一つとノーマルのハンターの手に負えるものではなかった。星三つでも、たまたま俺が奴らに有効な聖光魔法が有効だったから対応できたっていうこともある。毎回これでは、さすがに手に追えない」

 アクトが肩で息をしながら、やや納得がいかない表情でそう呟く。
 と、そのときに、ライナスの耳に、新しい警報音が聞こえた。
 同時に、ミクとアクトも森の方に目をやった。
 何かが、近づいてくる。

「……馬に乗った……人? ううん、あの魔石は、未加工の活性体……魔物?」

「いや、全身鎧を着ている……持っている武器は、巨大な槍だな……高度な知性を有する人間型のアンデッドモンスター、もしくは、上位の悪魔だ……」

 ミクとアクトが会話しているが、その声が強ばっているのが分かる。
 また、彼らの言う「魔石」が、これまで見たどの魔物よりも強力であることが、百メール以上先からでも分かった。

「……姉さんに埋め込まれた魔石にも匹敵する、強力な超魔石……」

「……ワーウフルたちに呪いをかけて集めた……いや、創り出したのは、奴か……」

「……まさか、あれって……」

 ライナスは、ミクの声が震えているのに気づいた。
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