魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール

文字の大きさ
上 下
29 / 42

ミクの鎧

しおりを挟む
 その後、冒険者ギルドへと赴き、ミクが簡単な筆記試験と武装の確認を経て、正式に登録。
 このときの装備は丈夫な革製の戦闘服と汎用ロッドの組み合わせで、完全なダミーだ。
(ただし、その下に、魔石を埋め込んだインナーは着込んでいる)。

 隣に「+3」レベルの完全武装をしている、しかも星持ちのハンターであるライナスが居たために、そのパートナーとして、特に注意を受けることもなかった。

 しかし、彼女の装備がこんな簡単な物のはずがない。
 アイテムショップの共同経営者であるし、何より「クリューガ」ブランドの主任技師でもあったのだ。

 二人は一旦「魔法堂 白銀の翼」へミクの荷物を取りに戻った。
 再度出発する際は、革製の戦闘服すら脱いでおり、単なる冒険者用の丈夫な服とズボン、それに背中に黒っぽい大きなリュックを背負っているだけだ。

 ただし、その背中には短めのロッドが取り付けられている。
 一見すると高そうには見えないが、ライナスは、ロッドのオーラのようなものから、ただならぬ威圧感を感じていた。

 また、それとは別に、リュックの脇に黒色の二本の筒が映えているのも気になった。
 単なる筒ではなく、根元から上方にかけてやや細くなっており、さらに先がもう一度太くなるような変わった形状だ。

 そして、これは「クリューガ」ブランドの特徴でもあるのだが、一つ一つの造形が美しく、クールに見える。
 それは単なるリュックであってもそうだ。
 ミクが背負っていることで余計に美しく見えるのか……ライナスはそう考えて、隣を歩きながらミクを見つめてしまっており……ふと横を見た彼女と目が合い、少し照れて目をそらした。

「……やだ、ライ君、どうしたの?」

 ミクもやや照れている。

「いや、その……そのリュック、重くないのかなって思って。持ってあげようか?」

「あ、そっちか……うん、ありがと。でも、大丈夫。これ、凄く軽いの。それに、背負っていないと意味なくて……いざというとき、合い言葉を一言唱えるか、腰のスイッチで瞬時に装着される鎧でもあるの」

「……鎧? それが?」

 ミクの言っていることの意味が、一瞬理解できなかった。

「まあ、あとで見せてあげる。それより、ちょっと持ってみる?」

 彼女の言葉に、好奇心もあり、背中から下ろしたそれを受け取った。
 それは想像以上に軽く、衣類を少しきつめに詰め込んだ程度の重さしか感じられない。

「本当だ……凄く軽い……本当にこれが鎧になるのかい?」

「うん、そう。『ミリスニウム』っていう、凄く軽くて丈夫な、貴重な金属を使っているから……実際に鎧になったら、重さはそのままで、フルプレートメールより丈夫になるのよ」

「へえ……凄いんだね……」

 彼女が軽くそんな冗談を言うので、自分も軽く相づちを打ったのだが、ミクのことだから本当かもしれないと、少し考えを改めた。
 ライナスはリュックを返した後、それが鎧になることは別にしても、よく似合っていると彼女を褒めた。
 するとミクは、やや頬を赤らめながら、

「ライ君も、新しい装備、凄く似合っててカッコいいよ!」

 と返してくれた。
 確かに、
鏡を見たときは、全身ダークグレーを基調とした鎧、兜、そして両手剣の真新しい装備に、大柄な自分の体格がピタリと合っていて、見違えるほどだった。

 それを自分の隣を歩くミクに褒められたことで、余計に意識してしまう。
 ただ、カラエフに注意されたことを思い出して、ミクに対して余計な気を持つまいと考え、軽く礼を言っただけにとどめた。
 しかし、そんな彼の様子に、ミクはやや不満げだった。

 そして彼女に連れられてやってきたのが、イフカの街から二時間ほど歩いた場所にある、クリューガブランドの魔道具の試験場だった。

 高く分厚い塀に囲まれ、縦、横それぞれ二百メールにも及ぶ敷地内に、藁でできた人形や、鉄の鎧をかぶせられた人形、赤土が二メール以上の高さに、土手のように盛り上げられた場所、土嚢が積み上げられた箇所などがあり、それぞれに弓矢の的のようなものが取り付けられていた。

 もちろん、そこに入るには厳重な警備があったのだが、ミクはやはり顔パスだった。
 彼女と一緒にいるライナスも、その主要装備全てがクリューガブランド、しかもカラエフモデルということもあったのか、ミクの簡単な紹介だけで通された。

 彼女と一緒に向かったのは、試験場の中でも窪地になっている場所で、その直径は三十メールほどあった。
 周囲は赤土で覆われて、簡単に固められている。

「この中だと、かなり派手に魔道具を使っても周りに迷惑かけないからね。でも、窪地の中は土や小石が飛んでくることがあるから注意して。『黒蜥蜴』は頭と口元まで保護して、その上から兜もかぶってね。それと、目元の『黒梟』の装備も絶対忘れずにね」

 ミクからそう注意を受けて、ライナスはフル装備状態になった。
 ミクも、『黒蜥蜴』の上位版、ブラックストレッチインナー+4、通称『黒竜』で頭部まで覆い、口元も保護。目元も『黒梟』の上位版、アドバンスド・アウル・アイ +3、通称『黒鷹』の装備を確かめる。
 その上で、彼女は短く、呪文を唱えるように言葉を発した。

「ラムダ!」

 ――次の瞬間、彼女の体は、青と白で構成された、美しいボディースーツに全身を包まれていた。

名前:ミク (女性) 年齢:十六歳
身長:1.5メール
スタイル:支援系・中遠距離攻撃系魔導コンポーザー
ランク:ノーマル
主な所有アイテム:
メイン戦闘魔道具兼バトルアーマー:クリューガ・バトルスーツ +5 (ミク&カラエフモデル)
戦闘および支援系万能補助魔道具:ロッド・オブ・レクサシズハイブリッド +5
ブラックストレッチインナー+4(通称:黒竜)
アドバンスド・アウル・アイ +3(通称:黒鷹)
アミュレット・オブ・ザ・シルバーデーヴィー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...