魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール

文字の大きさ
上 下
25 / 42

最終目標(真)

しおりを挟む
「騎士道って……ああ、そういうことなのね。勇敢であり、強く、正しく……正義こそが理念。悪に立ち向かい、女性や子供、弱者に優しく……そして何より、誠実であること……ライナス君は、本物の騎士を目指しているのね。道理で、正直で真っ直ぐなはずね……」

 メルが、ようやく納得できたように笑顔を浮かべた。

「本当、ライ君は、理想的な騎士像かも……って、ちょっと待って! ライ君、今、忠誠を誓っている主君はいないの?」

 ミクが慌ててそう尋ねた。
 もしそうならば、自分と冒険に出るなどもってのほかだ。

「いや、幸か不幸か、僕なんかを配下として認めてくれる人はいないんだ……僕も、誰かの下につこうと思うこともなかった。でも……」

「待って! ……まさかとは思うけど、私たちは伯爵家を追い出された身だから、私たちに忠誠を誓う、なんてことを言われても困るからね!」

 ミクがそう言ってライナスを制止した。

「……いや、残念ながら、僕はそこまで思い上がっていない。騎士として誰かの配下に任命してもらうことがどれだけ大変で、けれど、どれだけ名誉な事かは分かっているつもりだから」

「……そう、よね。うん、それならよかった……」

 ミクは心底ほっとしたようにそう呟いた。

「……だから、僕ができるとしたら、せいぜい、自己満足の、騎士の真似事だ。自分の信念を貫いて、正しいと思った事のために剣を振るうことを厭わない。そうなれたらいいとは思っているよ。それで大事に思う人を守れたら、僕にとってとても名誉な事だ。まあ、そのためには、もっともっと強くならないといけないけどね」

「……ライ君、姉さんが言うように、本当に真っ直ぐなのね……よかった……」

「……どう? ますますライナス君のこと、好きになった?」

 メルが、目を潤ませる妹をからかうようにそう言った。

「……好きとか、そういう次元じゃなくて……単純に、尊敬できる、って思った」

 からかわれたことに反論せず、素直にそう返した妹に、姉は少しだけ驚き、そしてまた微笑んだ。

「うん、そうね……だったら、やっぱり私が言うように、ミクのことお任せできそうね……ライナス君、私からもお願い。ミクと一緒に冒険に出て、守ってあげて」

 メルの言葉に、ライナスは一度、ミクを見た。
 彼女は、固唾をのんで、真剣にライナスの返答を待っていた。

「はい、僕で良ければ」

 躊躇せず発した彼の答えに、二人共が満面の笑みになった。
 そしてこの日は、今後の計画を少し話し合った後、もう遅いから、ということで、一度解散することになった。

 翌日の朝。
 まずはライナスの装備を調えるために、彼女達の知り合いという、鍛冶職のカラエフを尋ねることにしていた。

 同行するのはミク一人。
 日中は、メルはほとんど寝ているという話だった。

 二人だけで出歩くのは、仕事を探してハンターギルドに向かったとき以来、二度目だ。
 前日に本音を打ち明け合った事もあり、前回よりもさらに打ち解けていた。
 ただ、彼女はまだ、話していないことがいくつかあるということだった。
 その一つが、ライナスと一緒に冒険に出ることを決心した、一番大きな決め手。それは、メルの推薦だという。

「姉さんは、本当に私がハンターになることを反対していたの。でも、私が意地になって、一人で旅に出るのは止めたかった。そんなときにライ君が来てくれた……姉さんの言う『タイミング』もあったけど、私としても、姉さんが言うんだから間違いない、と思ったの。まあ、その……わたしも、ライ君なら一緒にいて楽しそうだな、とは思ったけど」

 少し頬を赤らめ、そんなふうに言葉にしてくれる美少女に、ライナスも鼓動が高鳴るのを感じた。

「あと、もう一つ。本当の最終目標は……少なくとも、姉さんは私たちに話したこととは違う目標を持っていて、それを隠している……」

「本当の最終目標?」

「そう……確かに昨日話した『あのアイテム』を入手することは、表向きの最終目標とはしているけど……たぶん……ううん、間違いなく、それは姉さんの本音じゃないの」

 まだ朝早い時間、ミクはあえて町外れを遠回りするように歩いていた。会話を誰かに聞かれたくないからだ。

 周囲は草原で、少なくとも半径100メールには誰も居ない。
 それでもさらに警戒して、『神器』の名前は出さない。
 そして真剣な表情で、絶対、他の人には漏らさないように念を押した上で、彼女は呟いた。

「『あのアイテム』は、『あの敵』を倒すために絶対に必要なもの……姉さんは、元に戻ることを目標にしているんじゃない。『あの敵』を倒すことを最終目標にしているの……たとえ、刺し違えてでも!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

初めて入ったダンジョンに閉じ込められました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました

陽好
ファンタジー
 ダンジョンの発生から50年、今ではダンジョンの難易度は9段階に設定されていて、最も難易度の低いダンジョンは「ノーマーク」と呼ばれ、簡単な試験に合格すれば誰でも入ることが出来るようになっていた。  東京に住む19才の男子学生『熾 火天(おき あぐに)』は大学の授業はそれほどなく、友人もほとんどおらず、趣味と呼べるような物もなく、自分の意思さえほとんどなかった。そんな青年は高校時代の友人からダンジョン探索に誘われ、遺跡探索許可を取得して探索に出ることになった。  青年の探索しに行ったダンジョンは「ノーマーク」の簡単なダンジョンだったが、それでもそこで採取できる鉱物や発掘物は仲介業者にそこそこの値段で買い取ってもらえた。  彼らが順調に探索を進めていると、ほとんどの生物が駆逐されたはずのその遺跡の奥から青年の2倍はあろうかという大きさの真っ白な動物が現れた。  彼を誘った高校時代の友人達は火天をおいて一目散に逃げてしまったが、彼は一足遅れてしまった。火天が扉にたどり着くと、ちょうど火天をおいていった奴らが扉を閉めるところだった。  無情にも扉は火天の目の前で閉じられてしまった。しかしこの時初めて、常に周りに流され、何も持っていなかった男が「生きたい!死にたくない!」と強く自身の意思を持ち、必死に生き延びようと戦いはじめる。白いバケモノから必死に逃げ、隠れては見つかり隠れては見つかるということをひたすら繰り返した。  火天は粘り強く隠れ続けることでなんとか白いバケモノを蒔くことに成功した。  そして火天はダンジョンの中で生き残るため、暇を潰すため、体を鍛え、精神を鍛えた。  瞬発力を鍛え、膂力を鍛え、何事にも動じないような精神力を鍛えた。気づくと火天は一歩で何メートルも進めるようになり、拳で岩を砕けるようになっていた。  力を手にした火天はそのまま外の世界へと飛び出し、いろいろと巻き込まれながら遺跡の謎を解明していく。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...