魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール

文字の大きさ
上 下
6 / 42

骸骨王の討伐

しおりを挟む
白銀に輝く板状の硬化物質を幾重にも重ね、光の反射によっては虹色にも見える。

関節部分や特徴ある文様は漆黒、角度によっては濃いブラウンにも変化する。
足下から頭上、そして腕、指先まで統一感のあるその出で立ちは、神々しさと禍々しさを併せ持つ。
何より、その圧倒的なオーラ、迫力に圧倒される。

腰には長剣を収めた鞘を装備し、こちらも白銀に輝いている。
先ほどまで装備していたメイスは、もう必要ないとばかりに傍らに置かれていた。
数秒間、あっけにとられていたライナスだったが、その白銀の騎士が彼の方を向いたことで我に返り、

「め……メルさんなんですか?」

と、うわずった声を出した。

「ええ、そうよ。これが、私が完全武装した姿。呪われた鎧だから、私しか装備できない……ううん、私も、ごく短時間しかこの姿で居られない。だから、すぐに片付けるわね」

 頭部まで兜で覆われているため、声がややくぐもって聞こえるが、口調は間違いなくメルだった。
 そして彼女が剣を鞘から抜き、一閃する。
 ほんの一瞬、橙色の閃光が広間を横断したかと思うと、六本腕の化け物以外の、取り巻きのスケルトン達がバラバラになって崩れ落ちた。

「なっ……い、今のは……」

 ライナスが驚きの声を上げる。

「……この剣に溜めていた『掃討の刃』だったけど……やっぱり上位のアンデッドモンスターには通用しなかったわね……」

 事もなげに言い放つ白銀の騎士に、彼はもう何も言えなくなっていた。
 これでこの部屋に残っているのは六本腕の巨大スケルトンだけだった。

 そしてその化け物は、自分が攻撃されたと認識し、六本腕全てに装備した長剣を、器用に、高速で振り回してメルに迫る。
 それに対して彼女の方からも、引き抜いた白い刀身を残して高く掲げ、巨大スケルトンに挑んだ。

 ――一瞬、メルがその化け物の右横をすり抜けたかのように見えた。

 約一秒後、骸骨の右腕三本が、握っていた長剣ごと、ガシャガシャと音を立てて床に落ちた。
 グオオォ、と不気味なうめき声を上げた化け物だったが、その次の瞬間には残りの三本の腕も切り落とされ……いつの間にか、白銀の騎士は元の場所に戻っていた。

(速い……)

 ライナスも、目で追うのが精一杯だった。
 全ての腕を切り落とされた化け物は、残った六本の、肘関節までの骨をウネウネと不気味に蠢かすことしかできない。

 さらに白銀の騎士が再び巨大スケルトンに接近、飛び上がって体を横にねじるように長剣を一閃すると、緑色に不気味に光る目を持つ頭部が、あっけなく床に転がり落ちた。

 それでも、まだ化け物は立っていた。
 既に理解を超えた戦いの様に、呆然と見つめることしかできないライナス。

「……さすがにしぶといわね……でも、おかげで魔石、取りやすくなった」

 鎧を纏っているメルはそう口にすると、剣を鞘に収め、ゆっくりと正面から巨大スケルトンに迫り、胸部の魔石を回収しようと腕を伸ばした。

 その途端、その骸骨の大きな肋骨が数本、開くように左右に展開し、伸びて、鋭い先端が挟み込むように白銀の鎧を捕えた。 

 思わず、「ああっ!」と声を上げるライナス。
 しかし、その肋骨の接触部分がわずかにオレンジ色の火花を放っただけで、鎧を纏った彼女は全く構わずに前進し、右手で鶏卵ほどの黄色に輝く魔石を握り、メキメキッという音の後、強引に引き抜いた。

 これが決め手になり、巨大スケルトンもバラバラの骨になって床に崩れ落ちた。
 大広間の外からも、小さくなにかが砕けるような音が聞こえた。

「……このあたり一体のアンデッドを支配していたこの骸骨の王が倒されたので、配下のモンスターも形状を維持できなくなったみたいね……これでもう、貴方の剣技だけで十分安全に帰還できるはず。私も、思いがけず良質の魔石が手に入ったし……良い取引、できましたね」

 彼女はそう言うと、その武装を瞬時に解除して、元の防護服のみの姿に戻った。
 そしてライナスの仲間が待つ部屋の前まで引き返し、無事スケルトン軍団の討伐が終わったことを告げて、中から彼女が持ち込んだリュックを持ってきてもらった。

「じゃあ、またのご利用、お待ちしています!」

 メルがそう言って、右手にリュックを持ち、左手で前方にくるりと円を描く。
 すると、彼女の目の前に楕円形の、白く濁ったような奇妙な空間が現れた。

 メルがそこを潜り抜けると、瞬時にその白濁した空間は消え去り、後には静寂と、部屋の外にスケルトン達の残骸のみが残った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...