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骸骨王の討伐
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白銀に輝く板状の硬化物質を幾重にも重ね、光の反射によっては虹色にも見える。
関節部分や特徴ある文様は漆黒、角度によっては濃いブラウンにも変化する。
足下から頭上、そして腕、指先まで統一感のあるその出で立ちは、神々しさと禍々しさを併せ持つ。
何より、その圧倒的なオーラ、迫力に圧倒される。
腰には長剣を収めた鞘を装備し、こちらも白銀に輝いている。
先ほどまで装備していたメイスは、もう必要ないとばかりに傍らに置かれていた。
数秒間、あっけにとられていたライナスだったが、その白銀の騎士が彼の方を向いたことで我に返り、
「め……メルさんなんですか?」
と、うわずった声を出した。
「ええ、そうよ。これが、私が完全武装した姿。呪われた鎧だから、私しか装備できない……ううん、私も、ごく短時間しかこの姿で居られない。だから、すぐに片付けるわね」
頭部まで兜で覆われているため、声がややくぐもって聞こえるが、口調は間違いなくメルだった。
そして彼女が剣を鞘から抜き、一閃する。
ほんの一瞬、橙色の閃光が広間を横断したかと思うと、六本腕の化け物以外の、取り巻きのスケルトン達がバラバラになって崩れ落ちた。
「なっ……い、今のは……」
ライナスが驚きの声を上げる。
「……この剣に溜めていた『掃討の刃』だったけど……やっぱり上位のアンデッドモンスターには通用しなかったわね……」
事もなげに言い放つ白銀の騎士に、彼はもう何も言えなくなっていた。
これでこの部屋に残っているのは六本腕の巨大スケルトンだけだった。
そしてその化け物は、自分が攻撃されたと認識し、六本腕全てに装備した長剣を、器用に、高速で振り回してメルに迫る。
それに対して彼女の方からも、引き抜いた白い刀身を残して高く掲げ、巨大スケルトンに挑んだ。
――一瞬、メルがその化け物の右横をすり抜けたかのように見えた。
約一秒後、骸骨の右腕三本が、握っていた長剣ごと、ガシャガシャと音を立てて床に落ちた。
グオオォ、と不気味なうめき声を上げた化け物だったが、その次の瞬間には残りの三本の腕も切り落とされ……いつの間にか、白銀の騎士は元の場所に戻っていた。
(速い……)
ライナスも、目で追うのが精一杯だった。
全ての腕を切り落とされた化け物は、残った六本の、肘関節までの骨をウネウネと不気味に蠢かすことしかできない。
さらに白銀の騎士が再び巨大スケルトンに接近、飛び上がって体を横にねじるように長剣を一閃すると、緑色に不気味に光る目を持つ頭部が、あっけなく床に転がり落ちた。
それでも、まだ化け物は立っていた。
既に理解を超えた戦いの様に、呆然と見つめることしかできないライナス。
「……さすがにしぶといわね……でも、おかげで魔石、取りやすくなった」
鎧を纏っているメルはそう口にすると、剣を鞘に収め、ゆっくりと正面から巨大スケルトンに迫り、胸部の魔石を回収しようと腕を伸ばした。
その途端、その骸骨の大きな肋骨が数本、開くように左右に展開し、伸びて、鋭い先端が挟み込むように白銀の鎧を捕えた。
思わず、「ああっ!」と声を上げるライナス。
しかし、その肋骨の接触部分がわずかにオレンジ色の火花を放っただけで、鎧を纏った彼女は全く構わずに前進し、右手で鶏卵ほどの黄色に輝く魔石を握り、メキメキッという音の後、強引に引き抜いた。
これが決め手になり、巨大スケルトンもバラバラの骨になって床に崩れ落ちた。
大広間の外からも、小さくなにかが砕けるような音が聞こえた。
「……このあたり一体のアンデッドを支配していたこの骸骨の王が倒されたので、配下のモンスターも形状を維持できなくなったみたいね……これでもう、貴方の剣技だけで十分安全に帰還できるはず。私も、思いがけず良質の魔石が手に入ったし……良い取引、できましたね」
彼女はそう言うと、その武装を瞬時に解除して、元の防護服のみの姿に戻った。
そしてライナスの仲間が待つ部屋の前まで引き返し、無事スケルトン軍団の討伐が終わったことを告げて、中から彼女が持ち込んだリュックを持ってきてもらった。
「じゃあ、またのご利用、お待ちしています!」
メルがそう言って、右手にリュックを持ち、左手で前方にくるりと円を描く。
すると、彼女の目の前に楕円形の、白く濁ったような奇妙な空間が現れた。
メルがそこを潜り抜けると、瞬時にその白濁した空間は消え去り、後には静寂と、部屋の外にスケルトン達の残骸のみが残った。
関節部分や特徴ある文様は漆黒、角度によっては濃いブラウンにも変化する。
足下から頭上、そして腕、指先まで統一感のあるその出で立ちは、神々しさと禍々しさを併せ持つ。
何より、その圧倒的なオーラ、迫力に圧倒される。
腰には長剣を収めた鞘を装備し、こちらも白銀に輝いている。
先ほどまで装備していたメイスは、もう必要ないとばかりに傍らに置かれていた。
数秒間、あっけにとられていたライナスだったが、その白銀の騎士が彼の方を向いたことで我に返り、
「め……メルさんなんですか?」
と、うわずった声を出した。
「ええ、そうよ。これが、私が完全武装した姿。呪われた鎧だから、私しか装備できない……ううん、私も、ごく短時間しかこの姿で居られない。だから、すぐに片付けるわね」
頭部まで兜で覆われているため、声がややくぐもって聞こえるが、口調は間違いなくメルだった。
そして彼女が剣を鞘から抜き、一閃する。
ほんの一瞬、橙色の閃光が広間を横断したかと思うと、六本腕の化け物以外の、取り巻きのスケルトン達がバラバラになって崩れ落ちた。
「なっ……い、今のは……」
ライナスが驚きの声を上げる。
「……この剣に溜めていた『掃討の刃』だったけど……やっぱり上位のアンデッドモンスターには通用しなかったわね……」
事もなげに言い放つ白銀の騎士に、彼はもう何も言えなくなっていた。
これでこの部屋に残っているのは六本腕の巨大スケルトンだけだった。
そしてその化け物は、自分が攻撃されたと認識し、六本腕全てに装備した長剣を、器用に、高速で振り回してメルに迫る。
それに対して彼女の方からも、引き抜いた白い刀身を残して高く掲げ、巨大スケルトンに挑んだ。
――一瞬、メルがその化け物の右横をすり抜けたかのように見えた。
約一秒後、骸骨の右腕三本が、握っていた長剣ごと、ガシャガシャと音を立てて床に落ちた。
グオオォ、と不気味なうめき声を上げた化け物だったが、その次の瞬間には残りの三本の腕も切り落とされ……いつの間にか、白銀の騎士は元の場所に戻っていた。
(速い……)
ライナスも、目で追うのが精一杯だった。
全ての腕を切り落とされた化け物は、残った六本の、肘関節までの骨をウネウネと不気味に蠢かすことしかできない。
さらに白銀の騎士が再び巨大スケルトンに接近、飛び上がって体を横にねじるように長剣を一閃すると、緑色に不気味に光る目を持つ頭部が、あっけなく床に転がり落ちた。
それでも、まだ化け物は立っていた。
既に理解を超えた戦いの様に、呆然と見つめることしかできないライナス。
「……さすがにしぶといわね……でも、おかげで魔石、取りやすくなった」
鎧を纏っているメルはそう口にすると、剣を鞘に収め、ゆっくりと正面から巨大スケルトンに迫り、胸部の魔石を回収しようと腕を伸ばした。
その途端、その骸骨の大きな肋骨が数本、開くように左右に展開し、伸びて、鋭い先端が挟み込むように白銀の鎧を捕えた。
思わず、「ああっ!」と声を上げるライナス。
しかし、その肋骨の接触部分がわずかにオレンジ色の火花を放っただけで、鎧を纏った彼女は全く構わずに前進し、右手で鶏卵ほどの黄色に輝く魔石を握り、メキメキッという音の後、強引に引き抜いた。
これが決め手になり、巨大スケルトンもバラバラの骨になって床に崩れ落ちた。
大広間の外からも、小さくなにかが砕けるような音が聞こえた。
「……このあたり一体のアンデッドを支配していたこの骸骨の王が倒されたので、配下のモンスターも形状を維持できなくなったみたいね……これでもう、貴方の剣技だけで十分安全に帰還できるはず。私も、思いがけず良質の魔石が手に入ったし……良い取引、できましたね」
彼女はそう言うと、その武装を瞬時に解除して、元の防護服のみの姿に戻った。
そしてライナスの仲間が待つ部屋の前まで引き返し、無事スケルトン軍団の討伐が終わったことを告げて、中から彼女が持ち込んだリュックを持ってきてもらった。
「じゃあ、またのご利用、お待ちしています!」
メルがそう言って、右手にリュックを持ち、左手で前方にくるりと円を描く。
すると、彼女の目の前に楕円形の、白く濁ったような奇妙な空間が現れた。
メルがそこを潜り抜けると、瞬時にその白濁した空間は消え去り、後には静寂と、部屋の外にスケルトン達の残骸のみが残った。
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