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解毒
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「えっ……ちょ……メ、メルさんっ!? なんで……っていうか、どうやって?」
数日前に会ったばかりのアイテムショップ店主が目の前に現れたことに、ライナスの思考は全く付いていけない……どころか、停止してしまっていた。
「ごめんなさい、驚かせちゃったね……って、驚いたのは私も同じよ。ついこの前渡したばっかりの『アミュレット・オブ・ザ・シルバーデーヴィー」をもう使っちゃうなんて……いきなり無茶しすぎってことだから」
「そ、それは……すみません……あ、今はそれより……」
「そうね。毒を受けた人が居るんでしょう? ……彼ね、ちょっと待って」
彼女はそう言うと、腰に装備していた短いロッドを取り出し、苦しんでいた少年の側に寄り添うように近づき、何やら呪文を唱えた。
ロッドからわずかにオレンジ色の光が漏れ、その数秒後、荒かった少年の呼吸は落ち着いた。
「……メルさん、今のはラピュモス……」
ライナスが、少し驚いたようにそう質問した。
「そう、解毒の中級魔法。これで彼はもう安心……っていうか、これぐらいの魔法か解毒薬はパーティーで準備しておかないと」
「それが……中級の解毒薬は用意していたんですが、使い切ってしまって……」
「なるほど……えっと、彼が持っているロッド……こう言っては失礼かもしれないけど、安物ね……いくら初級者用のダンジョンだからって、装備をケチると命取りになるわよ」
メルはそう言うと、背負っていた大きなリュックから小瓶を五つ取り出した。
「取り急ぎ、ラピュモスと同じ効果を持つ解毒薬を五本、持ってきてるから、これを貸してあげる。一つ三万ウェンだけど、この迷宮を出られるまでに使わなければ、私の店まで返しに来てくれればお金はいらないから。えっと……あとはみんな、軽傷ね。これならそのロッドに込められている初級の治癒魔法で治せるね」
「いえ、メルさん……あの扉の向こうには、毒を帯びた武器を持つ大量のスケルトンが存在しているんです。それをなんとかしないと、解毒薬がいくつあっても足りません」
「……なるほど……かなりの数の邪悪な気配は察知してたけど、スケルトンの大群だったのね……」
「察知していたって……どうやって……」
「私が転移してくる前に、一瞬、その腕輪が赤く光ったでしょう? あれで、この場所でのパーティーの人数や怪我人の有無、魔物の気配なんかを探っていたの。でも、どうやら閉じられた空間みたいだったから、魔物に関してはいまいち正確な情報が得られなかったんだけどね」
「なるほど……でも、転移の魔法って、最高級の魔法じゃないですか!」
なおも現状を理解できないライナスが、質問を重ねた。
「そう、だから私一人しか移動できないの。残念ながらあなたたちを連れて街に戻ることはできないわ。それに、私一人が往復するだけで大量の魔力を消費するの。高品質な魔石で充魔する必要があるわ。だからこそ百万ウェンっていうお金が必要になるんだけどね」
「そんな高度な魔法……いや、この街のアイテムショップのオーナーなら可能なんですね」
「まあ、そういうこと……あ、でも、このこと、秘密にしておいてね。他の皆も、絶対私がここに来たこと、ライナス君がそのアイテムを使ったことも、話したらダメだからね」
人差し指を唇に当てて、笑顔で他の五人にも説明するメル。
「はい、それはもちろん!」
ライナスも、とりあえず仲間の少年が解毒したことに安堵して笑顔で答えたのだが、次の瞬間、
「……絶対よ……」
と、メルが低い声で真剣に言葉を放った。
その瞬間、ライナスは、ぞわっと全身に鳥肌が立つのを感じた。
驚いて、
「……メルさん、今の……」
と彼女に声をかけるライナス。
「あれ? ライナス君には、効いていない……レジストしたんだ……さすがね……」
彼女は素の表情に戻り、感心したようにそう言葉をかけた。
最初、彼はその意味が分からなかったが、他の五人が表情をこわばらせ、震えながら何度もうなずいているのを見て、これが一種の魔法なのだと悟った。
「大丈夫、約束を守ってくれさえすれば害はない、一種の契約魔法だから……それより、私はあんまり長く居られないの。もう少ししたら、また転移魔法で帰らなくちゃいけないわ」
「でも……それじゃあ、僕たちは自力で街まで戻らないといけないっていうことですよね? さっきも言ったとおり、大量のスケルトンがこの扉の向こうにひしめいているんですよ?」
毒に冒された仲間は助かったようだが、このままでは危機からの脱出には至らない……ライナスはそのことを知っていた。
「そうね。だからこそ、私を呼び出したんでしょう? ――魔物を全滅させるために」
自信ありげにニッコリと笑うメルの余裕、それと同時に突然強くなった彼女の威圧感に、ライナスは再び鳥肌が立つのを感じた。
数日前に会ったばかりのアイテムショップ店主が目の前に現れたことに、ライナスの思考は全く付いていけない……どころか、停止してしまっていた。
「ごめんなさい、驚かせちゃったね……って、驚いたのは私も同じよ。ついこの前渡したばっかりの『アミュレット・オブ・ザ・シルバーデーヴィー」をもう使っちゃうなんて……いきなり無茶しすぎってことだから」
「そ、それは……すみません……あ、今はそれより……」
「そうね。毒を受けた人が居るんでしょう? ……彼ね、ちょっと待って」
彼女はそう言うと、腰に装備していた短いロッドを取り出し、苦しんでいた少年の側に寄り添うように近づき、何やら呪文を唱えた。
ロッドからわずかにオレンジ色の光が漏れ、その数秒後、荒かった少年の呼吸は落ち着いた。
「……メルさん、今のはラピュモス……」
ライナスが、少し驚いたようにそう質問した。
「そう、解毒の中級魔法。これで彼はもう安心……っていうか、これぐらいの魔法か解毒薬はパーティーで準備しておかないと」
「それが……中級の解毒薬は用意していたんですが、使い切ってしまって……」
「なるほど……えっと、彼が持っているロッド……こう言っては失礼かもしれないけど、安物ね……いくら初級者用のダンジョンだからって、装備をケチると命取りになるわよ」
メルはそう言うと、背負っていた大きなリュックから小瓶を五つ取り出した。
「取り急ぎ、ラピュモスと同じ効果を持つ解毒薬を五本、持ってきてるから、これを貸してあげる。一つ三万ウェンだけど、この迷宮を出られるまでに使わなければ、私の店まで返しに来てくれればお金はいらないから。えっと……あとはみんな、軽傷ね。これならそのロッドに込められている初級の治癒魔法で治せるね」
「いえ、メルさん……あの扉の向こうには、毒を帯びた武器を持つ大量のスケルトンが存在しているんです。それをなんとかしないと、解毒薬がいくつあっても足りません」
「……なるほど……かなりの数の邪悪な気配は察知してたけど、スケルトンの大群だったのね……」
「察知していたって……どうやって……」
「私が転移してくる前に、一瞬、その腕輪が赤く光ったでしょう? あれで、この場所でのパーティーの人数や怪我人の有無、魔物の気配なんかを探っていたの。でも、どうやら閉じられた空間みたいだったから、魔物に関してはいまいち正確な情報が得られなかったんだけどね」
「なるほど……でも、転移の魔法って、最高級の魔法じゃないですか!」
なおも現状を理解できないライナスが、質問を重ねた。
「そう、だから私一人しか移動できないの。残念ながらあなたたちを連れて街に戻ることはできないわ。それに、私一人が往復するだけで大量の魔力を消費するの。高品質な魔石で充魔する必要があるわ。だからこそ百万ウェンっていうお金が必要になるんだけどね」
「そんな高度な魔法……いや、この街のアイテムショップのオーナーなら可能なんですね」
「まあ、そういうこと……あ、でも、このこと、秘密にしておいてね。他の皆も、絶対私がここに来たこと、ライナス君がそのアイテムを使ったことも、話したらダメだからね」
人差し指を唇に当てて、笑顔で他の五人にも説明するメル。
「はい、それはもちろん!」
ライナスも、とりあえず仲間の少年が解毒したことに安堵して笑顔で答えたのだが、次の瞬間、
「……絶対よ……」
と、メルが低い声で真剣に言葉を放った。
その瞬間、ライナスは、ぞわっと全身に鳥肌が立つのを感じた。
驚いて、
「……メルさん、今の……」
と彼女に声をかけるライナス。
「あれ? ライナス君には、効いていない……レジストしたんだ……さすがね……」
彼女は素の表情に戻り、感心したようにそう言葉をかけた。
最初、彼はその意味が分からなかったが、他の五人が表情をこわばらせ、震えながら何度もうなずいているのを見て、これが一種の魔法なのだと悟った。
「大丈夫、約束を守ってくれさえすれば害はない、一種の契約魔法だから……それより、私はあんまり長く居られないの。もう少ししたら、また転移魔法で帰らなくちゃいけないわ」
「でも……それじゃあ、僕たちは自力で街まで戻らないといけないっていうことですよね? さっきも言ったとおり、大量のスケルトンがこの扉の向こうにひしめいているんですよ?」
毒に冒された仲間は助かったようだが、このままでは危機からの脱出には至らない……ライナスはそのことを知っていた。
「そうね。だからこそ、私を呼び出したんでしょう? ――魔物を全滅させるために」
自信ありげにニッコリと笑うメルの余裕、それと同時に突然強くなった彼女の威圧感に、ライナスは再び鳥肌が立つのを感じた。
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