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果物の種、川魚の骨

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 シルヴィはひとしきり泣いた後、アイゼンとソフィアに、

「ごめんなさい……私がショウさんに、『祭壇にその白い光を当ててみてください!』なんて言ってしまったばっかりに、こんなことになって……」

 と謝罪した。

「いや、謝るのは儂の方じゃ。まさか、ショウ殿が純白の光を発現できるとは思うておらなんだ……白い光は太陽の光の象徴。闇の妖魔を消し去り、聖なる信者であることを証明する、今は失われし高度な魔法のはずじゃったのじゃ……まあ、そんなことは今はいい。シルヴィ、昨日熱を出したそうじゃのう……」

「はい、でももう大分下がって……」

 と、そこまで彼女が言ったとき、アイゼンは彼女の側に寄って、その額に左手をかざした。
 シルヴィも、何をされるか分かったのか、静かに目を閉じた。
 アイゼンの掌から、淡いオレンジ色の光が漏れる。

 しばらくそのままだったが、アイゼンが何やら呪文のようなものを唱えると、そのオレンジの光は一瞬強くなり、シルヴィのしっぽがフワッと浮いた。

「……何かの熱病だとまずいと思うたが、ただの過労のようじゃのう……しかし、甘く見てはならん。相当無理をしたじゃろう。体全体から活気がすっかり抜けておる。今、体力回復の魔法をかけたから多少はマシになったじゃろうが、精神面も含めた根本的な疲れはすぐには取れん。屋敷に帰ってゆっくりするといい」

「……はい、お気遣いと魔法、ありがとうございます……あ、ショウさんもかなりお疲れのようですので……」

 彼女の言葉に、アイゼンは俺の方を向いた。

「いえ、俺は彼女みたいに一日中走り回ったりはしていないので……」

「いや、相当疲れた顔をしておる……安心しなされ、儂は医術の心得もある」

 アイゼンはそう言って、さっきシルヴィにしたように俺に手をかざしたので、目を瞑ってじっとしていた。
 数秒後、ふっと体が軽くなった気がして、驚いて目を開いた。

「そなたもシルヴィほどではないが、相当疲れがあったので同じ魔法をかけた。この遺跡内部の様子を見れば分かる……相当苦しい思いをしたのじゃろう」

 そう言ってアイゼンが見た方向には、バナナのような植物の皮、ヤシの実に似た果物の種、川魚の骨などが一か所に集められていた。

「……こんなものを採ってきて食べていたのか……」

 ソフィアはあきれ顔だ。

「あ、そうだ! 俺、非常食持ってきたんだ! ケロリーメルト……あの甘いやつだ!」

 俺はリュックからそれを取り出し、スポーツドリンクと一緒にシルヴィに渡した。
 彼女はしっぽを振って喜んだが、

「えっと……ショウさんの分は……」

「ああ、ちゃんと持ってきているよ」

 そう言ってもう一つ、リュックから取り出して見せると、シルヴィは再び笑顔になった。

「あ……すみません、アイゼンさんたちの分はないです……」

「構わんよ。儂らはちゃんと食べておるからな」

 笑いながらそう返してくれた。
 ソフィアも苦笑いしていたのが印象的だった。

「まあ、まずは二人ともそれを食べて軽く腹ごなしをするといいじゃろう。儂らは外の様子を見に行きたいが、構わんかのう?」

「あ、はい。でも、気を付けてくださいね。最初に来た時の夜だけですが、黒い狼がうろついていたんです」

「黒い狼? ふむ……」

 アイゼンは何かを気にして、先に遺跡の中を調べ始めた。
 俺たちは特に気にせず、腹が減っていたこともあってケロリーメルトを食べ始めた。

「……やっぱり、おいしいです! この不思議な味のする飲み物も、体の中に染み込んでいくみたいです!」

 本格的なスイーツには程遠いのだが、遭難時の食事としては栄養のバランスも良く、程よい水分も摂れるので、この組み合わせの方が正しいのかもしれない。

 食べながらアイゼンの様子を見てみると、彼は古代の文字らしきものが書かれているプレートを見つけ、

「……なんと……ここはスケレフじゃったか……こんな果てまで飛ばされていたとは……」

 と独り言を言っていた。どうやら彼が思っていたよりもずっと遠くだったようだ。

 ソフィアはその地名らしきものに心当たりがないようで、特に何も反応を見せなかった。
 そうこうしているうちに、俺もシルヴィも食べ終わったので、全員で外に出てみようということになった。

 アイゼンが呪文を唱え、重そうな石の扉が開かれる。
 外に出たアイゼンとソフィアは、ほとんど真上から降り注ぐ太陽に眩しそうに手をかざした。
 そして次に、少し歩いて、目の前に広がる大海原に、特にソフィアが呆然としていた。
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