異世界パパ活物語

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第31話 下着姿

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 ユア、アイナの二人と一緒に住むようになって、一週間が過ぎた。

 相変わらずクラローズ地下迷宮を主に探索しており、彼女たちの実力は俺の想像を超える速度で上昇していく。
 おそらく、普通の冒険者であれば二人の域に達するのに、必死に努力しても三ヶ月はかかるだろう。
 その計算で行くと、彼女たちが今のペースで上達を続ければ、二ヶ月もすれば星を獲得できるんじゃないだろうか……そう思えていた。

 しかし、ようやくハンター初級者を脱しようかというところで、壁にぶつかっていた。
 どうも、俺に頼りすぎているようなのだ。
 パパ活女子がパパに頼るというのは普通なのかもしれないが、彼女たちのためにならない。
 っていうか、俺に馴染みすぎている……。
 俺のアパートでの生活も、それが当たり前のようになってきているし。

 この日の朝も、ぐだぐだのスタートだった。

「……ユア、いくら部屋の中だからといって、下着姿でうろうろするんじゃない!」

 アパートで、彼女のはしたない格好を見てしまった俺が注意する。 

「えー、いいじゃん。誰か人が見てるわけじゃないし」

「俺が見てるだろう!」

「だって、パパはパパじゃない。家族だから平気だよ」

 相変わらず、すまし顔でそう反論してくる。

「阿呆、本当の親子じゃないだろう! 俺だって男なんだぞ!」

「えっ……ひょっとしてパパ、私に欲情してるの?」

「してない!」

「じゃあ、いいじゃん」

 ……なんか頭痛くなってきた。

「あのなあ、男はいつ欲情するかわからないんだ。そんな隙を見せるな」

「大丈夫。もしパパがそんな気になったとして、襲われたとしたら、ちゃんと料金請求するから。それで許してあげる」

 まったく照れることなく大胆なことを言ってくる、黒髪の美少女。

「そういう問題じゃないだろう……参考までに聞くが、慰謝料っていくらだ?」

「払ってくれるの? じゃあ、うーん……20万ウェンぐらい?」

「高けーよっ!」

 素でツッコミを入れてしまった。

「そうかな? 私みたいな美少女の初体験の相手になれると思えば安いと思うけど?」

「だから、そういう問題じゃ……って、経験ないのか?」

「……言ってなかったっけ? ずっと孤児院の女子寮にいて、男の人と接する機会、あまりなかったし……パパ活でもそういうの無かったから。パパが一緒に住まわせたんだから、責任とってよね」

 さすがにちょっと照れたのか、赤くなりながら支離滅裂なことを言ってきた。

 と、ユアとそんなやりとりをしているときに、パジャマを着たままのアイナが起きてきた。

「ふあぁぁ……パパさん、おはようございますぅ……ユア、パパさんをからかっちゃだめですよぉ」

 見た目は童顔だが、アイナの言うことはもっともだ。

「ほらみろ。アイナの方がよっぽどしっかりしている……て、俺、からかわれたのか?」

「……私は、本気でパパなら20万ウェンならいいかな、って思ったんだけど?」

「アイナ、だめですよぅ、パパさんも言ったじゃないですか、高すぎるって。こうやって一緒に住まわせてもらっているんですから、お金なんてとっちゃダメです。逆にそういうエッチなこと、私たちの方がお願いして教えてもらわなきゃいけないぐらいですぅ……あ、パパさん、ちなみに私も男性経験ないですからぁ……」

 目をウルウルとさせながらそんな戯言を言ってくるアイナ。

「いやいや、ちょと待て、二人ともおかしい。最初俺に会ったときはあれほど警戒していただろう?」

「仲良くなったってことでいいじゃない。それに、私たち本当に感謝してるから……あと、さっきの話に戻るけど……パパは、私たちを異性として見てくれることはありえるの?」

「そんあふざけたことを聞くんじゃない! それよりおまえは、早く服を着ろ!」

「……私のこと、異性として見てくれるかもしれないんだったら、ちゃんとするよ」

 むちゃくちゃな要求だが、父親の前なら裸をみられても平気だが、異性として意識する者に対しては気をつける、という発想は、理解できなくもない。

「……ああ、そうなるかもしれないから、ちゃんとしろ」

 そう言いながら、俺は顔が熱くなるのが分かった……いや、だって、ユアは十代後半の、大人になりかけた黒髪の美少女なのだ……そんな彼女が下着姿で目の前にいるのだ、異性として見てしまったならば、多少鼓動が高鳴るぐらいではすまない。

「……うん、分かった。ありがと」

 ユアはなぜか礼を言って、自分たちの部屋へと戻っていった。

「……私もパジャマのままでしたぁ、着替えてきますぅ!」

 アイナも後を追う。

 なんか……ミリアと二人っきりで住んでいたときは、まるで新婚生活のような甘酸っぱさがあったが、ユア、アイナの二人と住むと、本当に成長した娘と一緒に居るような気がして、いろいろと頭が痛いこともあるが、それなりに楽しいし、充実した生活のような気もする。

 もし、ユアやアイナが言うように、異性として意識するようになり、そういう関係を持ってしまうと、この共同生活はどうなってしまうのだろうか……。

 いや、そうなろうとなるまいと、近いうちに彼女たちは一人前になり、別れの日はやってくるだろう。
 そうすると、またあの寂しい一人暮らしの日々に戻ってしまうのか……。

 その日が来ることが怖くもあったのだが、いくら彼女たちの成長が早いからと言って、そんなに急に別れの日が来ることはないだろうと、内心、安心していた。
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