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第13話 初めての夜
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ミリアは、俺と同じベッドで一夜を明かすことを望んでいる……。
アラフォーの俺にとって、まだ十代の彼女とそういう関係になることは、心のどこかで期待はしていたが、いざそれが現実になりそうだと考えると、やはり鼓動が高鳴るのを感じた。
しかも、彼女はそういう経験がまだ無いのだという。
そしてその経験を積めば、舞台にも活かせるらしい。
……それをそのまま信じても良いだろうか。
俺としては、彼女のことは気に入っているし、いい子だと思ってはいる。
しかし、いわゆる「パパ活」で知り合っただけだし、付け加えるならば、彼女が舞台に立っているところを見に行ったこともない。
というか、具体的にどの劇団か教えてもらっていないし、さらにいうと、「ミリア」という名前が、本人が本名だと言っているだけで、確証を得ているわけではないのだ。
また、年齢も一八歳だということだったが、もう少し若く見える……童顔なだけかもしれないが。
このあたりのことは、パパ活ギルドマスターのシュンに聞いても教えてくれない。
個人情報は明かせないということだ。
この世界では一般的に一六歳で大人と見なされ、パパ活ギルドに登録できるのもその年齢からなので、少なくとも彼女がその十六歳に達していることは確定で、つまりは手を出しても犯罪にはならないのだが……。
いやいや、俺は何を考えているのか。
ミリアのことは、自分の娘のように考えると決めたのだ。
「……あの、ひょっとして、ハヤトさんは……その……私とそういう関係になることは、望んでいなかったということでしょうか」
少し恥ずかしそうに、そして不安げにそう聞いてきた。
……なぜ、この子はこれほど積極的になれるのだろうか。
ひょっとして、俺、騙されている?
実は、複数の人とこんな感じの関係になっているとか?
いや、逆にその方が良いのかもしれない……もし彼女がそんな「小悪魔的」な感じだったなら、俺が手を出してしまったとしても罪悪感はなくなる。
「……いや、正直、戸惑っているだけだよ。君のような可愛い女の子が、俺みたいなおじさんを選んでくれるなら、それはとても嬉しいし、光栄なことだと思っている。ただ、年の差があるから、ちょっと罪悪感っていうか……本当に俺で良いのかなって思っているだけだよ」
思っていることが素直に言葉になった。
やっぱり、俺は不器用だ。彼女が、俺を騙している、あるいはそうでなかったとしても、利用しているだけなのかもしれないと思いつつ、その駆け引きができるだけの要領の良さを身につけていない。
「それでしたら、私も同じです。どうして、ハヤトさんが私をそこまで気にかけていただけるのか、優しくしていただけるのか……だって、私はハヤトさんから善意を受け取るばかりで、なんのお礼もできていないというのに……正直に言えば、優しすぎて怖い部分があります」
「それは……俺が何か隠しているとか、裏があるんじゃないか、とかいうことか?」
「いえ、そこまで直接的なものではなくて……その、急に会ってもらえなくなるとか……その、泊めてもらえると言っても、いつまでそれが許されるのか、とか……」
……彼女の言葉に、ウソは感じられない。
というか、これが演技だとするならば、相当な役者だ……って、彼女は女優だったか。
まだ十八歳の少女が、これだけ駆け引きできるのか。
純情派を装えるものなのか。
少し考えた末に、俺はこう考えた。
この娘になら、騙されてもいいか、と……。
結局、俺が折れる形で、一緒に寝ることを了承した。
快適な睡眠のために大きめのベッドにしているので、添い寝してもらっても大丈夫だろう。
今まで何度か食事を重ねていて、打ち解けてはいたので、いろいろ話をしながら彼女が持ち込んだ荷物や、新しく買った食器などの置き場所を決めたり、と、まるで新婚夫婦のように楽しい時間だった。
そして日は暮れ、夜になった。
自分では目玉焼きぐらいしか作ったことがない俺は、いつもは近所の冒険者用の店で持ち帰り弁当を買うか、顔なじみの飲食店で食事を済ませていた。
しかしこの日は、一緒に食材を買いに行き、料理も彼女が作ってくれた。
豪華な食事、というわけではなかったが、肉料理もスープもサラダも作ってくれて、普通に旨かった。
以前、付き合っていた女性がいた俺だが、仕事が忙しい彼女とは外食がほとんどだったので、正直、この関係は新鮮だった。
彼女の表情も明るく、料理がおいしいと正直に感想を言っただけで喜んでくれた。
シャワーは、彼女の希望で俺が先に浴びた。
多分、彼女が先に浴びていたら、俺が一緒に浴びたいと入っていくのを警戒したのではないかと思う。
逆に、俺が浴びている隙に、彼女が部屋を出て行ってしまったりしていないか、と少し不安になったが、そんなことはなかった。
そして俺の後に彼女がシャワーを浴びた。
この世界にも、石けんやシャンプーのようなものがある。
それも、わざわざミリア用のものを買ってきていた……彼女は恐縮していたが。
そしてミリアは、シャワーから出てきた……買ったばかりのピンクのパジャマは着ておらず、体にバスタオルを巻いただけだった。
その姿を見て、少し固まる俺。
それに対してミリアは、恥ずかしそうに、
「あの……髪を少し乾かしたいので、待っていてくださいね……」
とつぶやいた。
慌てて反対側を向く俺。
本当に未経験だとすると、かなり大胆なのでそれはないか、とは思うが……そういうのを抜きにしても、まだ十代後半の美少女とこれから過ごす時間を考えると、今の時点でも鼓動が高鳴りすぎて、彼女に聞こえてしまうのではないかと思うほどだった。
この世界には、ドライヤーはない……それに準ずる魔道具はあったと思うが、髪があまり長くない俺にとっては不要だった。
ミリアのために買っておけば良かったと思う。
彼女は髪が長く、タオルで水分を取るのに時間がかかっているようだった。
しばらくして、彼女は、
「お待たせしました」
と、明るい声で言ってきた……これから初めての行為に及ぼうとするにしては、緊張感があまり感じられなかった。
「あの……明るすぎるので、暗くしていただいてよろしいでしょうか……」
そのセリフを聞いて、魔道具であるランタンの出力を絞る。
結構暗くしたのだが、まだ明るいというので、ほんのロウソク一本分ぐらいまで暗くした。
そして彼女は、ベッドの中……俺の隣へと入ってきた。
この時点で、すでにバスタオルは取っており……全裸であることが分かった。
ズクン、とさらに鼓動が大きくなる。
もう、後戻りはできない……彼女も、覚悟を決めている。
そっと手を伸ばし、彼女の肩を抱きしめたとき、全てを悟った。
ミリアの、平気であるような様子であることの方が、演技だった。
彼女は、小刻みに震えていたのだ――。
アラフォーの俺にとって、まだ十代の彼女とそういう関係になることは、心のどこかで期待はしていたが、いざそれが現実になりそうだと考えると、やはり鼓動が高鳴るのを感じた。
しかも、彼女はそういう経験がまだ無いのだという。
そしてその経験を積めば、舞台にも活かせるらしい。
……それをそのまま信じても良いだろうか。
俺としては、彼女のことは気に入っているし、いい子だと思ってはいる。
しかし、いわゆる「パパ活」で知り合っただけだし、付け加えるならば、彼女が舞台に立っているところを見に行ったこともない。
というか、具体的にどの劇団か教えてもらっていないし、さらにいうと、「ミリア」という名前が、本人が本名だと言っているだけで、確証を得ているわけではないのだ。
また、年齢も一八歳だということだったが、もう少し若く見える……童顔なだけかもしれないが。
このあたりのことは、パパ活ギルドマスターのシュンに聞いても教えてくれない。
個人情報は明かせないということだ。
この世界では一般的に一六歳で大人と見なされ、パパ活ギルドに登録できるのもその年齢からなので、少なくとも彼女がその十六歳に達していることは確定で、つまりは手を出しても犯罪にはならないのだが……。
いやいや、俺は何を考えているのか。
ミリアのことは、自分の娘のように考えると決めたのだ。
「……あの、ひょっとして、ハヤトさんは……その……私とそういう関係になることは、望んでいなかったということでしょうか」
少し恥ずかしそうに、そして不安げにそう聞いてきた。
……なぜ、この子はこれほど積極的になれるのだろうか。
ひょっとして、俺、騙されている?
実は、複数の人とこんな感じの関係になっているとか?
いや、逆にその方が良いのかもしれない……もし彼女がそんな「小悪魔的」な感じだったなら、俺が手を出してしまったとしても罪悪感はなくなる。
「……いや、正直、戸惑っているだけだよ。君のような可愛い女の子が、俺みたいなおじさんを選んでくれるなら、それはとても嬉しいし、光栄なことだと思っている。ただ、年の差があるから、ちょっと罪悪感っていうか……本当に俺で良いのかなって思っているだけだよ」
思っていることが素直に言葉になった。
やっぱり、俺は不器用だ。彼女が、俺を騙している、あるいはそうでなかったとしても、利用しているだけなのかもしれないと思いつつ、その駆け引きができるだけの要領の良さを身につけていない。
「それでしたら、私も同じです。どうして、ハヤトさんが私をそこまで気にかけていただけるのか、優しくしていただけるのか……だって、私はハヤトさんから善意を受け取るばかりで、なんのお礼もできていないというのに……正直に言えば、優しすぎて怖い部分があります」
「それは……俺が何か隠しているとか、裏があるんじゃないか、とかいうことか?」
「いえ、そこまで直接的なものではなくて……その、急に会ってもらえなくなるとか……その、泊めてもらえると言っても、いつまでそれが許されるのか、とか……」
……彼女の言葉に、ウソは感じられない。
というか、これが演技だとするならば、相当な役者だ……って、彼女は女優だったか。
まだ十八歳の少女が、これだけ駆け引きできるのか。
純情派を装えるものなのか。
少し考えた末に、俺はこう考えた。
この娘になら、騙されてもいいか、と……。
結局、俺が折れる形で、一緒に寝ることを了承した。
快適な睡眠のために大きめのベッドにしているので、添い寝してもらっても大丈夫だろう。
今まで何度か食事を重ねていて、打ち解けてはいたので、いろいろ話をしながら彼女が持ち込んだ荷物や、新しく買った食器などの置き場所を決めたり、と、まるで新婚夫婦のように楽しい時間だった。
そして日は暮れ、夜になった。
自分では目玉焼きぐらいしか作ったことがない俺は、いつもは近所の冒険者用の店で持ち帰り弁当を買うか、顔なじみの飲食店で食事を済ませていた。
しかしこの日は、一緒に食材を買いに行き、料理も彼女が作ってくれた。
豪華な食事、というわけではなかったが、肉料理もスープもサラダも作ってくれて、普通に旨かった。
以前、付き合っていた女性がいた俺だが、仕事が忙しい彼女とは外食がほとんどだったので、正直、この関係は新鮮だった。
彼女の表情も明るく、料理がおいしいと正直に感想を言っただけで喜んでくれた。
シャワーは、彼女の希望で俺が先に浴びた。
多分、彼女が先に浴びていたら、俺が一緒に浴びたいと入っていくのを警戒したのではないかと思う。
逆に、俺が浴びている隙に、彼女が部屋を出て行ってしまったりしていないか、と少し不安になったが、そんなことはなかった。
そして俺の後に彼女がシャワーを浴びた。
この世界にも、石けんやシャンプーのようなものがある。
それも、わざわざミリア用のものを買ってきていた……彼女は恐縮していたが。
そしてミリアは、シャワーから出てきた……買ったばかりのピンクのパジャマは着ておらず、体にバスタオルを巻いただけだった。
その姿を見て、少し固まる俺。
それに対してミリアは、恥ずかしそうに、
「あの……髪を少し乾かしたいので、待っていてくださいね……」
とつぶやいた。
慌てて反対側を向く俺。
本当に未経験だとすると、かなり大胆なのでそれはないか、とは思うが……そういうのを抜きにしても、まだ十代後半の美少女とこれから過ごす時間を考えると、今の時点でも鼓動が高鳴りすぎて、彼女に聞こえてしまうのではないかと思うほどだった。
この世界には、ドライヤーはない……それに準ずる魔道具はあったと思うが、髪があまり長くない俺にとっては不要だった。
ミリアのために買っておけば良かったと思う。
彼女は髪が長く、タオルで水分を取るのに時間がかかっているようだった。
しばらくして、彼女は、
「お待たせしました」
と、明るい声で言ってきた……これから初めての行為に及ぼうとするにしては、緊張感があまり感じられなかった。
「あの……明るすぎるので、暗くしていただいてよろしいでしょうか……」
そのセリフを聞いて、魔道具であるランタンの出力を絞る。
結構暗くしたのだが、まだ明るいというので、ほんのロウソク一本分ぐらいまで暗くした。
そして彼女は、ベッドの中……俺の隣へと入ってきた。
この時点で、すでにバスタオルは取っており……全裸であることが分かった。
ズクン、とさらに鼓動が大きくなる。
もう、後戻りはできない……彼女も、覚悟を決めている。
そっと手を伸ばし、彼女の肩を抱きしめたとき、全てを悟った。
ミリアの、平気であるような様子であることの方が、演技だった。
彼女は、小刻みに震えていたのだ――。
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