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ご挨拶、その2
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ご挨拶回りは大変そうだな、って正直思ってた。
だけど、商店街の人たちに触れていくうちに、これからここで頑張っていこう!って元気をもらっている気がする。
でも一人暮らしが初めてで心細いのは確かだから、早く皆さんに受け入れてもらえると、それだけでも安心かも。
ーーーーーさてと。お次は……?
叔母のメモによると、えっと、なになに?『喫茶トムトム』さん……ここだわ。
「お邪魔しまーす……」
「「「「いらっしゃいませー!!」」」」
「???!」
び、ビックリしたぁ!何ですか、このイケボさん達は!!
「あの、あの、今度こちらの商店街に雑貨屋を開店する、澤山と申しますぅ……」
「ご挨拶ですか。わざわざありがとうございます。オーナー!お客様でーす!どうぞ、奥の方へ。今オーナー呼びましたから」
あら、笑顔も眩しいわ。
わたしは口をパクパクしながら、一人のスタッフさんの誘導で中に入れてもらった。ちょっと挙動不審だったかな。
「いらっしゃいませ」
「初めまして!あの、この度こちらの商店街に雑貨屋を出させて頂くことになりましたら澤山と申します。以後よろしくお願い致します」
ぺこりとお辞儀をしてから、お茶を差し出す。
「ご丁寧にありがとうございます。オーナーの富田です」
「妻の紬です」
うわ、このご夫婦、雰囲気が素敵だなぁ。
「あと、双子の息子もいるんですが、上の子ならおりますから呼んで来ましょう」
「あ、いえいえお仕事中でしょうから……」
「そうですか?まぁ、この商店街に越していらっしゃるならいずれまたお会いできると思いますけどね。皆さん仲良しですから」
「ちなみに下の子は大学生なの。で、こちらは姪の孝子。このお店のパティシエ」
「わぁ!スイーツ楽しみです!」
「孝子でーす!よろしくお願いします!あ、あとね、こっちは看板娘のトラちゃん。時間があったらブログ見て下さいねー。トラちゃんが色々宣伝してるんですよー」
「は、はい!是非」
にゃー!か、可愛いニャンコ!!
もふもふしたーい!
でもトラちゃんはお昼寝中だったので、ご挨拶はまた今度。ナデナデしたいけど、今はガマンね。
「それから従業員の皆さんも、よろしくお願いしますね」
イケメン揃いの皆さんに慌てて挨拶をすると、
「アルバイトさん達は、とうてつさんの所でもお会いすると思うけどよろしくね。それから中華料理店の神神さんにも派遣 してるのよ」
紬さんが教えてくれた。ふむふむ。
このあと、神神さんに行ってみようかな。
「澤山さん、これからどんどんいらして下さいね。モーニングもやってますから」
「ありがとうございます」
「ちょっと待って!あとひとつ、大事なことをお伝えするのを忘れてたわ。いい?孝子から食べ物をむやみに貰わないこと。メニュー以外のものは口にしちゃダメよ」
「え………」
紬さんが、こっそり私に耳打ちした。
それは一体、どういうことだろう? 試食品のことを言ってるのだろうか。でも孝子さんはれっきとしたパティシエさんなのであって……。
孝子さんにまつわる疑問はともかく、既に軽くホームシックになりつつあるわたしにオーナーが優しく言ってくれた言葉が心に沁みた。
ここの商店街に来ることになって、良かった。
前の仕事の事も、これなら早く忘れられそうだわ。
さて、今度は『中華料理 神神飯店』さん。時間的にランチタイムかもしれないなぁ。忙しいところ、挨拶なんて悪いかしら。
入口を開けてみて、何とか隙をみてちょこっとだけ声を掛けてみようか。
お店の入り口を見ると、思った通り中から
賑やかな声がする。出直して来た方がいいのかな?
そーっと中を伺うように入り口から覗いたあと、しばらくどうしようかウロウロしていると、
「いらっしゃいませー!」
後ろから元気な女の子の声がした。
「きゃぁ!ご、ごめんなさい!怪しいものではございません~」
「お姉さんお客様でしょ?え、もしかして中が一杯で座れないとか?」
「違うんです、あの、今日は引越しのご挨拶で、その……」
「そうなんだー。あたし、ここの娘の王 天衣。よろしく!さぁさぁ、パーパもオンマも中にいるから、入って入って!」
「えっ?えっ?」
あれよあれよという間に、背中を押されて中に入った。途端においしそうな匂いと、活気のあるお昼時の風景。
「オンマ!このお姉さん、今度商店街にお引越ししてくる人なんだってー」
「どうも、あの、初めまして。ええっと、黒猫さんのご近所で、これから雑貨屋を開店する澤山と申します。あ、これ日本茶なんですけど、お口に合うかどうかわかりませんが……」
のし紙付きのお茶を、お店の女将さんらしき人にどうぞ、と恐る恐るお渡しした。
「サワヤマか?
ありがとね。私名前は、梁 玉爾。中いるのが私オッパの開。あなた小天よりもお姉さんね」
小天??あ、このお嬢さんの愛称かな。
「あ、私の方が大分年上だと思いますよ。可愛らしい看板娘さんですね。天衣さん、仲良くして下さいね。……それよりお忙しい時間にお邪魔しちゃってすみません。出直せば良かったです」
「ここ来るなら遠慮いらないよ。ここの商店街の人皆いい人ばかりね。オッパに会えばいいね」
「いえ、お忙しいときに本当に申し訳ないので。ありがとうございます。今度必ず食べに来ますので、ええと、開さんにもよろしくお伝え下さい」
今日はこれで、とお店を出た。
天衣ちゃん、いい娘そう。
それにしても、この商店街、食べることには困らないわね。基本的には自炊をしなきゃいけないけど、何しろ一度も家を出たことがないから、仕事に慣れるまでは、皆さんのお店でハシゴして食べちゃいそう。
例えばモーニングはトムトムさんちで、ランチは神神さんとか、ね。
だけど、商店街の人たちに触れていくうちに、これからここで頑張っていこう!って元気をもらっている気がする。
でも一人暮らしが初めてで心細いのは確かだから、早く皆さんに受け入れてもらえると、それだけでも安心かも。
ーーーーーさてと。お次は……?
叔母のメモによると、えっと、なになに?『喫茶トムトム』さん……ここだわ。
「お邪魔しまーす……」
「「「「いらっしゃいませー!!」」」」
「???!」
び、ビックリしたぁ!何ですか、このイケボさん達は!!
「あの、あの、今度こちらの商店街に雑貨屋を開店する、澤山と申しますぅ……」
「ご挨拶ですか。わざわざありがとうございます。オーナー!お客様でーす!どうぞ、奥の方へ。今オーナー呼びましたから」
あら、笑顔も眩しいわ。
わたしは口をパクパクしながら、一人のスタッフさんの誘導で中に入れてもらった。ちょっと挙動不審だったかな。
「いらっしゃいませ」
「初めまして!あの、この度こちらの商店街に雑貨屋を出させて頂くことになりましたら澤山と申します。以後よろしくお願い致します」
ぺこりとお辞儀をしてから、お茶を差し出す。
「ご丁寧にありがとうございます。オーナーの富田です」
「妻の紬です」
うわ、このご夫婦、雰囲気が素敵だなぁ。
「あと、双子の息子もいるんですが、上の子ならおりますから呼んで来ましょう」
「あ、いえいえお仕事中でしょうから……」
「そうですか?まぁ、この商店街に越していらっしゃるならいずれまたお会いできると思いますけどね。皆さん仲良しですから」
「ちなみに下の子は大学生なの。で、こちらは姪の孝子。このお店のパティシエ」
「わぁ!スイーツ楽しみです!」
「孝子でーす!よろしくお願いします!あ、あとね、こっちは看板娘のトラちゃん。時間があったらブログ見て下さいねー。トラちゃんが色々宣伝してるんですよー」
「は、はい!是非」
にゃー!か、可愛いニャンコ!!
もふもふしたーい!
でもトラちゃんはお昼寝中だったので、ご挨拶はまた今度。ナデナデしたいけど、今はガマンね。
「それから従業員の皆さんも、よろしくお願いしますね」
イケメン揃いの皆さんに慌てて挨拶をすると、
「アルバイトさん達は、とうてつさんの所でもお会いすると思うけどよろしくね。それから中華料理店の神神さんにも派遣 してるのよ」
紬さんが教えてくれた。ふむふむ。
このあと、神神さんに行ってみようかな。
「澤山さん、これからどんどんいらして下さいね。モーニングもやってますから」
「ありがとうございます」
「ちょっと待って!あとひとつ、大事なことをお伝えするのを忘れてたわ。いい?孝子から食べ物をむやみに貰わないこと。メニュー以外のものは口にしちゃダメよ」
「え………」
紬さんが、こっそり私に耳打ちした。
それは一体、どういうことだろう? 試食品のことを言ってるのだろうか。でも孝子さんはれっきとしたパティシエさんなのであって……。
孝子さんにまつわる疑問はともかく、既に軽くホームシックになりつつあるわたしにオーナーが優しく言ってくれた言葉が心に沁みた。
ここの商店街に来ることになって、良かった。
前の仕事の事も、これなら早く忘れられそうだわ。
さて、今度は『中華料理 神神飯店』さん。時間的にランチタイムかもしれないなぁ。忙しいところ、挨拶なんて悪いかしら。
入口を開けてみて、何とか隙をみてちょこっとだけ声を掛けてみようか。
お店の入り口を見ると、思った通り中から
賑やかな声がする。出直して来た方がいいのかな?
そーっと中を伺うように入り口から覗いたあと、しばらくどうしようかウロウロしていると、
「いらっしゃいませー!」
後ろから元気な女の子の声がした。
「きゃぁ!ご、ごめんなさい!怪しいものではございません~」
「お姉さんお客様でしょ?え、もしかして中が一杯で座れないとか?」
「違うんです、あの、今日は引越しのご挨拶で、その……」
「そうなんだー。あたし、ここの娘の王 天衣。よろしく!さぁさぁ、パーパもオンマも中にいるから、入って入って!」
「えっ?えっ?」
あれよあれよという間に、背中を押されて中に入った。途端においしそうな匂いと、活気のあるお昼時の風景。
「オンマ!このお姉さん、今度商店街にお引越ししてくる人なんだってー」
「どうも、あの、初めまして。ええっと、黒猫さんのご近所で、これから雑貨屋を開店する澤山と申します。あ、これ日本茶なんですけど、お口に合うかどうかわかりませんが……」
のし紙付きのお茶を、お店の女将さんらしき人にどうぞ、と恐る恐るお渡しした。
「サワヤマか?
ありがとね。私名前は、梁 玉爾。中いるのが私オッパの開。あなた小天よりもお姉さんね」
小天??あ、このお嬢さんの愛称かな。
「あ、私の方が大分年上だと思いますよ。可愛らしい看板娘さんですね。天衣さん、仲良くして下さいね。……それよりお忙しい時間にお邪魔しちゃってすみません。出直せば良かったです」
「ここ来るなら遠慮いらないよ。ここの商店街の人皆いい人ばかりね。オッパに会えばいいね」
「いえ、お忙しいときに本当に申し訳ないので。ありがとうございます。今度必ず食べに来ますので、ええと、開さんにもよろしくお伝え下さい」
今日はこれで、とお店を出た。
天衣ちゃん、いい娘そう。
それにしても、この商店街、食べることには困らないわね。基本的には自炊をしなきゃいけないけど、何しろ一度も家を出たことがないから、仕事に慣れるまでは、皆さんのお店でハシゴして食べちゃいそう。
例えばモーニングはトムトムさんちで、ランチは神神さんとか、ね。
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