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眩暈のころ
31. そして、それから 1
しおりを挟む夏にみんなで集まろう、と近海は約束したが、結局、彼は体調を悪化させ、来られなかった。電話では、新しいスウィングトップを買ったので、それを着て行くのが楽しみだと云っていた。いつとはなしに連絡が途絶えた。
その年の夏がどれくらい暑かったか、記憶にない。
あれから、既に十八年がたつ。
のぶおは写真つきの葉書で結婚を知らせて来たが、以降は音沙汰ない。きっと、休日にはジャージ姿にサンダル履きで、絵にかいたような元ヤンキーの親父になっているだろうと推測する。
同窓会のあと、しばらくして、蝉丸経由で聞いたのぶお情報によると、四っつぁんは、二十歳になるのを待たずして、自動車で事故を起こして亡くなったそうである。のぶおと四っつぁんのバンドは、楽器店のコンテストが、“ファーストさよならギグ”になってしまった。
去年の暮れ、百貨店の催事場にて、妻子を連れた四っつぁんを見かけた。他人の空似とか、兄弟でないことを信じたい。
高校時代に、私とバンドを組んだ未希ちゃんも結婚して、私の近所に住んでいる。
マオマオは会社を辞めると、結婚を含め将来について考えたいから、と云い残し、旅に出たまま行方不明になった。戻るのが嫌なら、せめて無事にいる旨をご家族に伝えて欲しいと、切に願う。
蝉丸は実家の雑貨店を手伝っていたが、パートナーとカフェを経営し始めた。
私は適当に会社で事務をこなし、あとは何の変化もなく、部屋も我が身も片づけられぬまま、鬱屈に膨らんだり、萎んだりして、呑気に過ごしている。
蝉丸が、カフェの開店を近海の実家へ手紙で知らせ、それをきっかけにまた、電子メールで彼とやり取りするようになった。
近海は今でも病院に通っていて、薬をいっぱい飲み、アルコールもコーヒーも煙草も、お医者に注意されつつ、嗜んでいるらしい。仕事は、父親の会社の経理をしているようだ。
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