眩暈のころ

眩暈のころ

26. 高校生のころ（コンテスト） ６

　私たちのバンドは、下手なくせに、近海やのぶおの出場した、楽器店のコンテストに挑戦した。近海は勿論、のぶおもエントリーしていなかった。
　私たちは最初に演奏した。みんなが嫌がったヴォーカルは、男前番長の未希ちゃんが引き受け、ベースを唸らしながら、ヒステリックにシャウトした。客席はしんとしていたが、私はギターを弾くのに必死で、自分の鳴らす音さえ聞こえていなかった。常に冷静沈着なドラムのマオマオは、終わってから、私のギターが走ったりもたったりしていたと、からかうように云った。未希ちゃんは、「ひっこめ、って野次られたぜ」と云った。

　バンドは、いつの間にか消滅してしまった。