眩暈のころ

犬束

文字の大きさ
上 下
13 / 36
眩暈のころ

12. 中学三年のころ(二学期) 10

しおりを挟む

 確か二学期だったと記憶しているが、私は英語の時間に意識を失い、救急車で病院に運ばれて、随分長いこと学校を休んだ。
 体の具合は悪くなかったし、そんなに鬱屈を溜め込んでいたつもりもない。少なくとも自覚はなかったから、もっともらしい病名をつけられたのに驚き、お医者が意固地になって病気に仕立てただけではないかと訝った。

 私の両親は共通して私を過保護気味に育てていたので、娘の状態を切実に捉えていたのかいないのか。兎に角、甘やかし放題で、私も遠慮なく甘ったれるまま、退院してからもズル休みをつづけた。

 家で臥せっていてもすることはないし、いいかげん退屈したので、勉強は嫌だけれど、寝すぎの弱った脚でふらふら登校してみたら、近海がひどく心配してくれていた様子で、偽の病気だったと白状するのも憚られ、私はすっかり狼狽してしまった。

「夜中に本を読んでいると」近海は私を見下ろしながら、真顔で云った。「背後に誰だか立っているような気配がしてね。青木がお別れの挨拶に来たんじゃないかって、僕はじっとしていられなかったよ。電話をしようか、家を訪ねようか迷ったけれど、本当になったら困るから、部屋で我慢していたんだ」

 私は益々たじろぎ、

「それはどうも、痛み入ります。お陰様で回復いたしまして……」と、ありきたりな文句で言葉を濁した。

「じゃあ、今日から大丈夫かな」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...