眩暈のころ

犬束

文字の大きさ
上 下
11 / 36
眩暈のころ

10. 中学三年のころ(夏休み) 8

しおりを挟む

 コンテストは、夏休みが始まって最初の日曜日に開催された。会場は、楽器店が入っているビルの三階にあるホールで、優勝したバンドは、スタジオで録音した楽曲をレコードにしてもらえるらしかった。
 近海はさておき、までもが生意気に、入賞したらオリジナル作りに挑戦してレコーディングしよう、と張り切っているのがしゃらくさかった。

 ホールは小さいながら、それでも、クッションの青い折りたたみでないパイプ椅子は、百くらい並んでいただろうか。壁も濃い青色で、ステージは低くく、子供の発表会を見に来ているような雰囲気だった。
 蝉丸と私は、最後列の端っこに坐った。受験勉強に忙しいだろう級友たちも、まあまあ来ていた。全体的に客層は地味だったように覚えている。

 のぶおのバンドは、早い出番だった。思ったより下手ではなかったが、懸命にふざけたようすがいじらしく、見ていてはらはらした。

「保護者になった気分だ」私は云った。

「やっぱし青木も? うちも心臓が痛いわ」と、蝉丸は胸を押さえ、気分をまぎらかすように、「ほんでも、あんだけ弾けたら上等じゃんね」と云った。さすがに、「へぼい」と、けなす余裕はなかった。

 近海たちは後半に登場した。
 クーラーがきいているとはいえ、暑苦しいのに全員が詰襟の学生服を着こみ、白いコンバースをはいていた。学ランは、おっかない顔のドラムスだけ非常に長く、前の三人は短かかった。
 憎たらしいくらいに堂々として、まったく萎縮していなかった。臆病な私と違い、言動をセーブしたり、通信簿に「大人しい」とか、「消極的」とか、評されることは絶対になかろうと推察された。

「蝉丸さんが云ってた、鏡の前のイメージトレーニングの成果ですかね?」

 私がそう耳打ちすると、

「だって、あいつら、でっかいもん」蝉丸は中身より外見で決めつけた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おぽこち編〜♡

x頭金x
現代文学
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

“5分”で読めるお仕置きストーリー

ロアケーキ
大衆娯楽
休憩時間に、家事の合間に、そんな“スキマ時間”で読めるお話をイメージしました🌟 基本的に、それぞれが“1話完結”です。 甘いものから厳し目のものまで投稿する予定なので、時間潰しによろしければ🎂

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

結衣のお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
比較的真面目な女の子結衣が厳しいお尻叩きのお仕置きを受けていくお話です。Pixivにも同じ内容で投稿しています。

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

処理中です...