眩暈のころ

犬束

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眩暈のころ

09. 中学三年のころ(初夏) 7

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 コンテストは、蝉丸が云ったようにしょぼいのかどうか知らないけれど、私の前の席に坐っている、おちゃらけたヤンキーのも出場するらしく、休み時間になると近海が奴の席にやって来て、あれこれ相談しているようだった。

 チャイムが鳴り、近海が自分の席に戻ると、のぶおが振り返って、

「俺らはセックス・ピストルズのカヴァーすっから、青木もそのつもりで声援するように」と云った。

「シドって、漢字で叫ぶんでしょう。死んで怒る、っつって」

「小馬鹿にしやがって」とのぶおは答え、まだ何か云いたそうなので、私は警戒した。

 いつもの、クソ詰まらないエロ話なら、喰い気味で阻止しなければならない、マジ詰まらないので。

 ところが、私の予想に反し、のぶおは少し声をひそめ、

「ヘアピンを広げて、コンセントの両方に挿しこんだら、感電して、自殺出来るんだってよ*」と云った。

 声のトーンは深刻ではなかったものの、のぶおの口から自殺なんて言葉を聞くのは意外で、私は返事が出来なかった。



*  ヘアピン等をコンセントに挿すと、感電して火傷を負ったり、場合によっては火事になることがあります。
 絶対に真似をしてはいけません。

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