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犬束

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12月8日

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《バームクーヘン》

 引き出しを開けたとたん、卵色のバームクーヘンが、回転しながら浮かびあがった。

 パチパチ鳴る針のノイズに混ざって、小鳥の声が遠くからかすかに聴こえ、それから、小さくピアノの音。耳をすますと、シューベルトのセレナーデを唄っている。
 たちまち窓の外が暗くなる。どうやら、深い夜の森で迷子になっているらしい。

 冷たく青い月の光につつまれ、そうだ、今夜は今年最後の満月だった。満月の願いが叶うどころか、森の奥にひとりぼっちだ。

 悲しくなって、ぼくはバームクーヘンを二つに割った。


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