図書感想 七月

犬束

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『優しい関係』 サガン

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 天使的な怖しい優しさ



 初めて読んだフランソワーズ・サガンであり、恋愛小説でもある、と言えるでしょうか。
 それまで、恋愛を主題にした小説も映画も苦手で、敬遠していたのですが。サガンが繊細に描くのは人間で、その人物は恋愛もする、散らからないようテーマを恋愛に絞っている、そんなスタンスなので、取っつきやすかったのだと思います。もちろん、朝吹登美子の素敵翻訳も大きい。
 あと、驚きなのが、45歳のヒロインを登場させたこの作品が出版された当時、サガンは33歳だったこと。いくら天才少女でも、年齢まで超越するとは。

 ドロシーは元女優のシナリオ・ライター。お酒を飲みすぎるきらいはあるものの、自立したチャーミングな女性だ。ボーイフレンドは、ハンサムで幾つもの映画会社の利益代表者をつとめるポール。ある晩、サンタ・モニカの海沿いをジャガーで疾走する二人の前に、美貌の青年ルイスが飛び出して来た。ケガをしたルイスを、ドロシーは自宅で世話をする。無償の行為に感謝し、ルイスは彼女を愛するようになるのだが…。

 愛というより、度外れた執着に思えるのは、ドロシーを守ろうとするあまり、ルイスが不必要に殺人を繰り返すから。ハリウッドが舞台なだけに、映画の撮影現場、ロールスロイス、高級レストラン、大嵐など、非日常的にドラマティック。
 ルイスの美貌の描写も、読んでいてとても嬉しくなります。美は善なり。ルッキズムには賛成しかねますが、美しいものは鑑賞したい。ここでは絵画などではなく、文章表現で堪能できます。
 ルイスの性的志向は、今でいうところの、アセクシャルではないのかと推察するのですが。皆さまはいかがお考えでしょうか。サガンの意図はさておき。

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