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犬束

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永遠日(エターニデイ)

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 四月さいしょのよく晴れた土曜日。サニーサイド・アベニューのはてに位置する《ユートピア》公園では、さくら祭りが催されている。
 いろとりどりのランタンが風にゆれ、大きなテーブルにはごちそうがならぶ。ミートローフにサンドイッチにチョコレートケーキ。ワインやフルーツパンチもたくさん。アイスクリームと射的と風船などの屋台。バンドのジャズ演奏。メリーゴーランド。すみわたった青い空。桃色のはなびらが降りしきる。子供も大人も、心配事はしばらく部屋の戸棚に仕舞いこんで、たのしそうにはしゃぎまわる。




 金髪の少年はザクロジュースを二つもらうと、自慢の黒皮のブーツで走りだす。さくらの樹のしたでは、女の子がまっている。赤いギンガムチェックのワンピースでおめかししているのに、脚をなげだして地面に坐り、おさげ髪にむすんだレースのリボンを、退屈そうにほどきながら。日向はすこし暑いくらいだけれど、木陰はすずしくて、やわらかな風が気持よく頬をなでる。少女はくびをのけぞらせ、まぶしさに眉をしかめて、八重咲きの花をながめた。まったく、ピンクのポップコーンみたいだ。
 息をはずませて駆けてきた少年は、少女の前ではにかんだ表情をうかべ、よりそって腰をおろす。口をつぐんだまま、かたい幹に背中をもたせかけ。ジュースを飲みほし、氷をかみくだいてしまうと、少年は伝言ゲームをするように、少女の耳元に顔をちかずけてささやいた。
「いずれ、この銀河は、アンドロメダにぶちあたって融合するんだ。だから、さみしがることなんかねえんだよ」

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