小説練習帖 七月

否応なしに〈14〉

　では、改めて、店内の配置をざっくり説明しておきましょう。
　ガラスドアを入ると、ウェイティングルーム。左側はレストランのスペースで、ガラスの壁で仕切られている。
　バーカウンターは入ってすぐ、ガラスの壁を背にして、設置されてある。入口から向かって右手（カウンターの正面）には、『コ』の字にソファを置き、わたしたちが腰を下ろしているのが、『コ』の上のライン。
　ソファの向こうは、ライブイベントに合わせて、バンドのメンバーのポップアップ・ショップを、小振りながら可愛らしく展開していて、一番奥がトイレットとなっている。
　そのポップアップ・ショップに、問題の姿見鏡が置かれているのだった。
「鏡の中でだけ咲いてるって、どうゆうこと？」と、シモンは立ちあがり「何か、ハイテクな仕掛けとか、してあるんじゃないの？」
「ですよね。仕掛け、ありますよね？　でも、ホント、すごいんですよ」
　バーテンダー女子は、やや興奮気味に。
　彼女に伴われ、シモンも鏡を覗き込んだ。
「うわっ、ホントだ。咲いてる、生えてる。ちょっと、見においでよ！」