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或いは、初めから
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知り合って10年、付き合って6年、同棲して3年。付き合い始めてからも、同棲を始めてからも、愛は増すばかりで減ったことなんて一度もない。お前を愛してるって、俺は胸を張って言えるぜ!!! と、そう伝えれば、彼は普段あまり気持ちを口に出さないのに、いつだってふんわり笑って俺もだよ、俺もお前を愛してるって言ってくれる。まあ、若干困り顔ではあるけれど。喧嘩だって、家出だって、何度もしたけど、それでも最後は2人で笑い合って仲直りした。そんな幸せな日々。壊れることのない日々。
ある日彼が、思い出したように言った。
「あ、そうだ。前も言ったと思うけど、俺高校の同窓会あるから来週3日間はいない」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。わかった、楽しんで来いよ!!! みんな出席できそうか?」
「うん、前は外国に住んでて出れなかったあいつも今回は来れるみたいで......ってお前はわかんないよな。悪い」
「いや、別に......なあ」
いつもの会話のはずなのに、どうしてだか、俺は嫌な予感がした。心に不安が渦巻くのが分かる。
「そいつって誰? 写真とかあるか?」
突然興味を示した俺に彼は不審がる。まあそれもそうだろう。写真まで求めるなんて、俺だって逆の立場なら不思議に思う。でも、なぜだか確かめなければならないような気がしたのだ。卒アルになら載ってるはずだけど、と困惑した顔のまま言う彼に、それを持ってくるよう頼む。
ああ、懐かしいなあと目を細める彼を横目に俺の心音はどんどん大きくなっていく。いやだ、見たくない。でもどうして?その答えは、一人の写真を目にした瞬間、すぐにわかった。そうか、そうか、そうだ。こいつだ。
いつだったか、まだ付き合う前のころ。大学の友達みんなで飲みに行ったことがあった。あの頃すでに彼を好きだった俺は自然に彼の隣を陣取って、彼と2人喋っていた。彼は酔ったのがそのまま顔に出るタイプで、それが可愛くて仕方なかった俺は、確か随分彼を酔わせてた。そんな時だった。高校のころの思い出を聞いていたとき、彼が憂えた表情で呟いたのだ。
「ずっと、忘れられない人がいるんだ」
自らスマホの画面を見せる。そこには人懐っこく笑う一人の男が写っていた。
ぽつりぽつりと彼は語りだす。そいつが小学校以前の幼馴染で、中学、高校とずっと一緒の大親友だったこと。そして、中学校に上がる前にはもう、彼が好きだったこと。
彼との思い出、好きだったところ。彼が卒業と同時にスペインへ留学したこと。そしてもう、日本に戻ってくる気がないこと。
鮮やかに蘇るその思い出の中の彼と目の前の男の顔は完璧に一致していた。どくんどくんと、心臓が音を立てる。
「......なあ、もしかしてそいつって高校卒業と同時にスペインに留学したって奴か?」
「!」
驚きが伝わる。何でお前が知ってるんだ、と言外に訴えてくる。
そうだ、わかった。どうして俺が不安を感じたのか。それはおそらく小さなことの積み重ね。たとえば、長期の出張があっても前日まで言わないようなこいつが、わざわざ同窓会のことを出席すると決めたその日に伝えてきたこと。初めての旅行にスペインの観光地でもない町をわざわざ指定して誘ってきたこと。それから一度も誘われたことはない。スマホの画面を眺める時間が増えたこと。極めつけは、好きと伝えてくれるときに、視線を泳がせるようになったこと。
なあ、愛しているよ。何が起きても、何が壊れても。
ある日彼が、思い出したように言った。
「あ、そうだ。前も言ったと思うけど、俺高校の同窓会あるから来週3日間はいない」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。わかった、楽しんで来いよ!!! みんな出席できそうか?」
「うん、前は外国に住んでて出れなかったあいつも今回は来れるみたいで......ってお前はわかんないよな。悪い」
「いや、別に......なあ」
いつもの会話のはずなのに、どうしてだか、俺は嫌な予感がした。心に不安が渦巻くのが分かる。
「そいつって誰? 写真とかあるか?」
突然興味を示した俺に彼は不審がる。まあそれもそうだろう。写真まで求めるなんて、俺だって逆の立場なら不思議に思う。でも、なぜだか確かめなければならないような気がしたのだ。卒アルになら載ってるはずだけど、と困惑した顔のまま言う彼に、それを持ってくるよう頼む。
ああ、懐かしいなあと目を細める彼を横目に俺の心音はどんどん大きくなっていく。いやだ、見たくない。でもどうして?その答えは、一人の写真を目にした瞬間、すぐにわかった。そうか、そうか、そうだ。こいつだ。
いつだったか、まだ付き合う前のころ。大学の友達みんなで飲みに行ったことがあった。あの頃すでに彼を好きだった俺は自然に彼の隣を陣取って、彼と2人喋っていた。彼は酔ったのがそのまま顔に出るタイプで、それが可愛くて仕方なかった俺は、確か随分彼を酔わせてた。そんな時だった。高校のころの思い出を聞いていたとき、彼が憂えた表情で呟いたのだ。
「ずっと、忘れられない人がいるんだ」
自らスマホの画面を見せる。そこには人懐っこく笑う一人の男が写っていた。
ぽつりぽつりと彼は語りだす。そいつが小学校以前の幼馴染で、中学、高校とずっと一緒の大親友だったこと。そして、中学校に上がる前にはもう、彼が好きだったこと。
彼との思い出、好きだったところ。彼が卒業と同時にスペインへ留学したこと。そしてもう、日本に戻ってくる気がないこと。
鮮やかに蘇るその思い出の中の彼と目の前の男の顔は完璧に一致していた。どくんどくんと、心臓が音を立てる。
「......なあ、もしかしてそいつって高校卒業と同時にスペインに留学したって奴か?」
「!」
驚きが伝わる。何でお前が知ってるんだ、と言外に訴えてくる。
そうだ、わかった。どうして俺が不安を感じたのか。それはおそらく小さなことの積み重ね。たとえば、長期の出張があっても前日まで言わないようなこいつが、わざわざ同窓会のことを出席すると決めたその日に伝えてきたこと。初めての旅行にスペインの観光地でもない町をわざわざ指定して誘ってきたこと。それから一度も誘われたことはない。スマホの画面を眺める時間が増えたこと。極めつけは、好きと伝えてくれるときに、視線を泳がせるようになったこと。
なあ、愛しているよ。何が起きても、何が壊れても。
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