或いは、初めから

あんみつ~白玉をそえて~

文字の大きさ
1 / 1

或いは、初めから

しおりを挟む
 知り合って10年、付き合って6年、同棲して3年。付き合い始めてからも、同棲を始めてからも、愛は増すばかりで減ったことなんて一度もない。お前を愛してるって、俺は胸を張って言えるぜ!!! と、そう伝えれば、彼は普段あまり気持ちを口に出さないのに、いつだってふんわり笑って俺もだよ、俺もお前を愛してるって言ってくれる。まあ、若干困り顔ではあるけれど。喧嘩だって、家出だって、何度もしたけど、それでも最後は2人で笑い合って仲直りした。そんな幸せな日々。壊れることのない日々。
 ある日彼が、思い出したように言った。

「あ、そうだ。前も言ったと思うけど、俺高校の同窓会あるから来週3日間はいない」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。わかった、楽しんで来いよ!!! みんな出席できそうか?」
「うん、前は外国に住んでて出れなかったあいつも今回は来れるみたいで......ってお前はわかんないよな。悪い」
「いや、別に......なあ」

いつもの会話のはずなのに、どうしてだか、俺は嫌な予感がした。心に不安が渦巻くのが分かる。

「そいつって誰? 写真とかあるか?」

突然興味を示した俺に彼は不審がる。まあそれもそうだろう。写真まで求めるなんて、俺だって逆の立場なら不思議に思う。でも、なぜだか確かめなければならないような気がしたのだ。卒アルになら載ってるはずだけど、と困惑した顔のまま言う彼に、それを持ってくるよう頼む。
 ああ、懐かしいなあと目を細める彼を横目に俺の心音はどんどん大きくなっていく。いやだ、見たくない。でもどうして?その答えは、一人の写真を目にした瞬間、すぐにわかった。そうか、そうか、そうだ。こいつだ。

 いつだったか、まだ付き合う前のころ。大学の友達みんなで飲みに行ったことがあった。あの頃すでに彼を好きだった俺は自然に彼の隣を陣取って、彼と2人喋っていた。彼は酔ったのがそのまま顔に出るタイプで、それが可愛くて仕方なかった俺は、確か随分彼を酔わせてた。そんな時だった。高校のころの思い出を聞いていたとき、彼が憂えた表情で呟いたのだ。

「ずっと、忘れられない人がいるんだ」

自らスマホの画面を見せる。そこには人懐っこく笑う一人の男が写っていた。
ぽつりぽつりと彼は語りだす。そいつが小学校以前の幼馴染で、中学、高校とずっと一緒の大親友だったこと。そして、中学校に上がる前にはもう、彼が好きだったこと。
彼との思い出、好きだったところ。彼が卒業と同時にスペインへ留学したこと。そしてもう、日本に戻ってくる気がないこと。

 鮮やかに蘇るその思い出の中の彼と目の前の男の顔は完璧に一致していた。どくんどくんと、心臓が音を立てる。

「......なあ、もしかしてそいつって高校卒業と同時にスペインに留学したって奴か?」
「!」

驚きが伝わる。何でお前が知ってるんだ、と言外に訴えてくる。
 そうだ、わかった。どうして俺が不安を感じたのか。それはおそらく小さなことの積み重ね。たとえば、長期の出張があっても前日まで言わないようなこいつが、わざわざ同窓会のことを出席すると決めたその日に伝えてきたこと。初めての旅行にスペインの観光地でもない町をわざわざ指定して誘ってきたこと。それから一度も誘われたことはない。スマホの画面を眺める時間が増えたこと。極めつけは、好きと伝えてくれるときに、視線を泳がせるようになったこと。

 なあ、愛しているよ。何が起きても、何が壊れても。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

(・v・)
2023.02.03 (・v・)

うわ(TT)続編が読みたすぎる作品(TT)

解除

あなたにおすすめの小説

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

ボーダーライン

瑞原唯子
BL
最初に好きになったのは隣の席の美少女だった。しかし、彼女と瓜二つの双子の兄に報復でキスされて以降、彼のことばかりが気になるようになり――。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

恋と脅しは使いよう

makase
BL
恋に破れ、やけ酒の末酔いつぶれた賢一。気が付けば酔っぱらいの戯言を弱みとして握られてしまう……

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。