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鼻歌
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「それ、実はバイト代で買ったんだ…兄様達と比べちゃうとかなりしょぼいけど…一応、僕からのプレゼント、ってことで」
おそろいの水玉のマグカップ。開いた口からは湯気がほこほこと出ている…ちょっと重かったかな、なかなか反応をくれないみささんに肩身が狭くなる。と、
「すっっごく嬉しい!!!私が前に水色が好きって言ったこと覚えててくれたんだね!ありがとう、大事にするよ!」
満面の笑みで、そう言ってくれたのだった。
「!よかった、うん、みささんのことなら何でも覚えてる、よ…」
いや待て、これかなり恥ずかしい発言じゃないか僕。慌ててみささんの方を見れば、顔が赤い…やっぱり!!!僕の顔までつられて熱くなる。そのまましばし無言が続いたあと、みささんがとりなすように言う。
「せ、せっかくだしクッキーも頂こうかな!」
「う、うん!そうして。前にみささんが作ってくれた時のレシピにチョコチップを入れてみたんだ」
サクッとした感触にホロホロと崩れるクッキー。うん、なかなか上手にできた。でもそうとわかっていても彼女が口に運ぼうとしている間は緊張する。1口食べて、飲み込んで。
みるみるうちに笑顔が広がっていく。
「すっごく美味しい!千景くんお菓子作りまで上手なんだね!!!」
「…よかった、気に入って貰えて。実は気に入って貰えるか少し不安だったから」
「!千景くんでも緊張するとかするんだねえ」
「ふふっ、それどういう意味?僕も人間だよー?」
「や、その!千景くんって何でもそつなくこなすから…しかも私に食べさせるなんて全然緊張しなくていいことなのになあって思って」
「…みささんだから、特別緊張したんだよ」
呟きはみささんに聞こえなかったらしく、彼女は美味しいと言いながらクッキーを食べていた。
クッキーは空になって、ココアも飲んで、お喋りもひと段落して。
「今日はありがとう千景くん。ご馳走様でした。これでますます頑張れそうだよ」
「そう言ってくれると作った甲斐が有るよ。お粗末さまでした。それじゃ…おやすみ、勉強程々にね」
ぐっと親指を立てた彼女の元を後にして、僕は後片付けのためキッチンに戻る。
僕の作ったクッキー、美味しかったって…ふふ、嬉しいなあ。みささん甘いものが好きみたいだし、もっとレパートリー増やそっと。
深夜のキッチンに、僕の鼻歌が響いた。
おそろいの水玉のマグカップ。開いた口からは湯気がほこほこと出ている…ちょっと重かったかな、なかなか反応をくれないみささんに肩身が狭くなる。と、
「すっっごく嬉しい!!!私が前に水色が好きって言ったこと覚えててくれたんだね!ありがとう、大事にするよ!」
満面の笑みで、そう言ってくれたのだった。
「!よかった、うん、みささんのことなら何でも覚えてる、よ…」
いや待て、これかなり恥ずかしい発言じゃないか僕。慌ててみささんの方を見れば、顔が赤い…やっぱり!!!僕の顔までつられて熱くなる。そのまましばし無言が続いたあと、みささんがとりなすように言う。
「せ、せっかくだしクッキーも頂こうかな!」
「う、うん!そうして。前にみささんが作ってくれた時のレシピにチョコチップを入れてみたんだ」
サクッとした感触にホロホロと崩れるクッキー。うん、なかなか上手にできた。でもそうとわかっていても彼女が口に運ぼうとしている間は緊張する。1口食べて、飲み込んで。
みるみるうちに笑顔が広がっていく。
「すっごく美味しい!千景くんお菓子作りまで上手なんだね!!!」
「…よかった、気に入って貰えて。実は気に入って貰えるか少し不安だったから」
「!千景くんでも緊張するとかするんだねえ」
「ふふっ、それどういう意味?僕も人間だよー?」
「や、その!千景くんって何でもそつなくこなすから…しかも私に食べさせるなんて全然緊張しなくていいことなのになあって思って」
「…みささんだから、特別緊張したんだよ」
呟きはみささんに聞こえなかったらしく、彼女は美味しいと言いながらクッキーを食べていた。
クッキーは空になって、ココアも飲んで、お喋りもひと段落して。
「今日はありがとう千景くん。ご馳走様でした。これでますます頑張れそうだよ」
「そう言ってくれると作った甲斐が有るよ。お粗末さまでした。それじゃ…おやすみ、勉強程々にね」
ぐっと親指を立てた彼女の元を後にして、僕は後片付けのためキッチンに戻る。
僕の作ったクッキー、美味しかったって…ふふ、嬉しいなあ。みささん甘いものが好きみたいだし、もっとレパートリー増やそっと。
深夜のキッチンに、僕の鼻歌が響いた。
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