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社長

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「次、報告…その件はとっくの昔に解決済みだ。話を蒸し返すなと伝えておけ。次、報告」

十数人の社員さんに囲まれて次々と指示を飛ばす咲夜様だった…え、というか、咲夜様だよね?スーツにネクタイ。メガネに括られた髪の毛。視線はいつもよりずっとキリッとしている。
ジリリリリリ!
どうやらこれがお昼のチャイムらしい。一旦皆さんその場から立ち去ろうとする。咲夜様は背を向けてどこかに行ってしまいそう。ど、どうしよう…ええい、ままよ!

「咲夜様!!!」

出せる限りの大声でその名を呼ぶ。ばっと彼は振り返って…

「みさ!」

先程までとは打って変わった緩んだ顔で笑った…やばい、ギャップが、か、可愛い…どうやらそう思ったのは私だけではなかったようで。社員の皆さん胸を押さえたり唖然としている。

「みさ、どうしたの?…もしかして、お弁当持ってきてくれた?」
「は、はい!こちらです!…先程のお仕事中の咲夜様、とてもかっこよかったです。普段と雰囲気変わるんですね」
「そう…?よくわかんないけど、褒められるのは嬉しい。ありがとう。あ、このお弁当、みさの手作り?」
「!よく分かりましたね、そうです!」
「ふふ…嬉しい、俺、あんたの料理大好き」

ほのぼのした雰囲気でいつも通り会話していると、おずおずとした様子で社員さんの1人が咲夜様に話しかけた。

「えっと、社長…この方は?」

思えば今は使用人の格好をしていない。社員さんの疑問も最もだった。使用人です、そう答えようとしたところ…

「彼女はみさ…俺の、大事な人」

ぐいと腰を引き寄せられた。そ、そうだった…咲夜様だって女性のエスコートは慣れているんだ。思わずドキリとしたのは私だけじゃなかったようで、女性社員の中で悲鳴があがる。そんな声は聞こえていないとでも言うかのように、咲夜様はまた私に向き直る。

「よかったら、お昼、一緒に食べない?ここの近くに、美味しいフレンチがあるんだ…お弁当は、夜食用にとっておく」

これで夜も頑張れる。そう微笑む咲夜様からは後光が見えて…そして女性社員の皆さんからは敵意の視線が向けられて…ああ、すみませんすみません!無理やり笑顔を浮かべて咲夜様の誘いに乗る。今はとにかくここを離れよう。私の意図を知ってか知らずか。咲夜様はいそいそと手を取ってエスコートしてくれる…女性社員の皆さん、お許しを…

「今の…社長、だよな?」
「あんな顔初めて見た…え、あの子何者…」
「何者でもいいわよ!!!私たちがランチに誘っても絶対に応じないのに!!!社長のバカー!!!」
私たちが消えた後のオフィスではそんな会話がされていたとかされていなかったとか。

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