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なんで

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「咲夜様、お砂糖100グラムお願いします」
「ああ、わかった」

高い背丈に不似合いな可愛らしいフリフリのエプロン姿で今日も咲夜様はキッチンに立つ。なんでもお菓子作りが好きとのことだ。それを初めて知った時気になって聞いてみたことがある。

「咲夜様ご自身は甘いものが得意ではないんですよね?ならどうしてお菓子作りが好きなんですか?」
「ああ、それは…母が甘いものが好きで。少しでも、母に笑ってほしくて。自分で作ることを覚えた。まあ、男らしくない、と一蹴されたけど。その名残で、時々作りたくなる」
「…」

知らず知らずのうちに顔がこわばっていたらしい。咲夜様がぽんぽんと頭をなでてくれる。

「…あんたは優しいな、でももう昔の話だ。今は気にしていない」
「…私は小さいころ戦いごっこが大好きでした!」
「?ああ、それがどうした」
「好きなものなんて人それぞれです。誰も否定する権利なんてない、咲夜様は今のを聞いても笑わなかったでしょう?そういうことです」
「…俺を肯定してくれてありがとう、みさ」
「ーさ、みさ!」

焦った顔の咲夜様。加えていつの間にか咲夜様に後ろから抱きつかれ、両手を握られている。

「?えっと…?」
「怪我はないか!?」

どこも痛くはない。首を縦に振れば咲夜様が安心したように息を漏らす。

「あんた、包丁で自分の手を切りかけていた」

そう言われて思い出す。そうだ、確か今はアイスボックスクッキーを切っていて…。少し物思いに耽りすぎていたらしい。慌ててごめんなさいと謝れば、軽く指先に唇が触れる。

「このあんたの美しい指先に傷がつくところなんて、見たくはない」
「そんな…あかぎれだらけで、美しいだなんて、そんな」
「いや、美しい。働き者の手だ」

その仕草が、表情が、昔夢に見た王子様にしか見えなくて、途端この状況が恥ずかしくなる。

「さ、咲夜様、助けてくれてありがとうございます。もう大丈夫ですので、その、離れていただけると…」
「?なんで?よく綺羅や晶が抱きついているときは気にしていない」
「そ、それは…」
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