52 / 153
可愛い
しおりを挟む
「晶様は確か……大学院に行っていらっしゃるんですよね。建築士って院まで行かないと取れないとかですか?」
「いや、そんなことはないで。でも俺家から色々取れ言われててなあ。将来の夢もなんもないし、まあ親が決めたルートに沿ってやってんのや。みさちゃんは大学行ってへんのやろ?行きたいとかないん?」
大学、大学……正直、こんな閉鎖された田舎じゃ、大学に行く人はほとんど居ない。余程ずば抜けて優秀な人か、何か大学に行ってまでやりたいことがある人だけが行く。私はなんとなく親のペンションを継ぐものだと思っていたし、それには大学も必要なかったから。そんな「なんとなく」で行かないことを選択した。でも。
「……大学って、楽しいですか?」
「めっっっちゃ楽しいで!!!将来官僚になって国を動かしたろ、とか思うてるやつとか、でっかい夢持ったやつらがぎょうさんおる。色々視界も開けるで」
視界、今の私はきっと閉ざされた視界の中にいるんだろうな。それでいいのか?いや、だがそもそも開けることで得られるメリットは?
そんなことを考えている間にどうやら終わったらしい。汗を拭いながら晶様がこちらを振り返る。
「終わったでー!」
「わあ……!すっかり直ってる……本当にありがとうございます!!!」
頭を下げる。
「なにかお礼がしたいんですけど……なにか欲しいものとかありますか?あ、私のお給料じゃ払えないかもですけど……」
「えー気にせんでええのに。あ、でもそやな、なんかしてくれるっちゅーなら……」
にんまりと微笑まれる。あ、これは不味ったか。これはキスとか要求されるパターンか。未だに自分の唇なんぞに価値があるとは思っていないが、あの趣味の悪いゲームのこともある。好きになれとでも言われたらどうしたら。なんて悪い想像ばかりが頭を巡った時。
「……褒めて」
「え?」
気のせいか。今褒めてと聞こえた気がしたが。思わず顔を見やれば、その顔は真っ赤。心なしか俯いているようにも見える。遅れてようやく、彼が本気なんだと知る。なら。私は頭に手を伸ばす。ふんわりとした毛が気持ちいい。
「偉い偉い。いい子ですね、晶様は。毎日頑張っていらっしゃって」
そのまま偉い偉い、なんて言いながら撫で続けていると、さらにどんどん赤くなっていく顔。もう首筋まで赤い。
「も、もうええから……ありがとな」
「いいえ、まだ褒めたりません」
真面目に言うと、もう限界だというように晶様が抱きついてきた。
「もう、どんだけ俺の想像超えたら気が済むん……はあ、好きや。好き、ほんまに」
顔をぐりぐりと押し付けられる。言葉は嘘だらけでも、こういうところはちょっぴり可愛いかも、なんて思ったり。
「いや、そんなことはないで。でも俺家から色々取れ言われててなあ。将来の夢もなんもないし、まあ親が決めたルートに沿ってやってんのや。みさちゃんは大学行ってへんのやろ?行きたいとかないん?」
大学、大学……正直、こんな閉鎖された田舎じゃ、大学に行く人はほとんど居ない。余程ずば抜けて優秀な人か、何か大学に行ってまでやりたいことがある人だけが行く。私はなんとなく親のペンションを継ぐものだと思っていたし、それには大学も必要なかったから。そんな「なんとなく」で行かないことを選択した。でも。
「……大学って、楽しいですか?」
「めっっっちゃ楽しいで!!!将来官僚になって国を動かしたろ、とか思うてるやつとか、でっかい夢持ったやつらがぎょうさんおる。色々視界も開けるで」
視界、今の私はきっと閉ざされた視界の中にいるんだろうな。それでいいのか?いや、だがそもそも開けることで得られるメリットは?
そんなことを考えている間にどうやら終わったらしい。汗を拭いながら晶様がこちらを振り返る。
「終わったでー!」
「わあ……!すっかり直ってる……本当にありがとうございます!!!」
頭を下げる。
「なにかお礼がしたいんですけど……なにか欲しいものとかありますか?あ、私のお給料じゃ払えないかもですけど……」
「えー気にせんでええのに。あ、でもそやな、なんかしてくれるっちゅーなら……」
にんまりと微笑まれる。あ、これは不味ったか。これはキスとか要求されるパターンか。未だに自分の唇なんぞに価値があるとは思っていないが、あの趣味の悪いゲームのこともある。好きになれとでも言われたらどうしたら。なんて悪い想像ばかりが頭を巡った時。
「……褒めて」
「え?」
気のせいか。今褒めてと聞こえた気がしたが。思わず顔を見やれば、その顔は真っ赤。心なしか俯いているようにも見える。遅れてようやく、彼が本気なんだと知る。なら。私は頭に手を伸ばす。ふんわりとした毛が気持ちいい。
「偉い偉い。いい子ですね、晶様は。毎日頑張っていらっしゃって」
そのまま偉い偉い、なんて言いながら撫で続けていると、さらにどんどん赤くなっていく顔。もう首筋まで赤い。
「も、もうええから……ありがとな」
「いいえ、まだ褒めたりません」
真面目に言うと、もう限界だというように晶様が抱きついてきた。
「もう、どんだけ俺の想像超えたら気が済むん……はあ、好きや。好き、ほんまに」
顔をぐりぐりと押し付けられる。言葉は嘘だらけでも、こういうところはちょっぴり可愛いかも、なんて思ったり。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。


4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。


邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる