【急募】4人同時に求婚してきた時の対処法～クセの強い彼らに溺愛されて困ってます～

クッキー

「あ！お茶の準備してきますので！」

腕から外れる。けど、腕を掴まれる。

「ボクの客っていうか……客とも言いたくないけど。だからみさちゃんはもう大丈夫だよ。ボクが準備もするから」
「いえ！そんな訳には！せっかくお友達が遊びにいらしてくれたんですから、綺羅様はお相手を」

私の方がキッチンにも詳しいですし、と言う言葉と、女性たちの綺羅様を呼ぶ声が重なった。

「では、そういうことですので！」

私はお茶にお菓子に、準備に走り回った。

「どうぞ」

お茶に、作ったクッキーを並べていく。

「だからみさちゃん、本当に無理しな……」
「ねえ、これあんたの手作り？」

ある女性が、クッキーをひとつまみして、聞いてきた。

「はい、そうですが……」
「ははっ！当たり～！いかにもって感じだもん。芋臭くてあんたにぴったり！」

きゃははははと笑い声が響く。俯くと同時に、そんなクッキーをみなさまに今まで食べさせてきたことへの罪悪感が出てくる。そうだよね。こんな片田舎の地味な女が作るクッキーなんて……

「ボクこのクッキー、大好きだけどね」

雰囲気も全部無視して、綺羅様がクッキーを頬張った。

「！？なんで綺羅が人の手作り食べれんの？食べれないからってうちらのバレンタイン断ったじゃん！！！」
「だって、彼女だもん」

平然と言ってのける。

「ていうか、ボクが乗り気じゃないのわかるよね？迷惑もさんざんかけてさ……もう帰って？」
「綺羅様！そんな言い方はよくないと思います。みなさん、綺羅様のことを好いてこうして来てくれているんですし……」
「？なんでこいつら庇……」

もうこれ以上私と綺羅様を会話させたくないようで。被せて女性たちが口々に言う。

「ほら綺羅！行こ！！！」

反対の腕を女性たちに引っ張られる綺羅様。そのままお辞儀で送り出そうとした時。ぐいと顎を持ち上げられて、真正面からキスされる。女性たちの悲鳴のような声が上がった。

「これで信用した？ボクはこの子がいいから！じゃ、また学校でね～」

ひらひらと手を振る間も、喋る間も、キスは顔中に降ってくる。見送りもせず、バタンと強引にドアが閉められた。ようやく顔が離された時には私の顔はゆでダコのようで。綺羅様が20歳とは思えないほど色っぽい顔で微笑む。

「……キス如きでこんな真っ赤になっちゃうとか、これから先困っちゃうよ？さ、ああ言って断ったわけだし……これからの時間、付き合ってくれるよね？」

にっと、小悪魔のような笑顔。頷くことしか、許されていなかった。