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価値
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それきり黙り込んでしまう咲夜様。またしばらくして、口を動かした。
「俺の価値は、家しかない。でも、結婚してその価値をもらう気もない。あんたは、何?」
ああ、この人はきっと、周りに気付かせてくれる人がいなかったんだな。両手で手を包み込んだ。目を合わせた。青い青いスカイブルーの瞳。
「……咲夜様。あなたの価値は家じゃありません。あなたと家は、別物です」
「?だって、母さんは、俺の取り柄なんて家くらいしかって……」
……母とは、子に愛情を注ぐものではないのだろうか。それは私が勝手にそう勘違いしているだけなんだろうか。包む手に力がこもった。
「私の考えです。お母様とは違うかもしれない。でも、咲夜様、そもそも人間に価値をつけること自体おかしいんです。一人一人が大切な個人であって、みんな等しく尊いんです。あなたも、ご兄弟も」
「……でも、俺はみんなみたいに明るくない。人と上手く、やれない」
「私はあなたのそばを心地いいと思います。ご兄弟はご兄弟。あなたはあなた。個性は違っていいんです。違うのが、当たり前なんです」
切れ長の瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。自分でも驚いているのか、咲夜様にしては珍しく焦っている。そっと、その涙をすくった。
「……俺は、昔から上手く人と喋れなくて、それを母さんに怒られて、否定されて、比べられて……そんなこと、初めて言われた」
……この方は、どれだけ自分を責めてきたんだろう。上手く喋れない自分を、27年間、ずっと。それと同時に、そんな簡単なことすら彼に伝えなかった環境に対して怒りが湧いた。どれだけ、それがこの人を苦しめてきたんだろう。
「……いいんです、咲夜様。いいんです、あなたはあなたのままで」
「俺は、俺のまま……」
子供にするように、ゆっくりと頭を撫でる。少しでもこの人の苦しみを和らげられたら、なんて思った。それからしばらくして。私たちはみんなに発見された。
「俺の価値は、家しかない。でも、結婚してその価値をもらう気もない。あんたは、何?」
ああ、この人はきっと、周りに気付かせてくれる人がいなかったんだな。両手で手を包み込んだ。目を合わせた。青い青いスカイブルーの瞳。
「……咲夜様。あなたの価値は家じゃありません。あなたと家は、別物です」
「?だって、母さんは、俺の取り柄なんて家くらいしかって……」
……母とは、子に愛情を注ぐものではないのだろうか。それは私が勝手にそう勘違いしているだけなんだろうか。包む手に力がこもった。
「私の考えです。お母様とは違うかもしれない。でも、咲夜様、そもそも人間に価値をつけること自体おかしいんです。一人一人が大切な個人であって、みんな等しく尊いんです。あなたも、ご兄弟も」
「……でも、俺はみんなみたいに明るくない。人と上手く、やれない」
「私はあなたのそばを心地いいと思います。ご兄弟はご兄弟。あなたはあなた。個性は違っていいんです。違うのが、当たり前なんです」
切れ長の瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。自分でも驚いているのか、咲夜様にしては珍しく焦っている。そっと、その涙をすくった。
「……俺は、昔から上手く人と喋れなくて、それを母さんに怒られて、否定されて、比べられて……そんなこと、初めて言われた」
……この方は、どれだけ自分を責めてきたんだろう。上手く喋れない自分を、27年間、ずっと。それと同時に、そんな簡単なことすら彼に伝えなかった環境に対して怒りが湧いた。どれだけ、それがこの人を苦しめてきたんだろう。
「……いいんです、咲夜様。いいんです、あなたはあなたのままで」
「俺は、俺のまま……」
子供にするように、ゆっくりと頭を撫でる。少しでもこの人の苦しみを和らげられたら、なんて思った。それからしばらくして。私たちはみんなに発見された。
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