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エリート会社員の俺がヤンデレ後輩に手篭めにされた話
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勢いで男と寝た。寝てしまった。
見覚えのないベッド。値の張りそうな家具。後悔しかない朝7時。回らない頭。それと動かない下半身。
「いやあー……うん……」
ガラガラな声。うん、本当に、笑いすら出ねえ。
我ながら今まで順風満帆な人生を送ってきたと思う。有名大学を出て、大企業に就職して、出世して、可愛い彼女と指輪を選んで、両親への顔見せも済んで!!!それが彼女に裏切られて全部パーになるって何が起こった?意味がわからないし、わかりたくもない。彼女のために会社の金にまで手をつけたのになんだこの有様。挙句、彼女は10歳年下の男と駆け落ちしたらしい。もちろん、金は全部持って。全財産と職を失って得た教訓が「金は自分で管理しろ」だ。
「俺の人生、これからどうなるんだろうな……」
もはやどうでもいい気持ちになってきた。このままいっそ誰も知らない外国に移住してやろうかな……なんて考えて目を閉じた時。突然部屋に人の気配を感じる。方向的には風呂だろうか。そうか、相手もまだいるかもしれないのか。今更その可能性に気づく。
しかしまあ、自分のケツにちんこ突っ込んだやつの顔を見る気にはどうにもならない。どんな顔しろっていうんだ?いや、というかもし俺から誘ってたらどうしよう。記憶ないしありえる……のか?無理だ、信じたくねえ。だがどれだけ吐き気を感じようと、悪寒を感じようと、俺の体は動かない。音が近づいて、息遣いが聞こえて、そして。
「あ、起きましたねー!体の調子はどうですか、先輩?」
「……は?」
目の前には全裸の後輩、もとい、元後輩。あまりに、この場にそぐわない人物が出てきたことで、俺の頭はさらに混乱する。
「......お、お前、こんなとこで何してんだ」
絞り出した声は震えていた。そんな俺を見て、後輩はにべもなく言い放つ。
「?なんでって、それはもちろん昨日先輩と僕がセックスしたからですけど」
「なんで、そんな事……」
「好きな人が目の前で酔いつぶれたら、そりゃあ先輩だって襲うでしょう。据え膳食わぬはなんとやら、ってね」
パチンとウインクが飛んでくる。いつもならキモイだのうざいだのと文句を言うが、今日ばかりは何も出てこなかった。
「は、え……?」
「あ、もしかして覚えてないとか?先輩ってば酷いなあ、あんなにぐちゃぐちゃになってたのに」
にっこりと笑ったまま、後輩は俺の上にまたがった。
ぞわりと、全身の毛が逆立った。脂汗が吹き出る。そいつの目が、おかしかったから。目の前の男は危険だと、全細胞が警鐘を鳴らす。
「まあでも、俺優しいんで。覚えてなくても全然許しますよ。今から思い出せばいい話ですし?」
頭上で手が拘束される。片手なのに、振り解けない。首筋に、腹に、腰に。指がつたう感触。
「っひ……!やめ、やめろ!」
やっと声が出る。なのに後輩は気にもとめない。いつもと変わらないはずの人懐っこい笑みは、逆に俺に恐怖しか与えない。虚勢でもいい、声を振り絞る。
「おい、おい!!聞いてんのか!?……やめろって言ってるだろ!!!」
全力の叫びが部屋にこだました。後輩はぴたりと動きを止めた。
よかった、やっと聞いてくれた。
「……このことは俺、忘れるからさ。お前はいいやつだし、誰にだって間違いくらいある。大丈夫だから。誰にも言わないし、な?だから、もう……」
最後までは、言えなかった。手で口を塞がれたからとか、そんなんじゃない。ただ、声が勝手に消えたんだ。
あいつから表情が消えたのを見て、勝手に。
後輩は絵に描いたようなイケメンだった。顔はかっこいいし、スタイルはいいし、仕事は出来るし、性格は優しいし。本当に、完璧で非の打ち所がなかった。その上、いや、それなのに、なぜだか俺に懐いてくれた。女子社員も上司も、同期も、みんなが後輩を可愛がっていたのに、後輩はいつも俺の後についてきて、俺の言うことばかり聞いていた。
結果、俺に生まれたのは、ある種の優越感。雑用だってなんだって、俺が頼めばこいつは二つ返事で頷いた。そんな後輩が、発した言葉は、
「先輩、あんた状況わかってます?」
拘束が強まる。骨が悲鳴をあげる。痛みで声にならない悲鳴が漏れた。
「あんたは今俺の部屋で、俺のベッドで、俺に組み敷かれてる。俺が先輩の言うこと聞く理由なんてないですよ?それにたとえ今手を離しても、服も財布もスマホも全部俺が捨てました。文字通り、丸裸。外に出てもどうしようもないですよ。ああ、まあでも、そもそも金はないんでしたっけ。あの女に全部持ち逃げられましたもんね」
あははと、後輩はこの場に不釣り合いなほど楽しげに笑う。
「本当に先輩は可哀想ですよねえ。あんなに大好きだったのに。でもまあ、あんなはしたない女は先輩に似合わないですよ!むしろよかったですね、結婚までしなくて!」
こいつは、心の底からそう思ってる。本気で、そう言ってる。俺にとっていいことだと、そう確信してる。
「あれ?先輩?ああ言っといてなんですけど、もう抵抗しないんですか?ふふっ、俺は抵抗してもらっても全然いいのに……ああでも、昨日くらい甘えてきてくれても嬉しいですね。可愛かったなあ……でも本当に、俺が初めてじゃないのが残念でたまらないです。高校の時に当時の担任と付き合ってたんですもんね?はあ、俺がもっと早く先輩に会えていたらなあ……ってやだなあ!間違えちゃいました、これは秘密でしたね。もう、俺ってば先輩とヤレて浮かれてる~」
後輩は恍惚とした顔で、恥ずかしいなあなんてのたまう。対する俺はもう、限界だった。あまりの情報量に。理解を超えた存在に。声は出ないのに、恐怖で体は勝手に震える。力が入らない。けれどシーツにシミが作られる感触だけはやけにはっきりとわかった。
「あ!先輩ってば、おもらししてる!ふふふ、おもらししちゃう成人男性の先輩を受け入れられるのなんて、僕くらいですよ?職場の女の子が知ったら、先輩は今よりもっと嫌われちゃいますね。元から浮いてたのに、もっとみんなから冷たくされちゃう、可哀想に。まあもっとも先輩は、彼女さんにお熱で気付いてなかったみたいですけど……ねえ、分かりますか?そんな嫌われ者の先輩を受け入れてくれるのは、僕だけなんですよ。おしっこ漏らしても嫌わないのは、僕だけ。この世に先輩の居場所なんて、ここ以外ないんです。先輩には、僕だけ。」
ほら、繰り返してください、と有無を言わさぬ口調で命令される。それでも、口が開かない。声が、出ない。
「……先輩。僕は、繰り返せって、言ったんですよ?」
今度はぎりぎりと、手首に爪が立てられる。
「言え」
聞いたこともない低い声。
「っあ、お、俺にっ、はあっ!!お、お前だけっ!!!」
「……そう!よく出来ましたね、先輩!いい子いい子、ふふふっ」
俺の居場所は、ここだけ。俺には、こいつだけ。俺の居場所は、ここだけ。俺には、こいつだけ。俺の居場所は、ここだけ。俺には、こいつだけ。
段々と沈んでいく理性に己から蓋をして、俺は楽な方へと身を委ねた。
見覚えのないベッド。値の張りそうな家具。後悔しかない朝7時。回らない頭。それと動かない下半身。
「いやあー……うん……」
ガラガラな声。うん、本当に、笑いすら出ねえ。
我ながら今まで順風満帆な人生を送ってきたと思う。有名大学を出て、大企業に就職して、出世して、可愛い彼女と指輪を選んで、両親への顔見せも済んで!!!それが彼女に裏切られて全部パーになるって何が起こった?意味がわからないし、わかりたくもない。彼女のために会社の金にまで手をつけたのになんだこの有様。挙句、彼女は10歳年下の男と駆け落ちしたらしい。もちろん、金は全部持って。全財産と職を失って得た教訓が「金は自分で管理しろ」だ。
「俺の人生、これからどうなるんだろうな……」
もはやどうでもいい気持ちになってきた。このままいっそ誰も知らない外国に移住してやろうかな……なんて考えて目を閉じた時。突然部屋に人の気配を感じる。方向的には風呂だろうか。そうか、相手もまだいるかもしれないのか。今更その可能性に気づく。
しかしまあ、自分のケツにちんこ突っ込んだやつの顔を見る気にはどうにもならない。どんな顔しろっていうんだ?いや、というかもし俺から誘ってたらどうしよう。記憶ないしありえる……のか?無理だ、信じたくねえ。だがどれだけ吐き気を感じようと、悪寒を感じようと、俺の体は動かない。音が近づいて、息遣いが聞こえて、そして。
「あ、起きましたねー!体の調子はどうですか、先輩?」
「……は?」
目の前には全裸の後輩、もとい、元後輩。あまりに、この場にそぐわない人物が出てきたことで、俺の頭はさらに混乱する。
「......お、お前、こんなとこで何してんだ」
絞り出した声は震えていた。そんな俺を見て、後輩はにべもなく言い放つ。
「?なんでって、それはもちろん昨日先輩と僕がセックスしたからですけど」
「なんで、そんな事……」
「好きな人が目の前で酔いつぶれたら、そりゃあ先輩だって襲うでしょう。据え膳食わぬはなんとやら、ってね」
パチンとウインクが飛んでくる。いつもならキモイだのうざいだのと文句を言うが、今日ばかりは何も出てこなかった。
「は、え……?」
「あ、もしかして覚えてないとか?先輩ってば酷いなあ、あんなにぐちゃぐちゃになってたのに」
にっこりと笑ったまま、後輩は俺の上にまたがった。
ぞわりと、全身の毛が逆立った。脂汗が吹き出る。そいつの目が、おかしかったから。目の前の男は危険だと、全細胞が警鐘を鳴らす。
「まあでも、俺優しいんで。覚えてなくても全然許しますよ。今から思い出せばいい話ですし?」
頭上で手が拘束される。片手なのに、振り解けない。首筋に、腹に、腰に。指がつたう感触。
「っひ……!やめ、やめろ!」
やっと声が出る。なのに後輩は気にもとめない。いつもと変わらないはずの人懐っこい笑みは、逆に俺に恐怖しか与えない。虚勢でもいい、声を振り絞る。
「おい、おい!!聞いてんのか!?……やめろって言ってるだろ!!!」
全力の叫びが部屋にこだました。後輩はぴたりと動きを止めた。
よかった、やっと聞いてくれた。
「……このことは俺、忘れるからさ。お前はいいやつだし、誰にだって間違いくらいある。大丈夫だから。誰にも言わないし、な?だから、もう……」
最後までは、言えなかった。手で口を塞がれたからとか、そんなんじゃない。ただ、声が勝手に消えたんだ。
あいつから表情が消えたのを見て、勝手に。
後輩は絵に描いたようなイケメンだった。顔はかっこいいし、スタイルはいいし、仕事は出来るし、性格は優しいし。本当に、完璧で非の打ち所がなかった。その上、いや、それなのに、なぜだか俺に懐いてくれた。女子社員も上司も、同期も、みんなが後輩を可愛がっていたのに、後輩はいつも俺の後についてきて、俺の言うことばかり聞いていた。
結果、俺に生まれたのは、ある種の優越感。雑用だってなんだって、俺が頼めばこいつは二つ返事で頷いた。そんな後輩が、発した言葉は、
「先輩、あんた状況わかってます?」
拘束が強まる。骨が悲鳴をあげる。痛みで声にならない悲鳴が漏れた。
「あんたは今俺の部屋で、俺のベッドで、俺に組み敷かれてる。俺が先輩の言うこと聞く理由なんてないですよ?それにたとえ今手を離しても、服も財布もスマホも全部俺が捨てました。文字通り、丸裸。外に出てもどうしようもないですよ。ああ、まあでも、そもそも金はないんでしたっけ。あの女に全部持ち逃げられましたもんね」
あははと、後輩はこの場に不釣り合いなほど楽しげに笑う。
「本当に先輩は可哀想ですよねえ。あんなに大好きだったのに。でもまあ、あんなはしたない女は先輩に似合わないですよ!むしろよかったですね、結婚までしなくて!」
こいつは、心の底からそう思ってる。本気で、そう言ってる。俺にとっていいことだと、そう確信してる。
「あれ?先輩?ああ言っといてなんですけど、もう抵抗しないんですか?ふふっ、俺は抵抗してもらっても全然いいのに……ああでも、昨日くらい甘えてきてくれても嬉しいですね。可愛かったなあ……でも本当に、俺が初めてじゃないのが残念でたまらないです。高校の時に当時の担任と付き合ってたんですもんね?はあ、俺がもっと早く先輩に会えていたらなあ……ってやだなあ!間違えちゃいました、これは秘密でしたね。もう、俺ってば先輩とヤレて浮かれてる~」
後輩は恍惚とした顔で、恥ずかしいなあなんてのたまう。対する俺はもう、限界だった。あまりの情報量に。理解を超えた存在に。声は出ないのに、恐怖で体は勝手に震える。力が入らない。けれどシーツにシミが作られる感触だけはやけにはっきりとわかった。
「あ!先輩ってば、おもらししてる!ふふふ、おもらししちゃう成人男性の先輩を受け入れられるのなんて、僕くらいですよ?職場の女の子が知ったら、先輩は今よりもっと嫌われちゃいますね。元から浮いてたのに、もっとみんなから冷たくされちゃう、可哀想に。まあもっとも先輩は、彼女さんにお熱で気付いてなかったみたいですけど……ねえ、分かりますか?そんな嫌われ者の先輩を受け入れてくれるのは、僕だけなんですよ。おしっこ漏らしても嫌わないのは、僕だけ。この世に先輩の居場所なんて、ここ以外ないんです。先輩には、僕だけ。」
ほら、繰り返してください、と有無を言わさぬ口調で命令される。それでも、口が開かない。声が、出ない。
「……先輩。僕は、繰り返せって、言ったんですよ?」
今度はぎりぎりと、手首に爪が立てられる。
「言え」
聞いたこともない低い声。
「っあ、お、俺にっ、はあっ!!お、お前だけっ!!!」
「……そう!よく出来ましたね、先輩!いい子いい子、ふふふっ」
俺の居場所は、ここだけ。俺には、こいつだけ。俺の居場所は、ここだけ。俺には、こいつだけ。俺の居場所は、ここだけ。俺には、こいつだけ。
段々と沈んでいく理性に己から蓋をして、俺は楽な方へと身を委ねた。
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