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いつも通り

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いつも通り。みんなが本音を語らず、上辺だけで「お話」する夜会。疲れ果てて、ふとテラスに出た。バルコニーになっているそこは誰もおらず、後ろの華やかな雰囲気からは完全に切り離された夜の世界。
手すりに、手をかけた。このまま落ちてしまえば、全て片付くんだろうか。もし一命を取り留めたら、旦那様は私のことを心配してくださるだろうか。ああ、なんだ。死ねたら死ねたで、これ以上苦しまずにすむ。生き残ったら生き残ったで旦那様がこちらを振り向いてくれる可能性がある。私は落ちる運命にあるんだ。体を前に倒す。足が、地面から離れて。

「ご婦人」

そっと肩に手をそえられた。

「そんなに身を乗り出してはあぶのうございますよ」

驚いて後ろを振り返る。美しくない私が夜会からいなくなったところで探す人はきっと誰もいない。じゃあこの人はなんでここに。

「今宵は楽しい楽しい夜会です。さあ、踊りましょう?」

被った仮面は繊細なレースで縁取られている。手が差し伸べられた。細い、けれど骨ばった男性の手。その手は固かった。戦士の手。武人の手。何となくそんな気がした。
気付けば思わずその手をとっていた。
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