2 / 2
唯一にして最大の誤算 ※別ver
しおりを挟む
届いてしまったあんたの手。
壁に拳を打ち付ける。もうどうしようもないことを悔いて悔いて悔やんで。
俺が立てたシナリオは完璧だった。流れはスムーズで違和感なし、残ったアンタも誰からも責められない。悲しい、けれど美しい愛の物語。そう、そうなるはずだった。そうなるはずだったんだ。誤算はたったひとつ。
アンタが俺を愛し過ぎてたこと。
本当に笑える。愛してるとアンタが言う度俺はとてつもなく幸せだった。アンタからの愛を感じる度、俺は救われてた。でも今じゃ逆だ。アンタからの愛が、俺を締めて締めて締め付けて、どん底へと突き落とす。
俺が崖から落ちそうになって、それをアンタが必死に掴んで。そして、このままじゃアンタが落ちちまうなんて言って、俺自ら手を離す。残るのはアンタだけ。俺は恋人のために崖から落ちる健気な男。そう、なるはずだったのに。
バイバイ、愛してる、なんて。言うセリフも、表情も、アンタのためにずっとずっと考えていたのに。アンタはただ、安心したように笑うだけだったな。そっちの方が心が痛むだなんて、誰が知ってた?
俺が落ちてアンタだけが生き残って、そうしたらあんたの中に、俺が深く深く刻み込まれる。
アンタは優しいから、自分が殺したと思って、一生俺を忘れられずにいるだろう。たとえどんな相手が現れようと、懸命に過去の俺だけを愛そうとしてくれるだろう。
優越感。満足感。
俺が生きていた頃以上にアンタは俺を愛する努力をするんだろうな。誰にも壊せない俺たちだけの絆。欲しくて欲しくてたまらなかった、アンタを絡めとるための鎖。
幸せがいつ消えるかなんて誰にも分からない。何が原因で終わるかなんてもっと分からない。だったらせめて俺のタイミングで、俺の手 で終わらせたいと思うのは罪なのか?
アンタが信仰してたカミサマとやらも言ってたじゃねえか。死とは救いだって。俺にとっては「自分の」死が救いだったんだよ。可笑しくないよな?それに恋人を守る死ならカミサマだって許してくれるんじゃねえのか?
いつ壊れるかわからない幸せにビクビク怯えて暮らすより、自分で壊してやりたかった
……なーんて。違う。運が悪いことに違うんだよ。悲しいかな。自分の本心は自分が1番わかってる。
別に決してその気持ちが嘘だとは言わない。
ただそれは後付だ。ただの言い訳だ。
本当は、本当は、本当は。
「アンタに嫌われたくなかったんだよ……!!
!」
血が滲むのもお構いなしに、拳を壁に叩きつける。
ああそうさ。俺はただの臆病者なのさ。いつか飽きられて捨てられるくらいなら今この瞬間、最大の幸せのまま時を止めたかった。前に進みたくなかった。
だって、もしかしたら明日突然あんた好みの女が現れてたかもしれない。もしかしたら明日喧嘩して、その結果嫌われてたかもしれない。それを怖いと思って何が悪い。恐れる未来を潰して何が悪い。己の身を守って何が悪い。傷つきたくない。暗闇に戻りたくない。
誰か俺を、救ってください。
壁に拳を打ち付ける。もうどうしようもないことを悔いて悔いて悔やんで。
俺が立てたシナリオは完璧だった。流れはスムーズで違和感なし、残ったアンタも誰からも責められない。悲しい、けれど美しい愛の物語。そう、そうなるはずだった。そうなるはずだったんだ。誤算はたったひとつ。
アンタが俺を愛し過ぎてたこと。
本当に笑える。愛してるとアンタが言う度俺はとてつもなく幸せだった。アンタからの愛を感じる度、俺は救われてた。でも今じゃ逆だ。アンタからの愛が、俺を締めて締めて締め付けて、どん底へと突き落とす。
俺が崖から落ちそうになって、それをアンタが必死に掴んで。そして、このままじゃアンタが落ちちまうなんて言って、俺自ら手を離す。残るのはアンタだけ。俺は恋人のために崖から落ちる健気な男。そう、なるはずだったのに。
バイバイ、愛してる、なんて。言うセリフも、表情も、アンタのためにずっとずっと考えていたのに。アンタはただ、安心したように笑うだけだったな。そっちの方が心が痛むだなんて、誰が知ってた?
俺が落ちてアンタだけが生き残って、そうしたらあんたの中に、俺が深く深く刻み込まれる。
アンタは優しいから、自分が殺したと思って、一生俺を忘れられずにいるだろう。たとえどんな相手が現れようと、懸命に過去の俺だけを愛そうとしてくれるだろう。
優越感。満足感。
俺が生きていた頃以上にアンタは俺を愛する努力をするんだろうな。誰にも壊せない俺たちだけの絆。欲しくて欲しくてたまらなかった、アンタを絡めとるための鎖。
幸せがいつ消えるかなんて誰にも分からない。何が原因で終わるかなんてもっと分からない。だったらせめて俺のタイミングで、俺の手 で終わらせたいと思うのは罪なのか?
アンタが信仰してたカミサマとやらも言ってたじゃねえか。死とは救いだって。俺にとっては「自分の」死が救いだったんだよ。可笑しくないよな?それに恋人を守る死ならカミサマだって許してくれるんじゃねえのか?
いつ壊れるかわからない幸せにビクビク怯えて暮らすより、自分で壊してやりたかった
……なーんて。違う。運が悪いことに違うんだよ。悲しいかな。自分の本心は自分が1番わかってる。
別に決してその気持ちが嘘だとは言わない。
ただそれは後付だ。ただの言い訳だ。
本当は、本当は、本当は。
「アンタに嫌われたくなかったんだよ……!!
!」
血が滲むのもお構いなしに、拳を壁に叩きつける。
ああそうさ。俺はただの臆病者なのさ。いつか飽きられて捨てられるくらいなら今この瞬間、最大の幸せのまま時を止めたかった。前に進みたくなかった。
だって、もしかしたら明日突然あんた好みの女が現れてたかもしれない。もしかしたら明日喧嘩して、その結果嫌われてたかもしれない。それを怖いと思って何が悪い。恐れる未来を潰して何が悪い。己の身を守って何が悪い。傷つきたくない。暗闇に戻りたくない。
誰か俺を、救ってください。
10
お気に入りに追加
17
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説




Original drug
佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。
翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語
一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

【BL】メンヘラ男と不良少年の歪んだ恋愛について
猫足
BL
不良グループ【S】のリーダーである天田リュウは、人知れず孤独感に苛まれていた。そんなある日、黒瀬という謎の男に拾われる。
「俺が、孤独な君を拾ってあげる。愛してあげる。もう何も寂しいことはないよ」
歪んでいる。
狂っている。
でも愛している。
依存し合っている二人の不安定な日々。
※諸事情により新アカウントに移行していましたが、端末の不具合のためこのアカウントに戻しました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる