明けぬ夜には翡翠色の灯火を~愛を知らないヴァンパイアが愛を知ったら溺愛されるようになりました~

あんみつ~白玉をそえて~

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村へ

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「このままじゃ、ジュリが危ないの」
「……ジュリは僕の幼馴染です」

私の疑問を察したのか、リエルが補足を入れる。

「で?何がどう危ないのだ?そしてそのジュリとやらがリエルになんの関係がある?」

素直に思ったままを口にする。それがまたしてもシシィの怒りに触れたらしい。喚きながらもたどたどしくシシィが語った話をまとめると、どうやらこういうことらしい。
ジュリはリエルを長年想っていて、それなのにたまたま村に来たお偉いさん方に目をつけられた。そこで第何番目か知らない夫人にと求婚され困っていると。そしてこの危機を脱するためには、リエルがジュリと結婚するしかないと。

「お兄ちゃんだって、ジュリのことは少なからず好きでしょう!?ジュリはとってもいい子よ、親友の私が保証するわ。そんないつ殺されてもおかしくない吸血鬼なんかと一緒にいるより、村に戻って、ジュリと結婚した方が、お兄ちゃんは絶対幸せになれるわ!!!」

だから、お願い、と段々とか細くなっていくシシィの声と対照的に、リエルは凛とした声で答えた。

「僕はずっと、ルイさんのそばにいたかったんだ。殺されたって構わない。彼のそばにいられるのなら、それが僕にとっての一番の幸せだ。いくらお前の頼みでも、こればっかりは、聞けないよ」

初めて見るリエルの表情。彼はこんな顔も出来るのか、となんだか感心すると同時に、初めて聞いた、リエルの覚悟。ああ、彼は殺される覚悟すら持って、ここを訪れたのか。そんなことを微塵も感じさせなかったのは、彼の長所か短所か。

「でも、っ、でも!!!その人はお兄ちゃんのことなんて好きじゃない!」
「シシィ、そんなことはとうの昔に分かりきっている。この人が僕を愛することはない。その上で、無理なものは無理だ」

もう一度ゆっくりと、子供に言い聞かせるように、駄々っ子を諭すように、リエルは繰り返す。ただ少しだけ、その横顔は歪んでいる気がした。

「~っ!……わかった、わかったわよ、お兄ちゃんの気持ち。わかりたく、ないけど。でも、でもそれなら最後にひとつお願い。もう一度、村に帰って、ジュリと会って……お願い」

涙を滲ませながら言う妹の姿に心を動かされたのか。彼が妹を可愛がっていたらしいことは、これまでの態度、会話からわかりきっていた。リエルは一言、いいよ、とだけ返した。

「明日、村に戻るよ」
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