明けぬ夜には翡翠色の灯火を~愛を知らないヴァンパイアが愛を知ったら溺愛されるようになりました~

あんみつ~白玉をそえて~

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止まらぬ不安

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どこに行くんですか、なんで目隠しするんですかと何度も尋ねるリエルを適当にあしらいながら、俺は昨日のことを思い出す。
俺は何故女王を見つめるリエルを不愉快に思った?女王が美しいことはよくわかる。光り輝くブロンドに透き通るような紫眼。俺が長年見てきた中でも指折りの美人だ。そう、見惚れることなど当たり前なのだ。10人いたら10人がする行動。ましてリエルは出身の村から出たことがないと言っていた。そんな田舎者が彼女を見れば、どうなるかわかっていたはずだ。そのはずなのに。いくら考えても答えは出ず、ただモヤモヤとした感情が胸に残り続けるだけとなった。

花畑へは、ちょうど満月が昇った時に来ることが出来た。いつ何度見ても色褪せることの無い美しさ。ここだけはまるで時が止まったようだった。
地に着いたと騒ぐリエルを無視して目隠しを解除する。途端、リエルがぴたりと動きを止めた。こいつらしくなく喋りもはしゃぎもしない。どうしたものかと顔を覗き込むと、そこには先程の感動をひっくり返すほどの美しさが詰まっていた。

「……」

透き通った翡翠の瞳の中で光る月光花。美しさを通り越して神々しさすら感じる。それに加えてリエルの表情。いつもの小動物のような純朴さなど一欠片もない大人びた表情。潤った薄い唇が漏れ出る艶めかしい吐息。
長いまつ毛がゆっくりと伏せられ、それに伴って瞳に映る月光花の瞳の奥の光が一点に集中していき……

「わあ!!!ルイさん、ルイさん!!!」

先程までとは打って変わった様子で、ぴょんぴょんと辺りをはね回るリエル。そこには先刻感じたどうしようもない儚さなど一切ない。

「ねえ、ほら!見てください、こんなに一面光って!!!キレイ……」

グイグイと袖を引っ張られる。十分見えているから心配するなと返しつつも頭には先の顔が浮かんでいた。
そのまま先の顔を反芻していると、いつの間にか遠くへとかけていたリエルが振り向いてこちらに手を振る。

「ルイさーん!」

辺りの月光花に顔を寄せたり、花弁を数えたり。その姿はまるで花畑とともにじゃれているようで。こちらを呼びながらも、私には目もくれずに、さらに遠くへとかけていく。
その姿がどうしてだか不愉快で。その姿にどうしてだか不安が止まらなくて。

「リエル……リエル!」
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