明けぬ夜には翡翠色の灯火を~愛を知らないヴァンパイアが愛を知ったら溺愛されるようになりました~

あんみつ~白玉をそえて~

文字の大きさ
上 下
11 / 34

空中飛行・実験

しおりを挟む
翌日、リエルにもうそろそろ行くぞと声をかけると、バタバタと足音を立てて駆け寄って来て、私の前でちょこんと待つ。その姿がどうしても犬にしか見えなくて。くすりと私が漏らした笑みに顔を傾ける仕草ですら、そう見えた。

「安定するまで、しばらくはかなり勢いよく飛ぶ。防護魔法はかけるが、一応しっかり捕まっていろ。安定して、速度を緩めても問題ない頃合になったら、お前がどの程度までなら耐えられるか試そう……おい、聞いているか?」

わくわくが止まらないといった様子で夜空を見渡すリエル。返事はしたものの聞いているとは思えない。まあ、死ぬことは無い。俺は気にせず、リエルを抱えて大地を蹴った。

ぐんぐんと速度をあげていく。吹きすさぶ夜風が心地よい。生来気温に鈍い俺でもここ、上空なら涼しさを感じられる。
それからしばらくして。速さが調節できるようになるまでになったところでリエルに声をかける。が、目をぎゅっとつむったまま反応がない。力の入った握りこぶしから緊張と恐怖が伝わる。そっと、出来るだけ優しく声をかける。

「リエル、リエル。もう大丈夫だから。目を開けてみろ」

速度を落として、安心させるようにリエルを抱き抱える手に力を込める。ゆっくりと、リエルの目が開かれていく。次の瞬間にはもう、満面の笑みが広がっていた。

「ルイさん、すごい!すごい!すごいです!!!」

無邪気に喜ぶ姿に、やはり犬が連想される。
ほんの少しだけ、加速する。

「大丈夫そうか?」
「はい!!!」

それよりもっと速く、といった表情で頷くリエルに、知らず知らずのうちに少し気合いが入ったようで。ビュンと一気に空を切ると、興奮気味な声が聞こえた。
それからしばらく速度を調節しつつ空を飛んで、エルフの谷に行くには1泊どこかでしなければいけないという結論にたどり着く。
屋敷の前でそっとリエルを下ろすと、リエルは唐突に走り出して、その勢いのまま振り返った。

「僕、空を飛んだんですね!!!」

両手を広げてそう叫ぶ姿が、なんとなく微笑ましくて。ぽんと頭に手を乗せて、私たちは屋敷へ帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...