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空中飛行・実験
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翌日、リエルにもうそろそろ行くぞと声をかけると、バタバタと足音を立てて駆け寄って来て、私の前でちょこんと待つ。その姿がどうしても犬にしか見えなくて。くすりと私が漏らした笑みに顔を傾ける仕草ですら、そう見えた。
「安定するまで、しばらくはかなり勢いよく飛ぶ。防護魔法はかけるが、一応しっかり捕まっていろ。安定して、速度を緩めても問題ない頃合になったら、お前がどの程度までなら耐えられるか試そう……おい、聞いているか?」
わくわくが止まらないといった様子で夜空を見渡すリエル。返事はしたものの聞いているとは思えない。まあ、死ぬことは無い。俺は気にせず、リエルを抱えて大地を蹴った。
ぐんぐんと速度をあげていく。吹きすさぶ夜風が心地よい。生来気温に鈍い俺でもここ、上空なら涼しさを感じられる。
それからしばらくして。速さが調節できるようになるまでになったところでリエルに声をかける。が、目をぎゅっとつむったまま反応がない。力の入った握りこぶしから緊張と恐怖が伝わる。そっと、出来るだけ優しく声をかける。
「リエル、リエル。もう大丈夫だから。目を開けてみろ」
速度を落として、安心させるようにリエルを抱き抱える手に力を込める。ゆっくりと、リエルの目が開かれていく。次の瞬間にはもう、満面の笑みが広がっていた。
「ルイさん、すごい!すごい!すごいです!!!」
無邪気に喜ぶ姿に、やはり犬が連想される。
ほんの少しだけ、加速する。
「大丈夫そうか?」
「はい!!!」
それよりもっと速く、といった表情で頷くリエルに、知らず知らずのうちに少し気合いが入ったようで。ビュンと一気に空を切ると、興奮気味な声が聞こえた。
それからしばらく速度を調節しつつ空を飛んで、エルフの谷に行くには1泊どこかでしなければいけないという結論にたどり着く。
屋敷の前でそっとリエルを下ろすと、リエルは唐突に走り出して、その勢いのまま振り返った。
「僕、空を飛んだんですね!!!」
両手を広げてそう叫ぶ姿が、なんとなく微笑ましくて。ぽんと頭に手を乗せて、私たちは屋敷へ帰った。
「安定するまで、しばらくはかなり勢いよく飛ぶ。防護魔法はかけるが、一応しっかり捕まっていろ。安定して、速度を緩めても問題ない頃合になったら、お前がどの程度までなら耐えられるか試そう……おい、聞いているか?」
わくわくが止まらないといった様子で夜空を見渡すリエル。返事はしたものの聞いているとは思えない。まあ、死ぬことは無い。俺は気にせず、リエルを抱えて大地を蹴った。
ぐんぐんと速度をあげていく。吹きすさぶ夜風が心地よい。生来気温に鈍い俺でもここ、上空なら涼しさを感じられる。
それからしばらくして。速さが調節できるようになるまでになったところでリエルに声をかける。が、目をぎゅっとつむったまま反応がない。力の入った握りこぶしから緊張と恐怖が伝わる。そっと、出来るだけ優しく声をかける。
「リエル、リエル。もう大丈夫だから。目を開けてみろ」
速度を落として、安心させるようにリエルを抱き抱える手に力を込める。ゆっくりと、リエルの目が開かれていく。次の瞬間にはもう、満面の笑みが広がっていた。
「ルイさん、すごい!すごい!すごいです!!!」
無邪気に喜ぶ姿に、やはり犬が連想される。
ほんの少しだけ、加速する。
「大丈夫そうか?」
「はい!!!」
それよりもっと速く、といった表情で頷くリエルに、知らず知らずのうちに少し気合いが入ったようで。ビュンと一気に空を切ると、興奮気味な声が聞こえた。
それからしばらく速度を調節しつつ空を飛んで、エルフの谷に行くには1泊どこかでしなければいけないという結論にたどり着く。
屋敷の前でそっとリエルを下ろすと、リエルは唐突に走り出して、その勢いのまま振り返った。
「僕、空を飛んだんですね!!!」
両手を広げてそう叫ぶ姿が、なんとなく微笑ましくて。ぽんと頭に手を乗せて、私たちは屋敷へ帰った。
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