1 / 10
第1/幻夜祭
しおりを挟む
「もう、いいかい?」
暗闇に響く声。それが、始まりの合図。祭りのはじまる時間。
ほんのひととき、月が地球の影に隠れる時間。
月蝕の間の幻夜祭。
今夜は、祭り。
夏の祭り。
相反する闇と光が入り混じる空間は、何もかもを曖昧にしてしまう。
時として闇は光に擬態し、光は闇に転じる。
何が正で、何が偽か、何もかもが、交じり合い、もはや解らない。
夜の闇の屋根の空の
遠くの山のビルのネオンの
飛行場の光の
公園の森の土の
噴水の音の匂いの
雪の月の光の
ひとりの秘密の場所の空気の
闇の影の中の朱色の瞳の
夏のあの日の朱い夕焼けの日の。
祭りの夜の神社の稲荷の仮面の。
灯りの光の屋台の玩具の人形の。
二人の人の兄弟の繋ぐ手、歩く足の。
光と闇、生と死、人と物、境界のあやふやな内と外の祭の。
それは、現実のものなのか、人のこころの生み出すの空想の産物なのか。
闇夜に染まる前の、夕闇のまどろみのように不完全な。
それは、静かすぎる暁闇の夕暮れに浮かぶ、不安定な、不安定な月。
揺れる、揺れる月の色。
夏のおまつり。
おはやしの音が、聞こえてくる。
夏の祭りが、始まる音。
月の欠ける音。
不思議な不思議な月の陰。
はじまる、祭り。
夏の祭り。
暗闇に響く声。それが、始まりの合図。祭りのはじまる時間。
ほんのひととき、月が地球の影に隠れる時間。
月蝕の間の幻夜祭。
今夜は、祭り。
夏の祭り。
相反する闇と光が入り混じる空間は、何もかもを曖昧にしてしまう。
時として闇は光に擬態し、光は闇に転じる。
何が正で、何が偽か、何もかもが、交じり合い、もはや解らない。
夜の闇の屋根の空の
遠くの山のビルのネオンの
飛行場の光の
公園の森の土の
噴水の音の匂いの
雪の月の光の
ひとりの秘密の場所の空気の
闇の影の中の朱色の瞳の
夏のあの日の朱い夕焼けの日の。
祭りの夜の神社の稲荷の仮面の。
灯りの光の屋台の玩具の人形の。
二人の人の兄弟の繋ぐ手、歩く足の。
光と闇、生と死、人と物、境界のあやふやな内と外の祭の。
それは、現実のものなのか、人のこころの生み出すの空想の産物なのか。
闇夜に染まる前の、夕闇のまどろみのように不完全な。
それは、静かすぎる暁闇の夕暮れに浮かぶ、不安定な、不安定な月。
揺れる、揺れる月の色。
夏のおまつり。
おはやしの音が、聞こえてくる。
夏の祭りが、始まる音。
月の欠ける音。
不思議な不思議な月の陰。
はじまる、祭り。
夏の祭り。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ぬい【完結】
染西 乱
ホラー
家の近くの霊園は近隣住民の中ではただのショートカットルートになっている。
当然私もその道には慣れたものだった。
ある日バイトの帰りに、ぬいぐるみの素体(ぬいを作るためののっぺらぼう状態)の落とし物を見つける
次にそれが現れた場所はバイト先のゲームセンターだった。
機織姫
ワルシャワ
ホラー
栃木県日光市にある鬼怒沼にある伝説にこんな話がありました。そこで、とある美しい姫が現れてカタンコトンと音を鳴らす。声をかけるとその姫は一変し沼の中へ誘うという恐ろしい話。一人の少年もまた誘われそうになり、どうにか命からがら助かったというが。その話はもはや忘れ去られてしまうほど時を超えた現代で起きた怖いお話。はじまりはじまり
虫喰いの愛
ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。
三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。
蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。
また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。
表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。
よろず怪談御伽草子
十ノ葉
ホラー
七歳になったばかりの恵介は、ある日母親と大喧嘩して家を飛び出してしまう。
行く当てもなく途方に暮れた恵介は近所の古びた神社へ身を寄せた。
今日はここに泊まらせてもらおう・・・。
人気のない神社に心細さと不安を覚えるものの、絶対に家に帰るものかと意地になる彼の前に、何とも風変わりな人が現れて―――――!?
僕の大好きなあの人
始動甘言
ホラー
少年には何もない。あるのは明確な親への反抗心。
それゆえに家を飛び出し、逃げた先はとある喫茶店。
彼はそこで一目ぼれをする。
この出会いは彼にとって素晴らしいものなのか、それとも・・・
Catastrophe
アタラクシア
ホラー
ある日世界は終わった――。
「俺が桃を助けるんだ。桃が幸せな世界を作るんだ。その世界にゾンビはいない。その世界には化け物はいない。――その世界にお前はいない」
アーチェリー部に所属しているただの高校生の「如月 楓夜」は自分の彼女である「蒼木 桃」を見つけるために終末世界を奔走する。
陸上自衛隊の父を持つ「山ノ井 花音」は
親友の「坂見 彩」と共に謎の少女を追って終末世界を探索する。
ミリタリーマニアの「三谷 直久」は同じくミリタリーマニアの「齋藤 和真」と共にバイオハザードが起こるのを近くで目の当たりにすることになる。
家族関係が上手くいっていない「浅井 理沙」は攫われた弟を助けるために終末世界を生き抜くことになる。
4つの物語がクロスオーバーする時、全ての真実は語られる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる