上 下
3 / 150
千秋楽

第2話

しおりを挟む
「織ちゃんは今日も絶好調だね」

玖瑠美が相変わらずなと言わんばかりの表情を見せてそう言う。

「だって千秋楽だよ?今回の初全国ライブの集大成じゃん?」

因みに年は違うが全員タメ口で、又、お互いを愛称で呼んでいる。基本的にモープロ業界では、その業界に入った年数ではなく、チーム発足時点の上下関係を表している為、チーム内に年の差があろうがなかろうがタメ口で話す事になる事が多い。逆にどんなに年下であろうが、早めにデビューが決まっている場合、その方には基本は敬語で話さないといけない。ここで言う”基本”は、友人関係で、それに関してはタメ口を許している。まぁチーム発足は若い順から基本は発足していく。先にデビューを決めている人達は殆ど年上なので、必然的にそれなりの喋りになる。

「疲れてないの織ちゃん?」

私はそう尋ねた。

「疲れてるよそりゃー。でも今は何故かアドレナリンが高ぶって」

そう言うと”ワクワク”と小声で言いながら両腕を両脇にリズムを取りながら何度も挟む。

「織ちゃんのその元気の源はなんだろうね?」

再び玖瑠美が尋ねるが、当の本人は”分かんない”と言いつつまだワクワク行動をしている。

「あの織ちゃん、メイク出来ないから一先ず落ち着こうか」

「すみませーん」

ワクワク行動が収まるのを10秒ほど待っていたメイクさんは、終わる気配がなかった為に注意が入る。そう言われて止めるが、あまり反省していない様子の伊織。メイクをされながらニヤニヤしている。『笑顔が一番』を合言葉にしている自分より笑顔満開に、この言葉を贈呈したいと思った今日この頃。

「よし、大丈夫ですよ」

私達は既にメイクが終わり、後ろのソファーでゆっくりしていた。結局、ニヤニヤしたせぃでメイクに時間が掛かった伊織が最後となった。

「じゃー集合」

「「はい」」

伊織がメイク場所を立った合図で、リーダーの玖瑠美が声を掛ける。そして円になり、その園の中心に手をパーにして指先を当てる様にくっ付ける。

「さっき織ちゃんが言った通り、今日で長かった初ライブも最後、今までの集大成になります。それぞれ思う物があると思いますが、先ずはこの千秋楽を悔いなく歌って踊り切りましょう、せーの!」

「「虹色、ストーリーーー‼フーーー」」

そう歌の題名みたいな掛け声を言いながら、先程まで差し出していた手を一斉に上に上げ、”フー”の所でその手を振りながら下ろす。これが所謂私達の『円陣』だ。
因みにこの円陣を考えたのはリーダーでもある玖瑠美がこのツアー時に開発した。虹色は文字通り私達を意味するレインボー。ストーリーに関しては、これから私達の物語が始まる意味を表しているらしく、”フー”の所は完全にオマケ。実際に初日にやって、上げた後にどうするか考えた末に即席で編み出した。これを含めて満場一致の案であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

白紙にする約束だった婚約を破棄されました

あお
恋愛
幼い頃に王族の婚約者となり、人生を捧げされていたアマーリエは、白紙にすると約束されていた婚約が、婚姻予定の半年前になっても白紙にならないことに焦りを覚えていた。 その矢先、学園の卒業パーティで婚約者である第一王子から婚約破棄を宣言される。 破棄だの解消だの白紙だのは後の話し合いでどうにでもなる。まずは婚約がなくなることが先だと婚約破棄を了承したら、王子の浮気相手を虐めた罪で捕まりそうになるところを華麗に躱すアマーリエ。 恩を仇で返した第一王子には、自分の立場をよおく分かって貰わないといけないわね。

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

処理中です...