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番外編

モーガン・フォージャーの末路③

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今更になって湧き上がる恐怖心。


もぞもぞと縛られた両腕を動かし、どうにか縄を解こうとするもなかなかうまくいかない。



「ふふっ、罪人の縄がそう簡単に解けるわけがないじゃありませんか。牢獄に送るまでに逃走されたらかないませんもの」

「っ、私は罪人なんかじゃ!」


「あら、レイナ達を殺した立派な罪人ですよ?おまけに私の命まで狙おうとして…本当呆れた人ですわ」


クスクスと笑いを零しながらそう言う彼女。

自分の殺害計画を知っていながら、どうしてそんなに楽しそうに笑えるのか。


狂っている、そう思った。



「私を、どうする気だ!」


「あらあら、そんなに怒らないでくださいませ。私は貴方を愛しているだけなのですよ?」

「くそっ、ふざけたことを!」



「そう焦らずともすぐにわかります」


嫌な予感しかしない。

私はどうなってしまうのか。


縛られたこの状況で彼女から逃げ切れる自信もなかった。


血の気がひき、震える私を無視して、彼女はそっと馬車から降りて、縄で縛られた私を外へと促す。



「ふふっ、懐かしいですね」

「…花畑?」


「幼い頃よくあの女やレイナと共にここで遊んだこと、覚えていらっしゃいませんか?」


そう言われると、たしかにそうだった気がする。

花冠を頭に乗せたレイナが脳裏を過る。


…すごく、綺麗だった。



「ははっ、随分と可愛らしい場所で、本当にやっちまっていいのかぁ?」


馬車の外に立っていた男がそんなことを言う。


「一体、お前達は何がしたいんだ。それに、どうしてお前がその男と…」


「ふふ、貴方の企てた計画が実行される前に私が彼を雇い直したのです。もう、今世で貴方と幸せに生きられるとは思っていませんから」


「どういう意味だ!」


「では、頼みますね」

「はいよ。お幸せになぁ」


にやにやと下卑た笑みを浮かべる男が返事を返すと、妻はパタリとまた私を馬車に押し込め、自らも乗り込むと、ゆっくり馬車の扉を閉めた。


「もうすぐ、楽になれますわ」

「っ、いったい何を…!」



妻は緩やかに笑うばかりで、答えてくれる様子はない。



そうして、少し経つとなんだか煙のような嫌な匂いが馬車の中に漂ってきた。

…熱気のようなものも感じる。



「まさか、おい、お前っ…この馬車はどうなっているんだ!まさか、まさか…」

「さすがに気がついてしまわれましたか?」


「火をつけたのか…?」


目の前が真っ暗になる。

絶望というのは、このことだろうか。



「私と貴方が一緒になるには、もうこうするしか方法がないのです。最期くらい私のわがままも聞いてくださいませ」

「くそっ!この紐を早く解け!!お前のくだらない思いに巻き込まれてこんなところで死ぬなんて真っ平御免だ!!」


そうだ、私はミレイユのもとに、レイナとそっくりなあの子のもとに帰らなければ…



「ふふ、レイナも、きっと同じことを思ったでしょうね。ああ、やはり焼死なんて少し怖いわ…熱いし、息も苦しくなってきました。はあ、名残は惜しいですけれど、私は先に失礼します」


そう言って彼女は懐から小さな剣を取り出す。


ぎょっとする私を後目に、心臓の前にその短剣を掲げた。



「愛していますわ、あなた」



その言葉を最後に、振りかざした剣で妻だった女は心臓を一突きにし…息絶えたのだった。




「っ、なっ…おい、」


いつの間にか轟轟と燃え盛る炎に耐えられないくらいの苦痛が体を襲う。

開いた窓のせいで中毒で死ぬことすら叶わない。



熱い、痛い、苦しい。


どうして私がこんな目に…




ようやく意識を失った時、私の体は焼けただれ、見るも無惨な肉の塊となっているのだった。


■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫



すっきり~



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