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正しさ sideヒューゴ
しおりを挟むSide ヒューゴ
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ついに、フォージャー前侯爵の身柄を確保するよう、上から指示が出されることとなった。
上と言うのは、うちの父である王宮直属の騎士団であり、また、それに命令を下す王族そのものの言葉でもあった。
ミレイユ嬢の両親の事件に加えて、再び起こったサイラスやセイラ嬢の義母の殺害。
王国中の貴族の関心を集めたこの事件を解決できないままでは、王室の信用に関わる。
「私達は、正しいことをしているんだよな…」
「今更何言ってんのさ」
覚悟していたはずなのに、決心が鈍りそうになる情けない私に、ウォルターが呆れたように小さくため息をついた。
「正しいわけないだろ?俺たち今友だち切り捨てようとしてんだよ~?人間としてアウトでしょ」
「…だな」
三年。
私達が友として、サイラスと学園生活を過ごした時間は、決して短くなかった。
真面目で、誠実な男だった。
ミレイユ嬢に対して度を超えた過保護さを発揮し、セイラ嬢を蔑ろにして傷つけたことは許されることではない。
愚か者だったとは思う。
だが、それは私も同じだ。
セイラ嬢の境遇を理解したのは、キースと結ばれたセイラ嬢に、詳しい話を聞いてからのことだった。
それまでは、フォージャー侯爵家でいったい何が起こっているのがまるでわかっていなかったのだ。
そして、サイラスのことだって…
私は今、彼を友だと言いながら、サイラスの家を、自らの手で糾弾しようとしている。
「辞めるか~?」
「私達が今更引いたところで、もう遅いだろう」
「わかってるじゃん」
随分と余裕そうなウォルターに理不尽な苛立ちを覚えて、きっと彼を睨みつける。
鋭い瞳を向けた先のそいつが、あまりにも苦しそうな表情を浮かべていたから…それ以上見ていられなくなって、思わず顔を背けてしまった。
前侯爵確保に裂かれた人員の中で、私もウォルターも身分や立場は高い方だったが、指揮権は任せてもらえなかった。
身内だと、どうしても甘くなるからだ。
「集合だってよ。行くぞ、ヒューゴ」
「ああ」
王宮騎士団やウォルターの家の警察組織。
それに、バーナード公爵家の専属騎士達。
どうやらフォージャー前侯爵は移住先の屋敷に最小限の人員しか配置していないようだった。
こちらも最小限の人員で、素早く公爵を確保する手筈である。
王都にある公爵邸にも、すぐに人が行くはずだ。
状況も把握できないまま、きっと、サイラスは貴族位を剥奪されることとなる。
あいつは、裏切られたと思うだろうか。
そんなことをぼんやりと考えるが、サイラスが私達を強く責める姿は想像できなかった。
黙って、現状を受け入れるような気がする。
誰かを叱責することも、抵抗することもせず、自分には何の非もない親の罪を、粛々と受け入れるのだろう。
そんな姿が頭に浮かんで、胸が締め付けられるようだった。
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