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来客
しおりを挟む今日、我が家にはお客様が二人お見えになっていた。
と言っても、彼らがここにやってくることはとりわけ珍しいことでもないのだが。
「やっほ~、来ちゃった。はい、お土産。セイラ嬢が好きそうなお菓子適当に買ってきた~」
そう言って小さくない包みを私に差し出すのは、ウォルター様だ。
彼が頻繁に手土産を持ってくるせいで太ってしまいそうなのがここ最近の悩みである。
「これは私からだ!これでセイラ嬢の悩みも解決すると思うぞ!」
快活な笑みを浮かべたヒューゴ様が差し出すのは、何やら大きな輪っかのようなものだった。
…何これ。
「ヒューゴ、セイラ嬢に訳の分からないものを贈るのはやめてくれとあれ程…」
キース様が頭を抱えながら苦言を呈す。
その言葉通り、ヒューゴ様はこの家に来る度によくわからないものを手土産に差し出すのだ。
両方に持ち手が付いている紐、確か縄跳びと言ったかしら…それだったり、鉄でできたあれは…そう、鉄アレイ。
本人曰く健康用品だというそれらのものを強引に押し付けていくのだ。
「これは、いったい何ですか?」
「それはな、今巷でブームのフラフープというんだが、使い方は…まあ、やって見せた方が早いな!」
ヒューゴ様はそう言うとその大きな輪っかを体に通すように腰あたりに両手で支え、そして…
「ぷはっ、おまっ、あははははっ何だそれ、その動きっ反則、でしょ、くくっ」
「…っ、」
「ヒューゴ、それは、ふっ」
くねくねと腰を振るヒューゴ様。
その動きの反動で輪っかだけがくるくると回り続けているのだ。
なんと言うか、とんでもなくシュールな絵面だ。
私達三人は笑いを堪えきれず、真顔でフラフープという輪っかを回すヒューゴ様をしばらく見ていることしかできなかった。
「どうだ!使い方はわかったか?」
「っ、はぁ、わかりました」
酸欠気味に答えると満足そうに頷くヒューゴ様。
「…これは、いったいどういった用途のものなのでしょうか?」
「ん?見て分からないか?」
わからないから聞いているのです。
「セイラ嬢はキースの持ってくる菓子で太ってしまうと前々から気にしていただろう?」
「ええ、そうですね」
だから最近のヒューゴ様のお土産は健康用品ばかりになったのだ。
申し訳ないけれど、よくわからないので使用したことはほとんど無い。
「だから、今回も肥満解消グッズだ!」
「解消だと現時点でセイラ嬢が肥満みたいじゃないか。訂正してくれ、ヒューゴ」
「言葉のあやだ、気にしないでくれ。とにかく、良い有酸素運動になるからぜひやってみてほしい!これでいくらでも甘い菓子を食べられるな!」
はい、そうですね…
やるかやらないかは、うん、まあ、気が向いたら。
「フラフープはな、体幹を鍛えたり腹筋運動にも効果的なんだぞ!騎士団の訓練にも取り入れようかと検討中なんだ!」
学園を卒業して間もなく、その実力を認められたヒューゴ様は、王宮騎士団の団長に抜擢された。
今は直属ではない第五騎士団ではあるものの、この様子ではすぐに上位の団も任されることだろうと予想している。
「うわそれ名案~!騎士がみんなで輪っか回してるとこ想像しただけでっ、くくっ、最高っ」
「ウォルター様!面白がらないでください!そんな地獄絵図絶対にいけません!ヒューゴ様、考え直してください」
「…僕は別に、騎士団のことなんてどうでもいいと思いますよ。ヒューゴの好きにするといい。ただもう本当によくわからないものを持ってくるのはやめてくれ。貰い物だから捨てるに捨てられない…新居に変なもの起きたくない」
キース様の懇願にも、ヒューゴ様はきょとんと不思議そうな表情を浮かべていた。
…次はどんな物を持ってくるのか。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
話が進まず申し訳ございません!
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