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家族

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「ど、どういう意味ですか?セイラ様のおっしゃっていることがさっぱりわかりません!」

ミレイユが狼狽えたように言葉を返す。


私自身どうしてそんなことを口にしてしまったのかいまいち理解していない部分もあるが、ただ単純に疑問に思ったのだった。

私の言葉を頑なに信じようとしないミレイユ。


ならばいったい彼女が信じたいものは何なのだろうか。



「貴女は本当の家族になれないと日々嘆いているようだけど、私は貴女を受け入れると言っているのにそれを無視するのはおかしいと思うの」

「そんなのっ、口先だけです…私は心からフォージャー家に認めて頂きいんです」


心から、なんて目に見えない部分で拒絶されてはどうしようもない。


「ミレイユはまだ両親を亡くした傷が癒えていないんだ。そう責めたてないでやってくれ。セイラ、親を失った苦しみはお前だって理解しているはずだ」


サイラス兄様は困ったようにそう口を開いた。

確かに、母を亡くした時、私はその喪失感と途方もない悲しみに押しつぶされそうだった。


だけど、それを支え、母の死を乗り越えさせてくれたのはサイラス兄様だ。

それはきっとミレイユだって同様で、兄や両親からの愛情を一心に受けているミレイユは傍から見るとすっかりフォージャー家の娘のようだ。


それなのに、どうして同じ様に彼女を家族として受け入れようとする私の思いは拒絶されてしまうのか。


「どうしてミレイユ嬢は、サイラスの言葉は素直受け入れるのに、セイラ嬢のことは信用してあげないのですか?それこそ貴女の方が彼女を家族だと思おうとしていないのでは?」

鬱々とする気持ちを抱え口ごもっていた私の耳に、そんなキース様の声が届いた。


「っ!?そんなこと…あんまりです、キース様っ。私はフォージャー家の本当の家族になりたいとこんなにも願っているのに…」

「そのフォージャー家っていうのは、セイラ嬢も当然入っているのですよね?」

「も、もちろんです!」


穏やかな口調で話し続けるキース様なのに、彼の醸し出す空気はいつもよりずっと冷たい。

こちらまで緊張して体が強ばる。



「で、でも、セイラ様が私のことを嫌っているから」

「セイラ嬢は否定しているじゃありませんか」


ミレイユにそんな言葉を返すキース様に少しだけ胸がスッとした。

サイラス兄様に宥められ、押し殺しかけた本音を彼が代弁してくれたのだ。


キース様は、迷わず私の味方になってくれた。



「ミレイユ、セイラの言う通り、お前はもう立派なフォージャー家の家族だ」

「っ、お兄様も私じゃなくてセイラ様の味方をなさるのですね!やっぱり私は愛されていないんです!!こんな私がお兄様達の家族になんてなれるわけがありませんでしたっ」


半ば叫ぶようにそう言ったミレイユ。

私は彼女の言葉に絶句してしまった。


無意識に握りこんだ拳が小さく震える。



「貴女が愛されていない?愛されていない貴女はフォージャー家の家族にはなれないと?」


口を挟まずにはいられなかった



だったら私はどうなるの?

義母は疎か、実父からすら愛情を感じたことなど一度もない。


サイラス兄様だって昔とは変わられてしまった。



「貴女が我が家の一員になれないのなら、誰からも必要とされない私はいったいどうしたらいいのでしょう」



滑稽な自分に笑いすら零れる。

ひどく面倒くさいことを言っている自覚はあるが、この憤りを胸に留めておくことはできなかった。



ミレイユは愛されている。

それは彼女達をそばで見ていた私が一番よく知っている。



「…ご馳走様でした。次の授業の予習があるので私はお先に失礼致します。とても楽しい時間をありがとうございました」


「うわ皮肉~。まあ、気持ちはわからなくないけど」


最後くらい穏便に立ち去ろうと口にした言葉は、ウォルター様の言う通り感じが悪かったかもしれない。



「セイラ嬢、教室まで送ります」


「…ありがとうございます」


キース様の気遣いに甘えてしまった。




■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□


いつもお読み頂きありがとうございます!
コメント・お気に入り励みになっております(;;)

バレンタインですね。
春から社会人なのでこういうイベントに乗るのも最後になるかもしれません・・・。

ただ今午前三時、寝たら死ぬ覚悟でチーズケーキを焼いています。



誤字脱字報告感謝です!
なかなか返信できず申し訳ございません。

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