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20.イケメンも地位も望んでません!

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「まあ座りなよ。……それで? キミはどうやって恋人を誘惑してくれるのかな?」

レイフォードが頬杖をつきながら面白そうにエリザベスを見る。
席に着きながらエリザベスはどうしたものかと頭を働かせていた。

……正直、そこまでは考えていなかった。
お茶会のときにリリーシアたちから聞いたのは、まずは話しかけて自己紹介をして、ちょっとした雑談のあとに次に会う約束を取り付けるということだけ。


――誘惑……誘惑……?


エリザベスは自分の胸を見る。
酒場で働いていたとき、酔っぱらった男どもは「もっと谷間が見える服を着てよー!」とエリザベスに絡んできていた。
男性にとって、女性の胸は好きな部位なのだろう。

(ただ、コレをどうすればいいの……?)

レイフォードの手を取って触らせる? ……いや、無理だわ……
制服を脱いでみる? ……いやいやいや!

真剣な面持ちで自分の胸を凝視するエリザベスに、レイフォードは呆れた顔になる。

「ねぇキミ、大丈夫?」

「ごめんなさい。もう少しお待ちいただけますか」

返事をしながらも視線は自分の体に向けたまま。

胸がダメならそれならお尻か、とエリザベスは顔を後ろに向ける。
触らせるのも見せるのも、胸以上にお尻の方が難易度が高そうだ。

あとは……男性が好きそうな場所は……
酒場でのことを思い出していたエリザベスは、ふと思い至った。

――そうよ、足よ!

スカート越しに太ももに触れてきた男、に問答無用で足を踏み付けた記憶を引っ張り出して、エリザベスはパァッと顔を上げた。
足だったら胸やお尻に比べてハードルは下がる気がする。
触らせるのはさすがに恥ずかしいけれど、見せるくらいなら……

……でも、見せるといったってストリップのようなことは出来ないし……

上げた顔を再び下にさげたエリザベスは、レイフォードとの間にある机に目を向けた。



エリザベスのおかしな行動を物珍しげに眺めていたレイフォードは、自分の靴に何かが当てられていることに気が付いた。
トントンと当てるように靴を蹴られて、前に座るエリザベスを見る。
顔を赤くしたエリザベスはぎゅっと口を結んで、挑むような、睨むような顔付きでレイフォードを見ている。

「どうした?」

レイフォードの問いかけに答える気がないのか、エリザベスは口を閉じたまま今度はトントンと地面を蹴った。

「なんだよ……」

下を見ろとでも言うようなエリザベスの態度に、レイフォードはブツブツと文句を言いながら机の下を覗く。
何か落としたのかと思いながら下を見ると、エリザベスの足がレイフォードに向かって真っ直ぐにのばされていた。

ピンとのびた右足。

それだけじゃない。
ひざ下丈の制服のスカートはエリザベスの手によってめくり上げられ、むっちりと柔らかそうな白い太ももが露わに……


ガバッと顔を上げたレイフォードはエリザベスに向かって叫ぶ。

「痴女か!? お前は痴女か!?」

大声で叫ぶレイフォードの顔は真っ赤に染まっていた。








――痴女だ。


確かにこれじゃあただの痴女だ、とエリザベスは我に返った。

『誘惑』という言葉から連想してアプローチしてみた結果、レイフォードを怒らせてしまった。
それに、こんな落とし方では愛人キャラや都合の良い女キャラからは脱却できない。
ますます自分を貶めるだけだ。

「お前は馬鹿か!」

怒鳴るレイフォードに必死で謝って、「次はもうちょっと健全なアプローチをするから!」となんとか宥めすかした。

「健全ってなんだ、健全って!」

お互い真っ赤な顔で言い合う様は見られたものではない。
レイフォードだって手を握ってきたり肩に触れたりしたじゃないかと思いつつ、自分の行動を反省していたエリザベスはとにかく下手に出ていた。

「悪かったと思ってるわ。レイフォード様相手にやりすぎたと思っております!」

「いいか。同じようなことをアンソワにしたら許さないぞ!? 他の男にもこんなことするんじゃない!」

頭を下げながら、エリザベスは次こそ清純なアプローチをしてみせると決意する。

ただ、経験に乏しいエリザベスにはそんな方法思いつかない。
酒場で得た知識をもとにしては駄目だと気付いたばかりだ。

そこで、エリザベスは信頼を寄せている恋愛アドバイザーたちに知恵を借りることにした。




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