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18.イケメンも地位も望んでません!
しおりを挟む「あの……実は私、家の都合により在学中に結婚相手を見つけなければならないのです」
エリザベスは貴族子息を落として、結婚まで漕ぎ着けなければならない。
けれど、エリザベスにはある問題があった。
「ただ、私……今まで殿方にアプローチをしたことがなくて……」
いざ実行に移そうとして、エリザベスは何をすればいいのか分からず途方に暮れてしまった。
考えてみると、エリザベスは自分から好きになってもらおうと男性相手に行動したことがない。
酒場で働いていた時は、話しかけてくる男たちをあしらうことはあっても、自分から何かすることなんてなかった。
世間話以外で自分から積極的に話しかけるなんて、せいぜい「おかわりはどうしますか?」と売上目的で聞くくらいだ。
だから、男性からのアプローチをかわす技術に長けているエリザベスは、男性へのアプローチに関しては初心者に等しかった。
「皆様には素敵な婚約者がいらっしゃると伺いました。どうすれば殿方と仲良くなれるのか、私に教えていただきたいのです……!」
人目を引く豊かな赤毛の髪に大人びた顔立ち、男性受けしそうな魅惑的な体つきのエリザベスが、どうやったら男性と親しくなれるのか教えてほしいと懇願している。
「まあ……!」
まさかエリザベスからそんなことを言われるとは思っておらず、皆驚いて口元に手を当てた。
「殿方に、アプローチ……」
どこかで聞いたことのあるフレーズに、エリザベス以外の全員が記憶を辿る。
そう、それは平民出身の女の子が、貴族の子息に恋をして、好きになってもらおうと必死で頑張る話……
――そうよ! まさに恋愛小説だわ!!
彼女たちは瞳を輝かせた。
貴族令嬢の数少ない娯楽の一つ。
それが恋愛小説だった。
令嬢として抑制された生活の中で、現実を忘れさせてくれる、キラキラと輝く夢の世界。
実際のところ、ここにいるご令嬢方は高位貴族ばかり。
幼い頃から決められた婚約者がおり、今まで男を落とそうとしたことがある者など一人もいない。
けれど、読み漁った恋愛小説のおかげで知識だけは豊富にあった。
……ちなみにエリザベスは誰かに恋をしたわけではないし、その人がダメなら次を狙うという打算的な考えを持っているけれど、そこは見て見ぬフリをしたようだ。
皆、顔を見合わせ目と目で会話をすると一様に頷き合う。
代表して顔を高揚させたリリーシアがエリザベスに告げた。
「エルザ、任せてちょうだい! 私たちが貴方に恋愛指南をして差し上げるわ!!」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
リリーシアの力強い言葉に、エリザベスは顔を輝かせる。
こうして、エリザベスは偏った知識の恋愛アドバイザーを手に入れたのだった。
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