76 / 87
76.クロードの今(2)
しおりを挟む「そろそろ出てきていただけませんか?」
「……もう顔なら出したわ」
「隠されていると暴きたくなるのですが」
自分から出てきてくれるのを待ちたかったが、仕方ない。布団に手を伸ばすと、ジェシカが慌てて声を張り上げた。
「ま、待って! 分かった。分かったから、せめて電気を消して!」
「どうしてですか?」
「どうもこうも、信じられないくらい卑猥な格好をしているからよッ!」
思わず吹き出しそうになった。
そんなことを言われたらますます見たくなる。ベッドに腰かけると、布団を死守しようとしているジェシカの頬に触れた。
手を首や肩に下ろすと警戒されそうだったため、頬に触れたまま指先で小ぶりな耳を弄る。
「んっ……」
耳の形に沿ってゆっくりと指を這わせる。首側から耳裏をこすると、くすぐったそうにジェシカが身悶えた。すりすりと指を動かすたびに小さな甘い吐息が零れ落ちる。
目がとろんと蕩けてきたところを見計らって、ジェシカの体を持ち上げた。
「わ、わっ!」
布団から引っ張り出して、自分の膝の上にジェシカを乗せる。
逃がさないよう、しっかりと腰に手を回した。
「……うん。綺麗ですよ」
黒のランジェリーを身に纏ったジェシカが、居心地悪そうに腰を動かした。
絹のように滑らかな白い肌に、真っ黒な下着がよく映えていた。
丸い山を作った胸の膨らみに、谷間にかかった黒い紐が食い込んでいる。跡になってしまうだろうかと紐を引っ張ると、目の前の体がビクリと震えた。
顔を覗き込むと、ジェシカは首まで真っ赤にしていた。
「~~ッ」
キッとこちらを睨む瞳には、恥ずかしさのあまりうっすらと涙が滲んでいる。
こんな顔をされると堪らない気持ちになる。もっと泣かせて、よがらせて快感に落としてやりたい。
男の前で泣いてはいけないと、教えたのを忘れてしまったのだろうか。
不意に、先日エスター侯爵家の嫡男とジェシカに記憶消去の魔法を行使したことを思い出して、胸の奥底で憎悪の炎が再燃するのを感じた。
――あの時は、本当に間に合ってよかった。
あの日は、クランベル公爵の代理として商会に赴くジェシカに同行するため、御者とともに学校でジェシカを待っていた。商会の長がジェシカを嫌な目付きで見ていることを知っていたため、当初予定していた従者に代わってついていくことにしたのだ。
ところが、いつまで経っても彼女は来ない。一体何をしているのかと思いながら、ジェシカの魔力を辿って迎えに行ったところ、あの事件に遭遇した。
――拘束され、魔法生物によって体を弄ばれていたジェシカと、それを不穏な目で見ていたあの男。
(俺が来るのがあと一歩遅かったら……)
扉の前で聞いた、『既成事実』という言葉。ジェシカに触れる男の姿を想像して、腸が煮えくり返るほどに苛立った。
無意識のうちに魔力が漏れ出ていたらしい。殺気にも似た俺の魔力を浴びて、体を震わせたジェシカが叫んだ。
「そっ、そんなに怒るほど似合ってないの⁉」
まるで見当違いのことを言う彼女に毒気を抜かれる。
「何を言っているんですか」
「だ、だって。この格好を見た途端、クロードが怒りだすから!」
「とっても良く似合ってますよ」
拗ねてしまったジェシカを宥めるように、顔にキスを落とす。目元や頬に口付けながら、耳元でそっと囁いた。
「貴方が用意した、あの勝負下着によく似ているでしょう? 着たかったのかと思って用意させたんです」
「えっ?」
目を丸くしたジェシカが俺を見て、そして自分の体を見る。
「仕立屋のマダムから聞きましたよ。『どんな男でも落とせる最強の下着』なのですよね」
「!」
かああぁっと目の前の頬が更に赤く染まる。
「やっぱり似ていると思ってたのよ!」だとか「……ということは、クロード! 貴方このことを知っていて、わざと知らないふりをしていたのね!」だとか、色々と騒いでいるけれど、素知らぬ顔して柔らかな胸元に唇を落とした。
23
お気に入りに追加
1,285
あなたにおすすめの小説
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった
ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。
あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。
細かいことは気にしないでください!
他サイトにも掲載しています。
注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
今日も殿下に貞操を狙われている【R18】
毛蟹葵葉
恋愛
私は『ぬるぬるイヤンえっちち学園』の世界に転生している事に気が付いた。
タイトルの通り18禁ゲームの世界だ。
私の役回りは悪役令嬢。
しかも、時々ハードプレイまでしちゃう令嬢なの!
絶対にそんな事嫌だ!真っ先にしようと思ったのはナルシストの殿下との婚約破棄。
だけど、あれ?
なんでお前ナルシストとドMまで併発してるんだよ!
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
★完結 【R18】変態だらけの18禁乙女ゲーム世界に転生したから、死んで生まれ変わりたい
石原 ぴと
恋愛
学園の入学式。デジャブを覚えた公爵令嬢は前世を思い出した。
――ああ、これはあのろくでもない18禁乙女ゲームの世界だと。
なぜなら、この世界の攻略対象者は特殊性癖持ちのへんたいばかりだからだ。
1、第一王子 照れ屋なM男である。
2、第二王子 露出性交性愛。S。
3、王弟の公爵閣下 少女性愛でM。
4、騎士団長子息で第一皇子の側近 ドMの犬志願者。
5、生徒会長 道具や媚薬を使うのが好きでS。
6、天才魔術教師 監禁ヤンデレ。
妹と「こんなゲーム作った奴、頭おかしい」などと宣い、一緒にゲームしていた頃が懐かしい。
――ああ、いっそ死んで生まれ変わりたい。
と思うが、このゲーム攻略対象の性癖を満たさないと攻略対象が魔力暴走を起こしてこの大陸沈むんです。奴ら標準スペックできちがい並みの魔力量を兼ね備えているので。ちな全員絶倫でイケメンで高スペック。現実世界で絶倫いらねぇ!
「無理無理無理無理」
「無理無理無理無理無理無理」」
あれ…………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる